岡内香織

小説家。 かつて別名義でねっとりと甘い恋愛系ライトノベルを描いておりました。 現在イン…

岡内香織

小説家。 かつて別名義でねっとりと甘い恋愛系ライトノベルを描いておりました。 現在インスタにて、サルコレというマンガを更新しています。

最近の記事

Mrs.GREEN APPLE The White Lounge 行ってきたよ

こんにちわ。 タイトル通りで、感想を日記として残そうかな。 ちなみに私がミセスを知ったのは「インフェルノ」から。「炎炎ノ消防隊」をみていたので、かっこいいし歌詞が刺さるな、とYoutubeをヘビロテしてたなあ。でも彼ら自身に興味を持ったことは、ごめんなさい、なかったかも。数多あるバンドのうちの一つ。 大衆化を図ってるのかどうなのか、何かとその音楽が耳に届くようになってきて、私のプレイリストの中に彼らの曲が増えてきました。特にその歌詞世界は特筆するものがあり、ただただ『すご

    • ビハインドカーテン(1)

      【あらすじ】 幼馴染である立花圭人と戸仲正樹は、東城学園大学附属高校に通っている。新学年を間近に迎えたまだ寒いある日、崩れそうなほど古い部室の倉庫で、カビた段ボールを見つけた。その中で見たものは、気味が悪いほど圭人とそっくりな『夏目恵』という人物の学生証。夏目はかつてこの学校が男子校だった頃にあった寮から失踪した学生だった。運命的な発見を面白がる正樹は、この失踪事件について調べ始めたが、徐々に圭人の様子がおかしくなってきて……。 目に見えるものが、現実か、否かを問う、青春ミ

      • ビハインドカーテン(ラスト)

        エピローグ 嫌に清潔すぎて逆に病みそうな消毒薬の匂いが、真っ白な枕からする。明希が天井を見上げると、不規則な模様のボードが貼られ、またここに帰ってきたんだという気になって、一人部屋とはいえ気が滅入った。 今日はかなり暑く、窓から見る木々の色はずいぶん濃くなった気がする。モワッとした夏の独特な匂いが、風に乗ってこの真っ白な病室のカーテンを揺らした。 やはりあれからしばらく入院することになった。親曰く、一時は感染症でまずかったらしいけど、俺の意識が失われなかったのは、不幸中

        • ビハインドカーテン(31)

          第三章(6) 地鳴りとともに、再び地面が大きく揺れた。そして、ピシッと何かが割れる音がして、突然天井が崩れ落ちてきた。 「うわっ」 敬人は水の中に手をついて、後退りをした。 ガラスと一緒に、月の光が落ちてくる。ガラスがゆっくりとキラキラと反射して、ここはやはり異世界なんじゃないかと一瞬考えた。 気づくと隣に明希がいて、俺の手を引っ張り立ち上がらせる。 「大丈夫か?」 「うん、お前は?」 明希はそれには答えず、板塚に目をやった。 光と闇の境目に立ち、板塚は何か話して

        Mrs.GREEN APPLE The White Lounge 行ってきたよ

          ビハインドカーテン(30)

          第三章(〇) 「大丈夫? 理玖」 恵が板塚の腕を取った。 「助かった、ありがとう」 俺はぐしゃぐしゃに濡れた顔を腕で拭い、暗闇の中目を凝らして、恵に吹っ飛ばされた二人を確認した。 「身体は無事みたいだ。チャンスはある」 俺は背の高い金髪の方を一瞥した。 「あいつが邪魔だ。あいつをまずどうにかしないと」 「なあ」 その恵の声が震えていたのに、俺は気がついた。 「何?」 「……もう、やめよ」 恵は泣くのを堪えるように、顔をくしゃくしゃにしている。 「何、言ってるんだよ

          ビハインドカーテン(30)

          ビハインドカーテン(29)

          第三章(5) 正樹のことが心配だった。さっき、かなり深く板塚に刺されていた気がする。血も、溢れるみたいに流れてた。 もし、死んでたら。 いや、確認するまでは、死んでない。 明希とは洗濯室の前で別れて、もう一度娯楽室へと一人戻った。池は相変わらず月を写し、恐ろしいほどに美しかった。 数多の命をいただき、その代わりに豊かな水を与える。今この瞬間に池が眼前にあるということには、おそらくおぞましい意味があるのだ。夏目恵の体を再び取り込んで、俺たちをも欲しがってる。 敬人はス

          ビハインドカーテン(29)

          ビハインドカーテン(28)

          第三章(4) 不具合を起こした身体が、落ち着きを取り戻す。 明希は大量に流れた冷や汗を、手の甲でぬぐった。 ずっと答えを、そして数学のようにその答えに到達できる、確固たる理由を求めてきた。努力ではなんともならない生まれついてのハンデをなぜ俺が持っているのか、そう問い続けた。 心臓が止まった時に、一つの答えに辿り着いたけど、結局俺は納得できなくて、何度も何度も同じことを考え続けている。 今も。 これからも。 だって、絶対にわからないことだから。 だいぶ目も慣れてきて、

          ビハインドカーテン(28)

          ビハインドカーテン(27)

          第三章(3) 「正樹ーっ」 俺は、フラつく足で駆け寄ろうとしたが、「だめっ」とあかねに腕を掴まれた。 「今はやばいよ、逃げなきゃ」 「だって、正樹が」 「あんたには、先生、殺せないでしょっ!?」 未だかつて見たことないようなあかねの切羽詰まった顔に、俺はヒュッと短く息を吸って、再度倒れる正樹をみる。 そうかも? わかんない。 殺せるのかどうか、自信がない。 板塚が、力の全く入らなくなった正樹の身体の下から這い出るのを見て、俺は「逃げよう」と言った。 「来いっ、神

