翠波画廊

銀座・京橋の中心にある、創業30年の「翠波画廊」 読むだけで最新のアートシーンや絵画の…

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銀座・京橋の中心にある、創業30年の「翠波画廊」 読むだけで最新のアートシーンや絵画の知識が身につく、アート初心者からコレクターの方まで必読のコラムをお届けいたします。 翠波画廊HP:https://www.suiha.co.jp/

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世界で一番高い絵のランキング【2021年版】

2020年にオークションで販売された最も高額な絵画は、フランシス・ベーコンによる≪アイスキュロスのオレステイアに触発されたトリプティク≫(1981)でした。 6月29日にサザビーズのオークションに出品されたこの三枚組の絵画は、手数料込み8455万ドルで落札されました。フランスシス・ベーコンの作品としては史上3番目の高価格です。 ところが2021年が始まって早々、2020年の記録は抜かれました。 どのような作品によってでしょうか。 2021年のオークションの幕開け 2021

    • エコール・ド・パリ時代の画家を、どれほど知っていますか?<西欧・北米編>

      20世紀初頭は、パリを中心に芸術が花開いた時代でした。 パリには、各国から有為の若者が集まり、その腕を競っていたのです。いわゆるエコール・ド・パリの時代です。当時は、全世界的に画家に注目が集まっていました。各国にどのような画家がいたのかを見てみましょう。 さまざまな才能が集まるフランスから考えてみましょう。 当時のフランス人画家で最も名声が高かったのは、アンリ・マチス(1869-1954)です。しかし、マチスはやや世代が上になるので、エコール・ド・パリの画家とは考えられてい

      • エコール・ド・パリ時代の画家を、どれほど知っていますか?<東欧編>

        翠波画廊の書籍『「値段」で読み解く 魅惑のフランス近代絵画』では、19世紀末から20世紀初頭に活躍した画家を扱っています。 その時代、芸術の中心地はフランスで、各国から修業のために、画家がパリに集まりました。エコール・ド・パリ(パリ派)とも呼ばれた、パリの外国人画家たちです。 この時代には、それぞれの国には、どのような画家がいたのでしょうか。 意外な人が同時代人で驚きます。 まずは、パリに集った外国人画家(エコール・ド・パリ)の中から、各国代表を選んでいきます。 イタリア代

        • 「私が真犯人だ」盗まれる絵画の秘密

          マルセイユの美術館から盗まれたドガの絵「合唱隊」(約1億円)が、2018年2月、バスの荷物室に置き去りのスーツケースから見つかったそうです。9年ぶりの発見でした。 絵画は手軽に持ち運べる高額資産ですが、名画であればあるほど来歴がはっきりしているので、市場での売却が困難です。そのため、最終的に持ち主の元に戻ってきやすいのです。 にもかかわらず、絵画の盗難は頻繁に起きています。美術品の盗難データサイトによれば、年間5~10万件の盗難があり、窃盗犯の利益は年間700~900億円と推

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          5月17日は何の日かご存じですか?

          5月17日は何の日だかご存じですか? 母の日? 近いけどちょっと違います。母の日は第二日曜日なので、2018年は5月13日になります。 毎年5月17日は、国際反ホモフォビアの日(IDAHO)といって、同性愛嫌悪を非難する日とのことです。同性愛者活動家であるフランスの大学教授が提唱して、2005年から毎年5月17日に記念集会や街頭デモや映画祭などが開催されています。 そもそもの由来は、1990年5月17日に世界保健機関が同性愛を病気ではないと認定したことです。逆に言えば1990

          5月17日は何の日かご存じですか?

          カタルーニャのミロ

          スペインのカタルーニャ州からは、スペインを代表する偉大な3人の芸術家が生まれています。建築家ガウディ、画家ダリ、そして画家ミロです。 また、ピカソも誕生の地はアンダルシア州ですが、13歳で家族とともにカタルーニャ州の州都バルセロナに引越し、本格的にパリに移住するまで10年近くをカタルーニャで過ごしています。そのため、カタルーニャにはピカソ美術館が3つもあるのです。 このカタルーニャ州が、いま独立問題で揺れています。実はカタルーニャは、独自のカタルーニャ語と文化を持つ自治州で、

          カタルーニャのミロ

          フランスの女流画家といえば?

          3月8日は女性の日です。1904年3月8日にニューヨークで起きた、婦人参政権のデモを記念して、国際女性デーが提唱されたのです。 2018年3月8日も、スペインで約540万人が参加した、男女平等を求める2時間のストライキがありました。 絵画の世界でも、かつては女性が差別されていました。正統な歴史画では男性の裸体が必須だったために、女性は絵画教育のアカデミーから締め出されていたのです。 それでも、個人としての技量を背景に、名を挙げた女性画家はわずかながら存在しました。 また、19

          フランスの女流画家といえば?

          昔は絵画も安かった?

          著名な芸術家の描いた絵と無名の画家の描いた絵には価格に大きな差があるからです。観光地で売っている風景画や木彫りなどの工芸品と、美術館に収蔵される芸術品との価格を比べてみればわかるでしょう。 同じ絵なのに、なぜそこまでの差があるのでしょうか。 もちろん絵の上手下手はありますが、プロとして生計を立てるくらいに達者でも、価格がそこまであがらない画家もたくさん存在します。それは、書籍や雑誌のイラスト、広告看板やポスターなどを描く商業的なイラストレーターです。 コマーシャルな絵はビジネ

          昔は絵画も安かった?

