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なぜ人文学徒がHRTechでITエンジニアをやっているのか(※2024年03月時点で大幅に改稿、改題)

What

一人の開発者が、自分・自社について現時点で思っているところをひたすら書き連ねる記事です。概ね下記のような性質・目的意識のもとに書かれています。

  • 社外の読者の皆様に、株式会社ROXX、とりわけRecords事業部に興味を持ってもらう

  • 社内の仲間にパッションを伝える

  • 自分のために、現状認識を整理する

本音に近いところを綴るつもりでいます。

本記事のウリ

といっても、読者のみなさまにも益する点がなければきっと読んでもらえないことでしょう。そのため、本題に先立って、自分としてはここが面白いのではないかと思っているポイントを挙げておきます。

  • スタートアップの一エンジニアが、「事業の有する/有すべき社会的価値」についてどのような認識でいるか、がわかる

  • 株式会社ROXXに所属しているエンジニア(N=1)の性格的傾向が把握できる

Who

株式会社ROXXのWebアプリケーション開発者兼SREです。社内でのあだ名に由来して、「ぎゃる」を名乗っています。

どんな人?

大学では宗教学を専攻しておりました。大学院を中退したのち、充電期間を経て、未経験でITエンジニア職に転身しています。
中途採用で滑り込んだ会社でPHP / Laravelを辛うじて覚え込んで、SESとして受託開発の現場に入場した、と言えば、伝わる人には伝わりそうです。

ロールについて

状況によって書面上の所属や建て付けが変わってくることもあるのですが、基本的にはRecords事業部の開発しているプロダクトについて、以下の貢献をしています。

  • アプリケーションの開発

    • 現代的なレンダリング方式(SSG, ISR, SSR)を使い分けるような、Webクライアントサイドアプリケーションを設計・実装する

    • バックエンドサーバーのアプリケーションを設計・実装する

    • それらのパフォーマンスを改善する

  • クラウドインフラの構成管理

    • IaCを通してのIaaS操作

    • ドメイン管理

    • ビルド&デプロイの継続性の確保(CI/CDパイプラインの作成と維持管理)

  • セキュリティ

    • Datadogなどのモニタリング基盤を用いたシステム横断的な監視

    • 新規に選定する技術・ツールのPoC実装やセキュリティチェック

社内的な来歴

2021-03 agent bankの開発者としてJOIN
「正社員未経験・非正規雇用層の就業を支援する」プラットフォームである点に一定の共感を抱き、参画しました。
このレイヤーにおけるエージェント・キャリアアドバイザーの介在価値を考えてきたことは、次の事業部での活動でも役立っています。

2022-06 Records事業部に合流、現在に至る
正社員未経験層を主なターゲットとした就業支援サービスの範疇で、新規事業を連続的に立ち上げています。
agent bank同様に正社員未経験層へのアプローチを主眼としており、「採用・選考・就職活動から非本質的なプロセスを極力排除しよう」という指向性をもって事業・サービスを開発しています。

諸注意

現行の社会秩序に対する批判的認識の開示が意図するところ

本記事は時として「いわゆる学歴・学校歴社会やエリーティズム」に対して批判的なまなざしを呈するかもしれません。
しかし、それは「既成秩序のなかで懸命に最適な選択を取ってきた人の努力を踏み躙る」ためのものではありませんし、そうであってはならないです。

もっと直截的な言い方をすれば、こうです。

受験生はガチで勉強した方がいいし、いい大学に行けるなら行っておいた方がいい。親を頼るのも悪いことではない。
大学では勉学もそこそこに、コネやテクニックで単位を稼ぎつつ、バイトやサークルに明け暮れて要領良く過ごすといい。
就活作法にはよく馴致して、優良企業に就職した方がいい。
全く否定しないし、上記のような生活を全うするのはそれはそれで高度なことだ。現況における最適解のひとつであることには違いない。

「強者の論理は否定しないが、弱者により共感的である」スタンスを採る。そういうことです。

真理は追究しない

  • 本音を、テーブルトークのように語る場にしたい

    • そうした意図のもとに書く以上、論証上の厳密さは保てないし、そもそもそのつもりもない

    • ここには俺の気持ちだけが表現されている

※対話は歓迎します。

社会課題解決型プロダクトを志向する

折り合いをつけていきましょう

政治的に尖った空間で息をしてきた都合、友人知人にはよりラディカルな方法での社会変革を試みる人々がいます。自分もそうするべきなのかもしれないな、と思うこともしばしばありました。

ただ反面、実際的な変化に寄与しないアリバイづくり的な「運動」や、憂さ晴らしに過ぎないアジテーションに、幻滅してもいます。

それでもなおも、「この世を住みやすくしたい。より良質な正義が通用する世の中に変えていきたい」という志向性そのものには疑う余地なく共感しています。

そうした感情面の事情・思想信条の変節、また自己の社会的状況(借金を返したり家族を助けたりしていかなければならない……)を考慮した結果、さしあたり政治活動のアクターでなく、一会社員として社会課題解決に向き合うこととしました。
修正資本主義的だと言われればそれまでですが、自分は自分にできることを淡々とやります。

そして、そのためには社会課題解決型のプロダクトを志向した開発行動が自分にとってベストな方路だと判断したのです。
ITエンジニアを志望した段階で、そのようなキャリアラダーを思い描いていました.

