DX の心技体【6】最新技術・ソリューションをうまく活用し、新しいビジネスを作ること(デジタル技術の活用で経営課題の解決へ)
最新技術・ソリューションに対してどう取り組んでいけるか?
今回着目すべきは、前回のテーマのSmall Startを決めた後の、「デジタル武装強化」として、DXへの道をさらに強力に進めていこうという話です。DXロードの加速化です。
いよいよ心技体の『技』の中心的なところに踏み込んでいきたいと思います。
まずは、最新のデジタル化技術やそれを使ったソリューションの活用について、どのように考えていけばよいのか。
例えば、グーグルワークスペースやマイクロソフト365のようなコラボレーションツール&サービスを導入し、それでクラウドでのドキュメントの作成、共有、コミュニケーションや会議などで仕事のやり方や働き方を変えてみる。
クラウド上でのアプリ連携だけでなく、今ではRPA(ロボティックプロセスオートメーション)的なデスクトップでのアプリケーション間の自動化処理も簡単な設定でできたりもします。Amazonビジネスプロフィールに店舗を登録して、ビジネスサイトや店舗情報や商品のイメージなどを発信してみることで、マップ検索からの訪問客を増やしてみることも簡単にできます。
このあたりは、お金をかけなくてもすぐに出来そうです。
ここからは、デジタル技術の活用の観点で主な技術要素やソリューションについての考え方やポイントだけを少し話したいと思います。日々進化を続けるテーマですので、今はとりとめのない展開になりますが、少しずつアップデートしていければと思います。
クラウドファーストの時代へ
企業や政府などがシステムを導入・更新する際に、クラウドサービスを運用基盤とするシステムを最優先で検討すべきとするクラウドファーストの考え方があります。
クラウドサービスには様々な利用形態があり、既存のシステムから「クラウドシフト」や「クラウドリフト」するケースもあれば、クラウドで提供されているサービスをそのまま利用するSaaSのようなものもあります。普通に使われているGmailなどのメールサービスやカレンダーなど当たり前のようにクラウドサービスの価値を享受している現実があります。
政府の情報システムについても、クラウド・バイ・デフォルトの原則があり、デジタル庁主導で政府共通のクラウド基盤「ガバメントクラウド」も整備されています。クラウドも色々なレイア―の話があり、様々なサービスの組み合わせができますが、基本的にクラウド技術を利用する方式が大原則になります。
一方、これまでクラウド上に大事なデータを預けてしまうことや自由にコントロールしづらい懸念などもあり、クラウドの利用にリスクを感じて消極的になることは理解できます。企業戦略として、脱クラウドでオンプレミス環境に回帰する企業動向もあったりますが、システムの運用や管理に要員・コストをかける余裕のない企業においては、クラウドサービスの利用を基本にするのが、サービス提供へのスピード、コスト効率性、BCP(業務継続計画)の観点でもよいでしょう。
その上で、セキュリティを担保しながらハイブリッドワークを実現する仕組み・ツールを整備していきましょう。クラウド上のストレージにデータが一元的に保管し、デジタルでのワークフローにより業務が効率化できます。APIによって自動化があたり前のように処理できるようになっています。
HPなどWebサイトやポータルを経由したコミュニケーションにより、情報共有と情報活用がスムーズにできるようになります。IoTなどの活用により蓄積されたデータは、様々な角度から集計・分析することで、新たな発見や示唆が得られることでしょう。
AIと自動化・RPAの活用
AIに関しては、かなり古い時代から研究されてきており、IBMのワトソンがチェスの世界チャンピオンに勝利した逸話が有名でした。将棋の世界でも藤井翔太王将が指したのはAIの示した最善手だったという神の手の話などもあり、AIの人知を超えた強さを目の当たりにさせられる光景も見られます。
身近なところでは、最近利用拡大している会計クラウドツールではAIでの自動仕訳などが当たり前の機能として実装されていたり、AI-OCRで紙や画像から簡単かつ高精度にテキストデータを取り込む機能があり、スマホでも簡単にできます。中には名前だけのなんちゃってAIというようなものもあるかとは思いますが、もはやAIが高価で使いづらいものではなく、どんどん実用化・商用化されているのが解ります。
ロボットによる自動化は製造ラインだったり、検査現場などにおいて、プロセスの自動化に貢献されています。体力を要する現場や、危険を伴う現場で強力な味方になってくれるでしょう。例えば、医療の生体検査現場でロボットが試験管への分離作業などを昼夜を問わず正確に行うところを視察したこともありました。
最近のニュースのよると、ららぽーと内の店舗で、AIカメラなどを使い店舗入り口で通行者の動きを計測し、マネキンやデジタルサイネージといった店頭ディスプレーが入店率などに与える影響を検証するといった取り組みなども実施されているとのこと。AI&IoTを使ったデジタルマーケティングの動きもどんどん増えていきそうです。
