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草間彌生美術館、2017年にオープン!

日本の人気現代美術家といえば、誰が思い浮かぶでしょうか?
メディアで話題になったのは奈良美智、村上隆などですが、その中でも翠波画廊で最も多く問い合わせがある人気作家は、草間彌生です。
2014年には、イギリスの美術専門誌「THE ART NEWSPAPER」が、全世界の美術館来場者数調査から、
「いま最も人気のアーティスト」として草間彌生を選出しました。
2015年10月のサザビーズ香港のオークションでは、代表作「無限の網」シリーズの「No. Red B」が
手数料込み8億4500万円で落札されました。これは日本人の絵画のオークションレコードです。
2016年、彼女はアメリカ「TIME」誌の「世界で最も影響力のある100人」に、唯一の日本人として選出されました。
そして2017年10月、本人による、地上5階地下1階の草間彌生美術館が開館しました。


草間彌生は1929年、長野県松本市の裕福な旧家の末娘として生まれました。アンディ・ウォーホルより1年遅く、ジャスパー・ジョーンズより1年早い、アメリカのポップアーティストとほぼ同世代です。

草間は幼い頃から幻覚や幻聴に悩まされ、絵を描くことで精神の安寧を得てきました。
小学校卒業後、五年制の高等女学校に進学した草間ですが、絵画への情熱止みがたく、卒業後に美術工芸学校に編入して日本画の技法を学びます。
その後、実家に戻って絵を描き続けるものの、旧弊な日本では女性画家は認められないと感じ、1957年、28歳でアメリカへ渡ります。
渡米前の草間が、相談の手紙を送っていたのは、アメリカの女性画家、ジョージア・オキーフでした。オキーフは同じ女性として彼女を励まし、渡米を支援します。

草間がニューヨークに着いた1957年は、ジャクソン・ポロックが自動車事故で亡くなった翌年でした。
それは、抽象表現主義から、ミニマルアート、ポップアートへと、ニューヨークのモダンアート(近代美術)シーンが転換していく時代でもありました。
草間彌生が幼い頃からこだわり続けた水玉模様のポップ性や、反復して画面を埋め尽くす模様のミニマル性は、そうした時代の雰囲気によく合っていました。

1958年から制作している「無限の網」シリーズは、今もなお草間彌生の代表作として評価が高いものです。
飛行機から眺めた海の波にインスパイアされたともいわれる、画面を執拗に埋め尽くす網の目模様は、ドナルド・ジャッドやフランク・ステラといったミニマルアートの新進画家に高く評価されました。二人は草間の絵を自前で購入して、異国から来た若き女性画家を支援します。
こうして、草間彌生はニューヨークのアートシーンに確かな地位を築いたのです。

当時のアメリカのアートシーンは、公民権運動の盛り上がりもあって、過激なまでのリベラル(自由)を謳歌する雰囲気に満ちていました。草間も、単なる絵画からさらなる前衛へと足を踏み出していきます。
家具に柔らかい男根状の突起をいくつも取り付けた立体作品や、その中に横たわる裸に水玉模様だけをつけた草間本人の写真や、反戦をうたって国旗を燃やすパフォーマンスなど、フェミニズムやラブ&ピース運動ともかかわりを持った草間は、やがて「前衛の女王」とも呼ばれるようになります。
また、1968年には、草間のパフォーマンスを収めた短編映画『草間の自己消滅』を制作し、数々の国際映画祭で受賞します。当時の草間は多くの協力者を持ち、プロジェクトごとに会社を設立するほどの活躍ぶりでした。

1966年の現代美術の祭典ヴェネツィア・ビエンナーレは、草間彌生の真骨頂でした。新進作家である草間は、正式には招待されていなかったのですが、事務局に自主的な参加を打診して許可されます。
その作品は、1500個のミラーボールを屋外の芝生の上に敷き詰めた「ナルシスの庭」。覗き込むと、ぴかぴかのミラーボールの表面に、歪んだ自らの姿が幾重にも映って、眩暈がするようです。草間はさらに、作品の中に陣取り、ミラーボールを1つ1200リラ(2ドル)で観客に売るパフォーマンスを実行しましたが、さすがにこれは止めさせられました。

2017年、88歳になり、公式の場には車椅子で登場する草間彌生は、もう当時のように裸で公道を駆けるパフォーマンスを行うことはないでしょう。
しかし、真っ赤なウィッグに、ピンクの水玉模様のドレスでテレビに出てくる草間彌生の精神は、今でも前衛(アヴァンギャルド)のままです。

2017年10月にオープンした草間彌生美術館には、そんな草間の魅力がぎゅうぎゅうに詰まっています。
気になる人はチェックしてみてください。

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