病んでいるのはどこ?

さしあたり、特にわたしが閉塞感を覚えているのが労働およびわれわれの労働観です。
人が働くこと、さらにもっと手前の「働こうとすること」にネガティヴな雰囲気が漂っているよな、ということです。
学部生である期間を特に「モラトリアム」と表現するのも、この問題と同根でしょう。

労働は希望ではなく、格差や差別は形態を変えて残存し、学ぶ楽しみは膾炙していない。この社会は、なおも未熟だ。
だが、われわれは現在、そのなかでどうにかして幸せに生きる必要がある。

現在の就活・転活市場の何が厭なのか

では、具体的に何がこの雰囲気を作り出しているのでしょうか。
以下では自分の感じる厭なポイントを示しつつ、その背景にある構造を簡単に分析します。また、それに対して大枠でどういう打ち手を考えているかも、手短にお話しします。

学歴フィルタリングが損なうもの

「学歴フィルター」という言葉を聞いたことのない人はまあほとんどいないと思います。それだけポピュラーになった概念ですが、とはいえ問題含みであることは大方の同意が得られるのでないでしょうか。

ただやはり、大量選考が必要な大手企業、あるいは中小企業でも採用枠が少ない企業にとって「最も効率の良い足切り観点が学校歴である」ことは間違いありません(ただし、「現状は」です)。

それでも学歴フィルタリングに問題があるとすれば、きっと以下のような内容です。

先述の通り、フィルタはフィルタとしての一定の合理性があるから使われます
ただ、フィルタは時として、濾過すべきでないときまで濾過してしまうのです。例えば、業務遂行能力や熱意があったとしても求人要件「高卒」で落とさざるを得ない場合
また、「高校までは怠惰であったが、大学で勉学に努めた」という人は、その労力に対してやや報われにくいのではないか、とも思っています。これについて証拠を争うつもりはありません。あくまで「周囲を見る限りだと、自分にはそう感じられる」ということです。

また、こういう反論が想定されます。つまり、「そんなケースが幾らか存在するにせよ、全体から見れば少数だろう。仕方ないのではないか?」と。
それはそうです。だから。
わたしや、わたしと似た考えを有する人は「統計的な傾向が認識論的に少数を押し潰す」という状況に対して不満を覚えているのだと思います。
言い換えると、この少数を掬い上げつつ何とか企業利益も両立する方向を探し求めている、とも。
(より究極的には、少数ではなくしてしまうということも考えられますが、そこまでいくと別の話ですね。)

選考プロセスの煩雑さがもたらすイヤなカンジ

選考に落ち続ける苦痛には、身に覚えのある方もいらっしゃることでしょう。
お祈りメールが自分の存在価値を否定してくるように感じられる……居場所が存在しないように思える……気力が、なくなる。

何も前向きでもないし、個人をここまで抑圧する文化が明日を良くするとはどうも思えません。

また単に落ち続けるということだけでなく、「無駄に長く待たされる」「理解し難い煩瑣なプロセスに巻き込まれる」「道理の通らない要求をされる」という体験が心をすり減らしてしまうこともあるのではないでしょうか。

当然、選考に落ちた候補者側にも、何らかそれに足る理由・原因が存在した/することでしょう。

けれども、「真剣に身を投じても上手くいかない」という状況はできる限り減らしたいのです。
「選考不通過が行動変容をもたらす適切なフィードバックとして機能する」状況にしたい、とも言えます。
また、選考プロセスがむしろその努力を阻害する方向に作用しているとしたら、それは是正しなければなりません。

規律訓練そのものな就活のお作法

集団形成において、成員個人に一定の規範意識を持たせる必要があるのは分かります。
ただ、個の特性を大きく抑圧してまで規範構築を優先すると、実運用に歪みが生じるのもまた推して知るべきところでしょう。

公教育においては個性・多様性を奉じるかのような言説が振り撒かれているものの、しかし、市場は異様なまでの一様性を要求する。してしまう。
企業サイドが候補者側に多様性を求めていても、就活市場の構造自体に潜む脆弱性が、画一的な就職活動を促進する。

斯様な実態ゆえに就職活動に疲弊してしまったりやる気を失ってしまう人がいても仕方ないですし、個人的にはそういう人に対してより共感を覚えます。

なお、このような現況に対するアプローチとしては既にNPO法人キャリア解放区様のアウトロー採用などが存在しています。
個人的に強く支持している取り組みですが、自分はROXXで、別口の解決を追求していこうと思っています。

では、企業はevilなのか

そうではないと考えています。勿論、世界に悪い企業が存在しないというわけではありません。おそらく沢山あります。

ただ、あくまで一般論を考えるなら、企業は企業で経営上の最適化戦略に則っているだけでしょう。あるいは、人間の技術的・認知的限界によってベストな意思決定に辿り着けない状態にあるのかもしれません。いや、その両方ですね。

フィルタリングは、選考上の合理性があるから行う。規範意識は、就職後の業務への適応にも一定必要となるから要求している。煩雑なプロセスにも、何らかの事情が存在する。

学生はどういう状況にあるのか?

