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理学療法士・ピラティスインストラクターが考えるジャンパー膝の予防
1.はじめに
『ジャンパー膝』はバレーやバスケットなどジャンプを行うスポーツでよく見られる疾患です。その予防に効果があるのが『スクワット』です。
ですが、ただ平地で行うスクワットでは効果は低いようです。では、どのように行うのが効果的なのか?その方法を以下にまとめていきたいと思います。
2.ジャンパー膝とは?
ジャンパー膝とは繰り返すジャンプ動作によって起きる膝蓋腱の付着部炎症障害をいいます。
発生頻度はバレーやバスケットなど激しいジャンプ動作を繰り返し行うスポーツに多く見られますが、それだけでなくサッカーやラグビーなどのスポーツでも発生する疾患です。
そして特に若い選手に好発します。何歳ごろが発症しやすいかは明確にされていませんが、ある研究によると腱が思春期を過ぎ形成されると、安定する為発症数も減少すると報告がありました。
つまり、若く腱組織が不安定な時期ほど発症リスクが上がるという事になります。
初期症状はスポーツの時のみに痛みがありますが、症状が悪化すると日常生活動作にも支障をきたすようになります。症状が悪化してしまった場合には約6か月程度の間、競技に復帰するのが困難になります。
このジャンパー膝についていくつもの研究報告がされており、痛みを発生する危険因子として
・大腿部の柔軟性の低下
・足首の可動性の低下
・ウェイトトレーニングの増加
・体重の増加
など、いくつもの要因がジャンパー膝へのリスクを上げることが分かっています。
他にも競技パフォーマンスでの危険因子にジャンプや着地動作のパフォーマンス低下が考えられます。
前述した大腿部の柔軟性や足首の可動性が低下すると、着地動作のパフォーマンスが低下し膝蓋腱への負荷が上がり、ジャンパー膝が発生するリスクを上げてしまうと報告があります。
実際にジャンパー膝になった事がある群となった事のない群では着地動作に違いがあるという研究報告もありました。
上は着地動作の違いについて図式してあるものです。
左は正常な着地動作に対し、右は着地動作のパフォーマンスが低下しているものです。ここまで極端な差があることは少ないと思いますが、パフォーマンスの低下がリスクを上げることはイメージできるかと思います。
また、痛みのグレードも上記のように分岐されています。
0 痛みなし
1 激しいスポーツ活動後のみ痛む:過度の機能障害なし
2 スポーツ活動の前後に痛む:それでも充分にスポーツ活動が出来ます
3 スポーツ活動中に痛む:充分にスポーツ活動を行う事が困難になります
4 スポーツ活動中に痛む:満足のいくレベルでスポーツ活動を行えません
5 日常生活中の痛み:どのレベルでもスポーツ活動ができない
以上が訳の内容になります。今どの時期なのか、判断の指標にしてください。
3.どんなスクワットが効果的か?
では、このジャンパー膝を予防するにはどのようなスクワットが効果的なのか?
答えは『傾斜台を用いたスクワット』です。
傾斜台の角度を15~30°の間で使用すると、足首などにかかる負荷を減らす反面、膝蓋腱への負荷を増やすことが出来るようです。
スクワットの際、膝を曲げる角度は60°が望ましいです。それ以上曲げて行うと、膝蓋大腿関節にかかる負荷が上がってしまうからです。
また、膝を曲げる際はゆっくりと曲げる方が効果的です。重力に抗してゆっくりと行うトレーニングをエキセントリックトレーニングと言いますが、過去の研究では162名を対象に12週間 1日2回行った結果多くの対象者に改善がみられたという報告がありました。
ぜひ、予防トレーニングとして実践してみてください。
詳しいトレーニングの内容をYouTubeにまとめていますので、そちらも合わせてみてください。
4.さいごに
今回紹介した傾斜台を使用したスクワットを行うことで膝蓋腱の抵抗力をアップさせジャンパー膝の予防が期待できますが、前述したようにジャンプ動作のパフォーマンスを改善させることも予防の1つです。
大腿部と足首の柔軟性の改善や骨盤帯の機能改善もパフォーマンスアップにつながります。
着地の時に骨盤帯の位置の違いによって大腿四頭筋が伸張され結果的に膝蓋腱にかかる負荷が増加するからです。
今後ジャンプのパフォーマンスについて論文がありましたら、まとめてみたいと思います。
また、今回紹介した内容はあくまで予防ですので、実際競技中に痛みや症状がある場合は専門の人に見てもらうことをおススメします。
最後にこの記事を読んで少しでも参考になりましたら、スキやフォローよろしくお願いします♪
5.まとめ
・ジャンパー膝は膝蓋腱付着部の炎症疾患です。
・予防には15~30°の傾斜台を用いたスクワットが効果的です。
・競技動作のパフォーマンスも見直してみましょう。
理学療法士・ピラティスインストラクター 辻川真悟
参考・引用文献
・Current Sports Medicine Reports: September 2008 - Volume 7 - Issue 5 - p 296-302
doi: 10.1249/JSR.0b013e31818709a5
・Lian, O.B., L. Engebretsen, and R. Bahr. Prevalence of jumper's knee among elite athletes from different sports: a cross-sectional study. Am. J. Sports Med. 33:561-567, 2005.
・ Bisseling, R.W., A.L. Hof, S.W. Bredeweg, et al. Relationship between landing stragegy and patellar tendinopathy in volleyball. Br. J. Sports Med. 41:8-13, 2007.
・Zwerver, J., S.W. Bredeweg, and A.L. Hof. Biomechanical analysis of the single-leg decline squat. Br. J. Sports Med. 41:264-268, 2007.
・Visnes, H., and R. Bahr. The evolution of eccentric training as treatment for patellar tendinopathy (jumper's knee): a critical review of exercise programmes. Br. J. Sports Med. 41:217-223, 2007.
・James, S.L.J., K. Ali, C. Pocock, et al. Ultrasound guided dry needling and autologous blood injection for patellar tendinosis. Br. J. Sports Med. 41:518-522, 2007.
・Physiotherapy management of patellar tendinopathy (jumper's knee). Journal of Physiotherapy 60: 122–129]
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