手を繋いで帰ろうか
スタスタスタッ……
「ねぇ、待ってってば。怒ってるの?」
「…………」
「ねぇってば」
ほんの5分前。僕は彼女と何人かの友達とカフェにいた。
「いやー、お前らはほんとにお似合いだよ」
男友達がニヤニヤしながらそう言った。いつもの悪ふざけだ。
「うるさいな、そんなんじゃないんだって」
「嘘つけよ!いつも教室でイチャイチャイチャイチャしてるじゃんかよ」
「そーだ、そーだ。付き合ってるって認めちゃいなよ」
「ほんとに何も無いって」
「で、ホントのところどこまでいった?」
顔を寄せていやらしい顔で尋ねてきた。
「どこまでもへったくれもない」
「またまたー。照れるなって、本人がいるからって」
「うるさいうるさい!」
僕はしつこい追求から逃れようとそっぽを向いて耳を塞いだ。
その時にそっと彼女の方を見た。
本当のところ、僕たちは付き合っている。でもこいつらにはまだ話してない。どうやら気付かれているっぽいがここはシラを切り通したい。
彼女はこっちも見ずにアイスカフェラテの氷をストローでカラカラ回していた。
不機嫌に見えた。照れ隠しとはいえ、彼女を傷つけてしまったのかもしれない。
「ねぇ……」
誤解を解こうと声をかけたが一足遅かった。
彼女は立ち上がり、カフェを飛び出した。
「え、俺なんかまずいこと言った?」
さっきやいのやいの言っていたやつらが少し焦ったように顔を見合わせた。
「待ってよ」
僕も慌ててカフェを出て彼女を追いかけた。
彼女はこちらを見向きもせず足早に歩いていく。
「ねぇ、待ってってば。怒ってるの?」
「…………」
「ねぇってば」
僕は少し小走りに彼女に追いついて彼女の腕を掴んだ。
「ごめん、話を聞いて」
「……離して」
彼女はこっちを向いてくれない。その肩は少し震えていた。
「嫌だよ」
「……帰るから、離して」
「ごめんね。あんなふうに嘘をついて」
「…………」
「君と付き合ってるって冷やかされるのが恥ずかしかったんだ。でももう隠さないから」
そう言って少し後ろを振り返った。カフェに置いてきた連中が追いついてきて、街路樹の影から覗いている。
「一緒に帰ろ?」
「……私と付き合ってるの、知られたくないんでしょ?」
「もういい。君といたいからあいつらの冷やかしも跳ね返してやる」
「……ほんとに?」
「ほんとに」
「……証明できる?」
僕は君の腕を引いて振り向かせて肩を抱いた。
そして、ゆっくりキスをした。
唇を話した後の君は少し嬉しそうに照れていた。
「……許してくれる?」
「……仕方ないなぁ」
彼女に笑顔が戻った。僕は左手を伸ばした。
「じゃあ、一緒に
手を繋いで帰ろうか」
〈完〉
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