学生については、学業に勤しむことにさほどのインセンティブがない状態にあると考えています。特に人文学系の学科だと顕著ではありますが、あえて学科を問わず、全体としても言えることだと思います。

アカデミックスキルを身につけるよりも、実務に役立つ(とされている)経験を積んだり、協調性やリーダーシップをアピールできるようなエピソードを得るための活動に時間を費やす方が、端的に高効率かつ心地よいからですね。

これについては、(本当に学知を重視するなら)積極的な勉学行為へのインセンティブが生まれるような社会にするための価値転換が必要になることでしょう。
(弊社・事業の直接の対象領域ではありませんが、個人的にはアプローチしていく方法を考えていきたいところです。)

未経験層はやる気があっても、どうしたら良いかわからない

初手からミスマッチすぎる求人に大量応募してしまう。
何を携えていけば受かるのかが判断できない。
キャリア形成のイメージが湧かない。
そして「そのことに自分で気づかない」という人は存外に多いのではないでしょうか。HRTechに携わってまだ日は浅いですが、そのような事例を頻繁に見かけます。

少し認識が変われば、自己認知と社会的評価とが近づけば、良いキャリアに乗り、建設的な努力を始められるのに、その手前で転けてしまう。
このような状況にあってはCA(キャリアアドバイザー)の介在価値が高まるはずです。

ただ、介在価値を発揮すべき場面以外の煩わしい業務は依然としてCA業務内に残存していますし、肝心の就業支援内容の打ち手も、おそらくCA個人の人格やスキルに依存する部分が大きいのではないかと思います。

弊社事業が介入する点はここです。非本質的な業務をプロダクトが省力化し、求職者と向き合い、打ち手をともに考え抜いていく時間を増やす。
より良いキャリアアドバイジングを世の中に増やしたい、そういう思いと意図を以って、プロダクトを成長させようと、日々事業課題に向き合いながら、アプリケーション開発を行っています。

どうすれば変えられるのか

より効果的な選考手法・プロセスを発明してしまえば、学歴フィルタリング、いやもっと言えばメタデータによる判断そのものを減らすことができるはずです。

候補者の「ソフトスキル」「やる気」「業務適正」など本質的に知りたい情報をより高精度により素早く取得・推測する手立てを用意する。
無論、企業体が社会集団である以上、「一定の群を形成し、同質な者の共同体へと収斂していく」というその傾向性自体は否定できないとも思います。
ただ、その「同質さ」がメタデータよりも、当人の実際的なスキル・意欲・感情に軸を有するものであってほしい。

話を戻します。「新しい選考プロセスをモデリングし、プロダクトとして結実させ、利用者である企業・求職者の成功体験を増加させる」ことが現状の打ち手だと認識しています。
改善を繰り返し、世の中の就業体験・採用体験を向上させることで、就職・転職活動自体にまとわりつくネガティヴなイメージや雰囲気も幾らかは払拭できるだろう、と。

転職市場活性化、雇用の流動性を高める、人材獲得競争が正しく企業体の改善に寄与する状況を作る

単に入口のプロセスが最適化されただけではなおも足りません。
みんなの労働観を前向きなものへと変質させるにはやはり、仕事の楽しさ・やりがいが仕事に付随する苦痛を上回る必要があります。

苦痛の低減については、業務改善や福利厚生の充実化が一定寄与するでしょう。であれば、それを促す圧力としての「雇用の流動性」が上昇すると良さそうです。
「人材獲得競争が正しく企業体や業務の改善に寄与する状況を作る」とも言い換えられます。

そして、自分達の事業がまず行うべきことは

  • 転職活動を、ハイレイヤー以外の世界でもあたりまえにする

  • 転職に必要な助走をなるべく少なくする

  • 入社決定までの体験を、企業・求職者にとって負担が少なく、かつより早く終わるようにする

といった転換です。

結論要約

「長過ぎ。読めない。今北産業」に対応します。紳士なので。

  • 筆者は世の中の就職活動から厭な感じを取り除いていきたい

  • 現状には現状の合理性がある。結局、より良い採用・選考プロセスを市場に提示することでしか打倒できない

  • 筆者は社会課題解決のためのエンジニアリングを志向している

お仲間募集中

ロックの会社です。ロックの会社ですが、音楽性の違いがあっても共存できる懐の深さがあります。

というわけで、採用情報です。


比較的真面目な勧誘

HRは当然、誰かの人生にダイレクトに影響を与え得る領域です。
特に弊社が多く事業展開している入り口系(採用支援・就業支援)は、良くも悪くも誰かの人生のターニングポイントとして機能しやすいフェイズです。
だからこそ緊張感がありますし、何より楽しいです。

さて。わたしたちと、世の中に前向きな第一歩を増やしませんか?


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