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理学療法士・ピラティスインストラクターが考えるキック力増強方法


1.はじめに

今回参考にした論文は2018年International Journal of Sports Science & Coachingに掲載されていた『サッカー関連のパフォーマンスに対するトレーニングの効果』についてです。

サッカーは90分の時間の中でスプリントやジャンプ、方向転換やボールキックなどあらゆる動作が必要な競技です。

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その中であらゆる場面が想定できますが、速いボールを蹴ることが出来るというのは、パスやシュートなど試合を有利に進めることが出来ます。

では、どのようなトレーニングを行うことで現状よりもパフォーマンスを上げることができるのか?

今回のブログはキック力アップについてまとめていますが、フォームやどの筋肉を鍛えればいいのか?などではなく、あくまで現状のパフォーマンスからプラスにするにはどのようなトレーニングが効果的なのか?
と、いうことをまとめたものになります。

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参考にした論文は2018年とやや古いものですが、そのほか類似している論文は2020年のものもありますので、そちらも合わせてまとめていきたいと思います。


2.どのような研究なのか?

では、今回の論文は実際どのような研究だったのか?

研究の対象者は14歳以上のサッカー選手で構成されており、コントロール群を従来のサッカートレーニングのみを行った群として比較されました。

比較されたトレーニングはレジスタンストレーニングを行った群とプライオメトリックトレーニングを行った群の2グループで、
・垂直とび能力
・直線のスプリントパフォーマンス
・ボールありの方向転換
・反復スプリント
・キックパフォーマンス
の以上の動作を比較しました。キック力に限らずこれらの動作はサッカーを行う上で必要になってくる動作であり、少なからずこの動作がパフォーマンスアップすることで有利にゲームを進めれるようになることも想像がつくかと思います。

そしてレジスタンストレーニングにはスクワット・レッグプレス・ランジ・カーフレイズ・デッドリフトなど様々な筋力トレーニングで構成されており、
プライオメトリックトレーニングには様々なジャンプトレーニングで構成されていました。

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では、結果を以下にまとめていきたいと思います。まず、キックパフォーマンス以外の4つ(垂直とび能力・直線のスプリントパフォーマンス・ボールありの方向転換・反復スプリント)のパフォーマンスについてです。

結果はどれもプライオメトリックトレーニングを取り入れているグループの方がばらつきがあるものの、パフォーマンスの改善がみられていました。

そして各種動作について気になった点がありましたので、そちらもまとめていきたいと思います。


□垂直飛び能力
プライオメトリックトレーニング群は大きな改善がみれたのに対して、レジスタンストレーニング群は一部低下しているグループも見られました。これはプライオメトリックは筋肥大を誘発することなく下半身の機能を向上させたのに対して、レジスタンスは累積的な倦怠感と体重の増加をもたらした為ではないか?と考察されていました。

□直線のスプリントパフォーマンス
垂直飛びと同じくプライオメトリック群が大きな改善が見られましたが、今回のレジスタンストレーニングはどのような速度でトレーニングが行われているかの記載がありませんでした。レジスタンストレーニングを行う上で、速度が関係していることは、下記の動画にも詳しく説明してありますので、そちらも参考にしてみてください。

□ボールありの方向転換
今回プライオメトリック群が若干の改善がみられていますが、サンプルサイズが小さく精度が低いため確固たる結論を出すことが出来ないとされています。
これは方向転換のパフォーマンス自体が筋力などだけではなく、もともとの選手の技術的な能力に大きく影響を受けるためだからです。


そして気になるキックパフォーマンスの結果についてです。

結果はプライオメトリック群の方がパフォーマンス改善がみられており、しかもそのほか4つの動作よりも大幅な改善がみられていました。直線のスプリントパフォーマンスと同じように運動速度に焦点を当てていなかったため、レジスタンスが効果がないとは言い切れませんが、プライオメトリック群の改善が大きかったことは確かです。

もしかしたら、プライオメトリックと併用しながら運動の速度を考慮したレジスタンスを取り入れるとさらなる改善があるかもしれません。

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3.その他の研究の結果は?

では、それ以外の研究ではどのような結果となっているのでしょうか?

2020年の女性サッカー選手垂直とび、直線スプリント、方向転換パフォーマンスに対するトレーニング効果(レジスタンストレーニングとプライオメトリックトレーニングの比較)についての研究ではどうだったのか?

