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グロインペイン症候群にはコペンハーゲンがオススメ!!!股関節の付け根の痛みの解説

はじめに

今回はアスリートの股関節の付け根の痛みの予防についてご紹介します。
股関節の付け根の痛みのことをGroin painと専門的には呼ばれています。

有名な選手では中田英寿選手や長谷部誠選手などがこのケガに悩まされたようです。

サッカー選手に好発するケガですが、フィールドホッケー選手や陸上選手、激しいトレーニングを行う方などのキック動作や方向転換動作など捻りが多い種目の選手に多くみられます。

腹筋と内転筋

Groin painは今まで原因がよく分からなかったり、治療法や予防方法も不明であったため、多くのアスリートが悩んでいた怪我の一つです。

グロインペインとは?

しかし、2015年にドーハで開催された会議で用語や診断基準が統一されました。
しかも、予防する方法は家でも外でも簡単にできる方法だったので紹介させていただきます。
その方法は、『股関節内転筋群の遠心性収縮トレーニング』です。

股関節内転筋群は、『青色』の部分で太ももの内側の筋肉の総称です。

内転筋

コペンハーゲンex!!!

この筋の遠心性収縮のトレーニングは、コペンハーゲンexです。

コペンハーゲン

レベル1~3まであります。1が低負荷、2が中等度、3が高負荷です。
A⇔Bで反復します。
痛みが出ないレベルを選択してください。
1週目は週2回、左右3~5回を1セットです。
2週目は週3回、左右3~5回を1セットです。
3~4週目は週3回、左右7~10回を1セットです。
5~6週目は週3回、左右12~15回を1セットです。
シーズン中は週1回、左右12~15回を1セットです。

2015年のドーハミーティングの前後で多くの論文が発表され、エビデンスレベルの高い運動療法とされています。
長期的な有効性と予防として有効であるとも報告されています。

もちろん、股関節唇損傷や変形性股関節症などによる股関節付け根の痛みは手術など外科的治療が必要な場合もありますので、痛みが続く場合は病院での医師の診断や検査が必要ですので注意してください。

ここで、なぜ股関節内転筋群のトレーニングが必要かを説明します。
Groin painは股関節の付け根の痛みであり、股関節内転筋群以外にも筋が付着しており、ほかのトレーニングも必要ではないか?と思われた方もおられると思います。
2016年のAndreas Sernerらの報告によると、Groin painを発症した選手の66%が股関節内転筋関連、25%腸腰筋、23%大腿直筋が関連していると報告しており、内転筋のトレーニングが重要であることを示唆しています。

グロインペイン鑑別テスト

またGroin painかどうかを鑑別するテストではスクイーズテストと呼ばれる股関節内転筋のテストで痛みが出るかを検査します。

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股関節内転筋を5秒間持続して収縮させます。その際、痛みの程度を0~10の11段階で聞き、0~2は安全域、3~5は注意、6~10は危険ラインと判断します。
このテストもAndreas Sernerらの報告でMRIなどを加えた検査で信頼性が高いと報告されています。
このテストに加え、股関節内転筋の起始部の触診もありますが、理学療法士などにやってもらった方が正確ですので、省略させて頂きます。

スクイーズテストの生理学的な根拠を報告した論文もありますので、紹介します。
2014年にJaap Jansenが報告した論文の中に、股関節内転筋を収縮させることで、恥骨結合のレベルで両方の腸骨が伸延し、恥骨靭帯または他の組織の不安定性関連の痛みが引き起こされると述べています。
またスクイーズテストで陽性であった患者と健常者での能力を調べた研究も紹介しており、唯一有意差が出たのは安静時の腹横筋の厚さと述べられています。
つまり、スクイーズテストが陽性のアスリートは腹横筋の機能が低下している可能性を示唆しています。

上記で示したコペンハーゲンexは股関節内転筋だけではなく腹部の筋もトレーニングできます。
結果的にコペンハーゲンexが有効であることを示唆できます。

体幹も大事

2014年のJaap Jansenの論文の中では腹横筋ex、つまりAbdominal Bracingではなく、Abdominal hollowingが推奨されています。
どちらがよいかは現在でも議論されていますので、実際トレーニングをしてみて、効果があるほうがよいと私は考えています。

Abdominal hollowingとAbdominal Bracingのトレーニング方法はYoutubeに載っているので参考にしてください。


まとめ​

今回は、Groin painについて紹介しました。
コペンハーゲンexだけではもの足りない、バリエーションが欲しいという方はThe Holmich Protocolというエビデンスレベルが高い運動もあります。腸腰筋と大腿直筋のexと合わせて次回以降紹介したいと思います。


理学療法士 稲吉直哉

参考文献
Adam Weir et al. Doha agreement meeting on terminology and definitions in groin pain in athletes. Br J Sports Med 2015;49: 768–774.

Haroy J, Clarsen B, Wiger EG, et al. The Adductor Strengthening Programme prevents
groin problems among male football players: a cluster-randomised controlled trial Br J Sports Med 2019;53:145–152.

Serner A, Weir A,Tol JL, et al. Can standardised clinical examination of athletes with acute groin injuries predict the presence and location of MRI findings? Br J Sports Med 2016;50:1541–1547.

Kristian Thorborg et al. Clinical Examination, Diagnostic Imaging, and Testing of Athletes With Groin Pain: An Evidence-Based Approach to Effective Management. J Orthop Sports Phys Ther 2018;48(4):239-249. Epub 6 Mar 2018. doi:10.2519/jospt.2018.7850

Jaap Jansen. THE ROLE OF ABDOMINAL MUSCLE RECRUITMENT : IN ATHLETES WITH LONG-STANDING ADDUCTOR-RELATED GROIN PAIN :SPORTS MEDICINE JORNAL 2014 260-264

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