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【朗読】かくれんぼ

文月悠光
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夕陽に照らされた綿毛は、
宙(そら)かなたの星雲が降りてきたよう。

 *

幼いころ連れていた、犬のぬいぐるみ。
今見れば、こんなにも柔くちいさい。
ふわふわの毛を潰さないように
腕にひしと抱え込んで眠る。
わたしもこのように柔らかかった頃、
おおきな存在に守られていたのか。
だれにも見つからない夢のなかに
ひっそり かくれていたのか。
(もういいかい?)
こころの奥地へ 分け入っていこう。

夕陽に照らされた綿毛は、
宙(そら)かなたの星雲が降りてきたよう。
風に揺れつづける宿命を
茎いっぽんで耐えている。
いったいどこへ運ばれていくの?
遠くでさざめいているのは、
ちいさな手が奏でる鍵盤の唄。

(なんの意味がある こんなことに)
夜のつめたい問いかけに寝返りを打ち、
大人になってもかくれたいと願う。
答えを探しあぐねたわたしは
いつのまにか 鬼だった。
見つけてほしい鬼だった。

星雲の綿毛を闇に振りまけば
宇宙はきっとわたしに気づく。
夜明けまでちゃんと連れていくよ、
記憶のせなかをふわり撫でながら。

詩「かくれんぼ」文月悠光

*「婦人之友」2020年10月号 ミヨシ石鹸さん広告より。
毎月、裏表紙広告欄に詩を書き下ろしています✍
写真:岩倉しおりさん

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