日本IBMでは、本社事業所内で犬型ロボット『Spot』を展示中で、毎日元気に身体を動かしていますとのことです。いずれ立ち向かう危険な現場での戦力として、目下訓練中なのでしょう。
業務処理の現場にもRPAなどが導入され、ホワイトカラーの生産性向上や人材不足解消などに役だっています。いわゆる、人間同様に手足、目、頭脳を有するデジタルワーカーとして、労働力不足の解消、働き方改革対応、品質向上などの目的で使われることが多いです。
少し前に銀行業務でのRPAを活用した業務改革のコンサルティングを実施したことがありました。成功の鍵になるのは、入り口からデジタル化することと組織横断的なプロセスの見直しでした。業務プロセス改革の観点では、こうした検討を契機に関係者が様々な知恵を絞りあうことで、単なる改善から改革に結び付ける契機になることもあります。
RPA自体は、主には単純・反復作業を任せることが多いのですが、AIと組み込まれていくともっと頼れる存在になりそうです。
Microsoft365やGoogleWorksplaceのような業務ポータルやワークフローの業務環境でも、クラウドベースでのAutomation機能が簡単に利用できる環境が用意されていたり、RPAとしてのデスクトップオートメーションのイベントやフローを定義して自動化処理をノーコードで作成できることも容易にできるようになってきており、自動化処理を実装するハードルも低くなってきています。このように特に意識しないうちに自動化がどんどん進んできています。
デジタルワーカーの戦力化となると、働き方改革や組織力向上にも寄与するテーマになります。これは、「NO10.組織力を上げること」につながる話ですね。
ドローン・シェアリングサービスもどんどん使える時代に
ドローンの実用化もすごいことになっています。
上空からの撮影だけでなく、自在に荷物を運び、人までが飛ぶ道具になってきています。まさに空飛ぶ自動車ができています。これは2025年の大阪・関西万博の目玉でもあります。
有人地帯で機体を目視できない状態で飛ばせる「レベル4」の飛行が解禁されたことを受けて、今後ますます多彩なソリューションを披露されてくることでしょう。
シェアリングサービスも増えています。
最近都内で赤い自転車を走らせる市民やオフィスワーカーの方などを見かけます。バイク・シェアリングサービスといって、新たなモビリティサービスを提供されており、健康で環境に優しい日本の「まちづくり」に貢献しますといったコンセプトにもなっています。
自転車シェアリングは、乗りたい時に借りて、行きたい場所で返すことができる自転車のシェア(共有)サービスです。サイクルポートにある自転車にICカードをタッチすることで誰でも借りることができます。電車、車に次ぐ新しい交通手段として、颯爽と電動自転車で街中を駆け抜けることができます。個人的にもたまに利用していますが、電動サポートもあり、かなり快適な時間を得ることができます。単に移動手段というよりは、運動不足・ストレス解消にもなるメリットも大きいと感じています。
こうしたサブスクリプションサービスももはや一般的なサービス形態として定着しています。音楽や映像からスマホアプリの利用から、衣装や自動車の利用などサブスクリプションサービスはどんどん拡大しています。サービスの世界でも、安定的な収益を得られる手段として増えてくることは間違いないでしょう。一方で、利用者サイドとしては安く利用できるのは良いのですが、利用しなくても利用料は継続されていくので、契約形態とサービス内容など良く考えて、利用するサービスの重複回避など選別することも大事になります。
AR・VRが面白い
仮想現実や拡張現実といった世界の利用が進んでいます。
VR(仮想現実)だと特殊なゴーグルをかけて、視界・音界で仮想世界に浸るようなシミュレーションの世界がまずあります。
実際にアイドルの劇場公演をセンター・最前列で観れるVR観戦なるサービスもあったりします。医療の世界でも「うつ病向けデジタル治療VRの特定臨床研究を開始したといった話もあり、エンタメや訓練支援だけでない様々な領域での活用が期待できます。違う世界同志を一体的なものとして体感できることで、利用者の体験価値が上がるのだと思います。
AR(拡張現実)については、世界最大の家具量販店IKEAのARアプリで自宅やオフィスにいながらイケアの商品設置を行えるようになった事例や不動産のバーチャル内見などが良く知られています。これはスマホなどで手軽に観れるので、現実世界と仮想世界を融合して一体的に体感できるサービスになります。
メタバースの世界へようこそ
リアルな世界では前に「廃校水族館」に行ったことがありました。かつての学び舎に魚たちが泳ぎ、プールにはサメがいて、カメが挨拶してくるような世界です。ノスタルジックな感傷の中にも水族館のテイストはかなりフィットして非常に楽しめた記憶があります。