          ビハインドカーテン(27)

          ビハインドカーテン(26)

          第〇章 寮の一人部屋は、意外と心地がいい。窓を開けると、新緑の匂いのする風が、部屋の中に吹き溜まり、ゆっくりと渦を作る。 ざああああ。 耳に心地いい、葉と葉が重なり擦れる音がする。俺は硬いベッドに寝転がり、そっと目を閉じた。 今年のゴールデンウィークは、九連休になるらしい。公立高校のことはわからないが、私立だからか飛び石の平日も、臨時休校となっている。だから今この寮に残る学生は、休みなどない強豪スポーツ部の奴らと、親の事情で実家に帰れない数名だ。 だから、静かだ。

          ビハインドカーテン(26)

          ビハインドカーテン(25)

          第三章(2) 気が急く。 何度も何度も、目の前から圭人が消えたあの瞬間を思い出した。 今ならまだ、敬人は寮の中で生きている。あかねがしきりに主張していた『寮の中は異世界』説は、頭の中で『ない』寄りの保留になっている。明希が出してくる人間の痕跡の方が、信憑性を帯びていた。 ってことは、人間から敬人を守ればいいということ。夏目の呪いから解放するなんてことより、ずっと明確にやることがわかっていて安心する。 木々の間に、どんどんと日が落ちていく。葉と葉の間に潜んでいた影が、染

          ビハインドカーテン(25)

          ビハインドカーテン(24)

          第三章(1) 身体のそこかしこが痛いし、あまりにもカビ臭くて苦しい。 俺はどうなった? 圭人が恐る恐る目を開けると、じめじめとした暗闇の中にいることがわかった。やっとのことで体を起こし、中を見回す。 目を凝らすと、事務室のような机とロッカー、そして自分が寝かされていたソファのみの、小さな部屋だとわかった。 口がカラカラに乾いて、吐きそうだ。 ここはどこだろう? でもこのカビの匂いって。 ヒヤッとしたものが、背中を走った。俺はゆっくりと立ち上がって、自分が置かれて

          ビハインドカーテン(24)

          ビハインドカーテン(23)

          第三章(0) 気が重くないと言ったら、嘘になる。 恵が母親と会いたがっているのは、当然だと思った。あんな場所に一人きりずっと出られないでいて、母親はその安否も分からないなんて、地獄以外の何者でもないのだから。 俺が今からすることは、恵のためになるのに。 ざわざわと木々が揺れ、葉が放出する細かい水分が、身体の奥に居心地の悪さを起こさせる。虫がなく木々の間を抜け、ゆるい坂を登り、とっくに落ちた陽の名残を足の裏に感じながら、俺は毎年と同じようにあの家に向かっていた。 誰に

          ビハインドカーテン(23)

          ビハインドカーテン(22)

          第二章(14) 「てめえ、このやろう」 正樹は椅子から飛び出して、明希の襟元を両手で掴んだ。パイプ椅子が大袈裟な音を立てて転がり、化学薬品混じりの埃が舞い上がる。明希にのしかかった拳に、血管が浮き出ている。 「敬人の心を抉るようなことしやがって」 拳がブルブルと震える。 「知らねーくせに。お前は圭人がどんなやつだったか、知らねーくせにっ」 俺の激情とは対照的に、明希の表情はピクリとも動かなかった。 「何がしたいんだ、お前っ」 バアーンッ。 空気が破裂するような大き

          ビハインドカーテン(22)

          ビハインドカーテン(21)

          第二章(13) 「これからの方針を考えます」 いやに元気よく、あかねが宣言した。 日曜日を挟んで、翌月曜日の放課後。化学保管室のカーテンを閉め切ると、むわっとする。そろそろブレザーを着るのが暑くなってきた。太陽はあっという間にてっぺんまで登って、地面をジリジリと焦がしていく。まだ四月の終わりっていうだけで、こんなにも夏っぽい日差しを感じるなんて、変な感じ。 「で?」 あかねが顎をくいっと動かして、黙って座っている明希を促した。結局方針を打ち出すのは明希ってことなんだろう

          ビハインドカーテン(21)

          ビハインドカーテン(20)

          第二章(0) 思ったより、仕事が長引いてしまった。カビ臭く湿っぽい板張りの廊下を早足で歩き、いつものドアを開くと、オレンジ色のあかりが暗闇に一筋の線を引く。 「遅くなって、ごめん」 「いいよ、大丈夫」 恵はいつものスウェットを着て、低いベッドに腰掛けていた。黒く艶のある髪に、顎から耳にかけての細いラインは、ずっと変わらないままだ。 「おにぎり、ツナマヨでいいよな」 「うん」 恵は膝にコンビニの袋を乗せると、器用におにぎりのビニールを剥いていく。俺は恵に向かって椅子をくる

          ビハインドカーテン(20)

          ビハインドカーテン(19)

          第二章(12) この駅には、俺たちが入れるような飲食店は、何にもなかった。駅前には、古い定食屋とコンビニ、あとは地元密着型スーパーとドラッグストアあるだけで、あとはなんにもない。 「お腹すいたあ」 子供みたいに騒いで定食屋に入ろうとするあかねをなんとか諭して、俺たちは学校のある駅に戻ることにした。 電車内は空いていて、俺たちの声は少し響く。あかねはしきりにしゃべりたそうだったけれど、明希が「後で」と冷たく一言言うと、あかねは不服そうにしながら、腕を組んだ。 行きと違い

          ビハインドカーテン(19)