          国立西洋美術館も騙された贋作事件(2)

          1965年、来日したフランスの画商フェルナン・ルグロは、デュフィ、ドラン、モジリアーニといった巨匠のフランス近代絵画を日本人に売りつけました。 しかし、後に判明したことですが、これらはまったくの偽物でした。 ルグロは贋作画商として訴追され、絵は非公開の資料として隠されました。 このうちドランの絵画は当時の価格で約2,232万円、現在の価値に直せば2億円くらいになります。購入した国立西洋美術館は、現在は独立行政法人ですが、当時は文化庁に所属する国家施設であったため、国会で公金の

          国立西洋美術館も騙された贋作事件(2)

          国立西洋美術館も騙された贋作事件(1)

          美術品には、一つ大きなリスクがあります。 それは、贋作の存在です。 なにしろ、あの国立西洋美術館ですら贋作に騙された過去があるのです。 今もなお同美術館の地下には、大金を支払って購入したものの、後に公開されなくなった2枚の絵があると言われています。 1枚はラウル・デュフィ「アンジュ湾」、もう1枚はアンドレ・ドラン「ロンドン橋」と伝えられる作品ですが「真作とするには疑わしい」として展示されなくなったのです。 当時はまだ文化庁付属機関だった国立西洋美術館の失態は、当時の国会でもと

          国立西洋美術館も騙された贋作事件(1)

          フォーヴィスムの仲間と“色彩の魔術師”

          フランスには“色彩の魔術師”と呼ばれた画家が三人います。 一人目は「民衆を導く自由の女神」を描いたドラクロワ。 二人目は、原色を多用したフォーヴィスムの中心人物だったマチス。 今回は、マチスに影響を受けつつも、独自の道を歩んだ三人目の魔術師について見てみましょう。 三人目の“色彩の魔術師”の名前はラウル・デュフィ。 一般的にはフォーヴィスト(野獣派)の一人と見られていますが、それだけの画家ではありません。 そもそもフォーヴィスムは、キュビスムのように明確な理論のある芸術運動

          フォーヴィスムの仲間と“色彩の魔術師”

          独学で絵を学んだ、最も野生的な画家

          野獣派(フォーヴィスト)の画家の中で、現在、最も作品の評価額が高いのは誰でしょう? それはもちろん、グループのリーダーと目されたアンリ・マチスです。 では、2番目に価格と評価が高いのは誰でしょうか? その答えは、おそらくモーリス・ド・ヴラマンクになります。 ヴラマンクの1905年の作品「郊外の風景」は、2011年のクリスティーズ・オークションにて約2000万ドルで落札されました。この価格はルオーやマルケの最高額作品の10倍にもあたります。 このヴラマンクは、経歴も異色です。

          独学で絵を学んだ、最も野生的な画家

          我が子のように愛したコレクション

          いわゆるアート・コレクターといえば、バーンズ・コレクションを作ったアルバート・バーンズや、ロックフェラー・コレクションのデイヴィッド・ロックフェラーなど、大富豪の名前が上がるものです。 しかしアメリカには、収入も生活も一般庶民なのに、その二人と並ぶくらいに有名になった市民コレクターがいます。それが、ハーバートとドロシーのヴォーゲル夫妻です。 郵便局員のハーバートと図書館司書のドロシーはごく普通の公務員夫婦ですが、熱心なアート・コレクターであり、40年以上に渡ってコツコツと40

          我が子のように愛したコレクション

          最も“野獣”から遠い野獣派――アルベール・マルケ

          決して派手ではないけれど、見た人を立ち止まらせる絵があります。一見、何の変哲もない風景画に見えますが、景色の本質をとらえた上手さがあるからです。 その画家の名前はアルベール・マルケ。 美術の教科書では、フォーヴィスム(野獣主義)の画家として紹介されていますが、原色の激しさとは対極にある、優しい絵を描く画家です。 日本ではあまり知名度が高くないため、カタカナでマルケと書くと、同時代のドイツの画家マルクやマッケと混同されることもあります。 マルケとはどのような画家だったのか、この

          最も“野獣”から遠い野獣派――アルベール・マルケ

          投資資産としての絵画

          絵画には様々な楽しみ方があります。 一つはもちろん見て楽しむこと。もう一つは飾って楽しむことです。飾ることは、単に絵画そのものを鑑賞するだけでなく、飾る場所全体の調和やインテリアを考える楽しみになります。 それから、所有する楽しみがあります。美術館に行けばいつでも見られる絵画より、私たちはなぜか所有している絵画に愛着を覚えるものです。所有欲は人間の根源的な欲求の一つです。気に入った一つを所有するのも良いものですが、たくさん集めるコレクターの楽しみもまた別にあります。 そして、

          投資資産としての絵画

          マチスの親友の画家って誰?

          野獣(フォーヴ)と揶揄されるほど原色を駆使して色鮮やかな絵画を描いたマチス。 20世紀を代表するフランス人画家として有名なマチスは、気難しい人の多い芸術家の中では珍しく社交性が高く、ルノワールやピカソとの交流の記録も残っています。 ピカソの恋人だったフランソワーズ・ジローの書籍『マティスとピカソ―芸術家の友情』(河出書房新社)にもその一端が描かれています。 しかし、マチスが最も深く友情を結んだ画家は、ルノワールでもピカソでもなく、頑固で物静かな一人の宗教画家でした。 その名

          マチスの親友の画家って誰?