これに近いようで異なる体験として、「角川武蔵野ミュージアム内の本棚劇場」でメタバース図書館を見たことがありました。メタバース図書館では、アバターとして本を探索する世界に入り込むことができます。AIがお薦めの本を紹介してもくれます。コンシェルジュから色々趣向を尋ねられた結果としてお薦めされた本は、今一つ納得感がなかったのですが、その時はその世界に入りきれないまま何らかのバイアスが掛ってしまっていたからかもしれません。他にもメタバース上での商用の展示会が開催され、そこではアバター同士で商談するなんていうイベントもありました。リアルとバーチャルが行き交う世界がそこには存在しています。
メタバースや量子コンピューティング、Web3.0などの先端的なデジタル技術については、近年成長が著しいものがあり、どんどん需要が拡大されることでしょう。
メタバースによって、社会空間が広がっていくことで、新たな体験ができるようになります。グーグルアースでも世界旅行ができているような体感がありましたが、さらに一歩踏み込んだ世界に溶け込んでいけるような体験が可能になるのでしょう。それは時空を超えた能力が拡張されることにもなります。新たな発見ができるワクワク感があります。メタバースによって、より豊かな生活がもたらされる時代がすぐそこに迫っているようです。
メタバースは、最近の楽曲*にも登場してきており、「いつのまに変わって来たんだろう? 仮想でも何もかもが真実 先へ先へ行こう」と唄われています。恋愛でもどんな経験でも「非常識がいい 勇気こそ力なり」と夢を持つ人の価値にこそ意味があるような思いが伝わってきます。
*「わがままメタバース」(AKB48)
データ活用と新たなビジネスモデルの創造へ
デジタル化を進めていったその先に、これまでと違ったサービスの提供を考えてみたり、そもそもの儲けの源泉となるビジネスの仕組みについても発想転換することができそうです。
デジタルツイン(DigitalTwin)とは、現実の世界から収集した、さまざまなデータを、まるで双子であるかのようにコンピュータ上で再現する技術のことです。コンピュータ上では、収集した膨大なデータを元に、限りなく現実に近い物理的なシミュレーションが可能となり、製品の製造工程やサービスの在り方を改善するうえで有効な手段となります。
デジタルツインの世界では、現実世界をデジタル空間にも構築し、ビジネスモデルの変革した場合のインパクトなどをデジタル上でシミュレーションしてみた結果を現実世界にフィードバックし、双方連携して進めることで、素早い意思決定ができるようになります。
さまざまな生体データを生かし、心身のコピーをサイバー空間につくるバイオデジタルツイン(BDT)にNTTが取り組んでいるという話もあります。人体版のデジタルツインということで、これを生かせば、心身の未来を予測して最適な食生活や運動メニューを提案してくれるようです。機械だけでなく、身体のトラブルの予兆も検知できるようになりそうです。
このようにビジネス活動で得られたデータ、IoTで収集したデータ、それらをビッグデータとして蓄積し、そこから抽出・分析することで様々な考察・示唆が得られます。
そこで得られたデータにこそ価値があり、こうしたデータを活用することで、新たな利用価値が生まれ、新たなサービスに繋がるようになります。データの価値は、違った業種やサービス利用者にとっても新たな価値を産む源泉となり得ますので、データの利活用だけでなく、データ自体を商品として提供する新たなビジネスモデルも登場してくるでしょう。
このようにデジタル化を深め、既存ビジネスの強化だけでなく、新たなビジネスの創造による競争力強化を進めていきましょう!
勇気を出して1歩踏みだし、傷つきながらも強く、たくましく、しなやかに進んでいくこと。気が付けば、デジタル化社会でも戦っていける強い体と技とそれをコントロールできる心が備わってくることでしょう。
この先は、「No.7 の戦略的に考えてみること(シナリオ、プランを練って先を見据えて動こう)」に繋がっていきます。
DXの心技体【7】~はまた以降の投稿で!
【再掲】DX推進の心技体(10選)
まずは自分なりのDXを語ること(自身の言葉で定義してみよう)
未来ビジョンに向けたJourneyとすること(ありたい形、なりたい姿を追求する)
顧客志向で提供価値を表明すること(「ならではの価値」を提供しよう)
手っ取り早くデジタル武装すること(低コスト・短期間で効果を実感できるものがあります)
Small Start で始めて、失敗と成果を積み上げて進めること(勇気を出して1歩踏みだそう)
最新技術・ソリューションをうまく活用し、新しいビジネスを作ること(デジタル技術の活用で経営課題の解決へ)
戦略的に考えてみること(シナリオ、プランを練って先を見据えて動こう)
気力・体力を維持し、流されないこと(絶えずゴールを見据える)
変革・変化に対応するものを巻き込むこと(抵抗勢力に対するチェンジマネジメントも必要)
組織力を上げること(横断組織、俊敏性、爆速、Agile)