学芸員とキュレーターは似て非なるものなり
学芸員を、英語に訳すと「curator」。
でも、私たち美術館の学芸員は、自分で「キュレーター」と名乗ることはありません。
「いやいや、キュレーターっていう肩書きの人、どこかで見たことあるぞ」と思うかもしれません。はい、日本にもキュレーターはいます。逆に言えば、彼らは自分を「学芸員」とは名乗らないでしょう。
そう、学芸員とキュレーターは、似ているよう全然違うのです。今回はそんな話をします。
日本でも海外でも、美術館で作品を扱う職業があります。日本ではそれが学芸員ですが、アメリカの美術館では次のような人たちがいます。
めっちゃたくさんいます(笑)。で、本当にきっちり分業されてます。
収蔵庫から作品を展示室に持ってくるとしても、キュレーターが勝手にやることはなく、むしろキュレーターは作品を基本触りません。まず作品の出庫記録を確認するレジストラーが来て収蔵庫の扉をあけて、つぎにハンドラーが来て作品を運ぶ。こんな感じで全てが進みます。
対する日本は、どうでしょう。私たち学芸員が担うのは、アメリカでいうキュレーター、レジストラー、ハンドラー、エデュケーターを全部あわせたような仕事全般ですね。いや、小さな美術館(うちだ!)だとライブラリアンも含むかな。
さすがに保存修復は別ですね。保存修復技術者がいる美術館も日本にいくつかありますが、多くの場合は外部の専門業者に修復を依頼します。
さて、これは何も日本の学芸員がオールマイティなスーパーマンだと言いたいわけではなくて、どちらかというと何でも屋的にあれもこれもこなしている、というのが実際です。ここ十年ぐらいで教育普及を専門的に行うスタッフ(学芸員でない場合もある)を置く美術館が増えてきたかなぁという印象はありますが、それでもアメリカやフランスとは全く違いますね。
さて、そんな日本で学芸員ではなく、あえて「キュレーター」と名乗る人はどんな人か。そうです、展示企画・立案に特化したプロという意味合いが強いです。
大学で学芸員資格を取得して、美術館に就職するという働き方ではなく、フリーランスとして「インディペンデントキュレーター」として様々な美術館やギャラリーの展覧会を企画するという働き方です。といっても、いきなり独立してもコネも経験もないので、企業やメディアの文化事業部または企画会社などでノウハウを積んでから独立という人が多いのかな。もちろん美術館に学芸員として勤めた後に、フリーのキュレーターとなる人もいます。
優れた企画力と実行力がもとめられるのがキュレーターですから、「大変そうだけど面白そうでもあるなぁ」というのが学芸員の私の感想です。
学芸員とキュレーターの違い、伝わったかなぁ。
あなたは、どちらの仕事に興味がありますか?
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