この研究の対象者は女性サッカー選手で特に年齢やどのクラスを対象にしているのか?などの記載はありませんでした。

結論からいうとプライオメトリックトレーニングの方がレジスタンストレーニングより高いパフォーマンス効果が得られていました。

そのほかの類似した研究をいくつかみてもプライオメトリックトレーニングの方がパフォーマンスがあがるという報告結果でした。

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また、プライオメトリックトレーニングの実施した期間について以下のようにまとめられていました。
『一方プライオメトリックトレーニングの特定プログラム、例えばより長い研究期間(8週間以上)、トレーニング頻度の減少(1週間に2セッション未満)、より多くのトレーニングセッション(16以上)、より長いセッション期間(30min以上)、垂直跳びのパフォーマンスの効果を高めることができますが、これらの要素を組み合わせると必ずしも相乗的であるという示唆はありません。』

この事を考えるとプライオメトリックトレーニングを行う頻度などは、しっかりとメニューを組むためにより専門性が高い人にコーチングしてもらう必要があるかのように思えますが、短期間の実施でも効果は下がるのですがパフォーマンスアップがみられるため初心者の方でも行いやすいように思えます。

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この研究結果の中にキック力についての記載はなかったのですが、その他のスプリントや方向転換などは、はじめに参考にした論文とおなじ結果になっており、参考にしている研究の結果と相違点が多いためキック力アップも同じような効果が期待できるかと思います。

今回プライオメトリックトレーニングが効果があったという結果となっていますが、レジスタンストレーニングが全く効果が無いわけではありません。思春期も高負荷によるケガを注意すれば必要なトレーニングで、実際今回の研究でもプライオメトリックトレーニング群には劣りますが、レジスタンストレーニング群でも多少の改善はみられていました。

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4.まとめ

今回参考にした論文は現在の能力からパフォーマンスをあげるにはどのようなトレーニングが必要なのか?ということについてまとめたものになりました。

単純にキック力をあげるなら、フォームの改善や内転筋や大腿四頭筋・下腿の筋力など必要になってくるかと思いますが、今回のようなプライオメトリックトレーニングを取り入れることで、パフォーマンスのベースアップになるかと思います。

また、キックのフォームも各個人で異なるため一概に『ココの筋肉を鍛えればキック力があがりますよ』とも言い切れない部分があります。その点プライオメトリックトレーニングは個人の能力アップに繋がるため様々な人に有効である気がします。

まだプライオメトリックトレーニングをトレーニングメニューに取り入れてない人は是非実施してみてください。

最後にこの記事を読んで少しでも参考になりましたら、スキまたはフォローよろしくお願いします‼︎


理学療法士・ピラティスインストラクター  辻川 真悟


参考・引用文献

・THE EFFECT OF PLYOMETRIC TRAINING ON POWER AND KICKING DISTANCE IN FEMALE ADOLESCENT SOCCER PLAYERS
MACK D. RUBLEY, AMARIS C. HAASE, WILLIAM R. HOLCOMB, TEDD J. GIROUARD,AND RICHARD D. TANDY

・Effects of Strength vs. Plyometric Training Programs on Vertical
Jumping, Linear Sprint and Change of Direction Speed Performance in Female Soccer Players: A Systematic Review and Meta-Analysis

・EFFECTS OF LOWER-LIMB PLYOMETRIC TRAINING ON BODY COMPOSITION, EXPLOSIVE STRENGTH, AND KICKING SPEED IN FEMALE SOCCER PLAYERS

・Eects of Plyometric Jump Training in Female Soccer Player’s Physical Fitness: A Systematic Review with Meta-Analysis

・Effects of different conditioning programmes on the performance
of high-velocity soccer-related tasks:Systematic review and meta-analysis
of controlled trials

・The ball kicking speed: A new, efficient performance indicator in youth soccer

・Effects of Plyometric Jump Training on Jump and Sprint Performance
in Young Male Soccer Players: A Systematic Review and Meta‑analysis

・THE EFFECT OF 8-WEEK PLYOMETRIC TRAINING ONLEG POWER, JUMP AND SPRINT PERFORMANCE IN FEMALE SOCCER PLAYERS

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