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【辰】龍尽くしカレンダー6月・雨龍(前編)
6月、梅雨入り間近。
今年は沖縄・奄美を見ると少し遅めのスタートのようです。
龍カレンダーも折り返しを迎えました。
毎月初、毎月初、龍について読んでくださる皆様に深々と御礼申し上げます。
そして梅雨、当初より予定していた雨龍特集です!
今月もはりきって参ります!
これまでの龍はこちら ↓↓
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結論から申し上げますと、はりきりすぎました。
事前のお知らせ通り6000字。
長文ゆえ、今月は前編後編の2本立てです。
身内から「もっと人にやさしく!」とたしなめられ2つに分けましたが
分けたら分けたで増えていった文字数(;’∀')
6月のテーマ「雨龍」
![](https://assets.st-note.com/img/1717048500030-1FTNbALiPS.jpg?width=800)
さて、気を取り直しまして6月のカレンダーカラーは紫。
そこにグレーや黄緑・水色をあわせ…
なんだかサイケデリックな雰囲気になりましたね。
今回は5種類6匹の龍がおります。
![](https://assets.st-note.com/img/1717048558697-1FgMQdnxju.jpg?width=800)
①雨龍図鐔/志水甚五 作、東京国立博物館所蔵、17世紀
②竜文 ★
③竜文 ★
④雨龍盤 所載蒙古襲来絵巻 ★
⑤古墨螭竜紋 ★
いつもでしたら「いつのどこの龍」というのを明記するところなんですが
★マークをつけた②~⑤の龍たち、
どこのなにでいつのなんなのか、
むしろ雨龍なのか。
詳細は後ほど…有り体に申せば題材集めに苦労しました。
雨龍についても苦労しました。
・雨龍の類例を少ししか持っていない
・雨龍がなんなのかあまりわかっていない
・いつものバイブルたちが雨龍を詳しく取り扱っていない
思い出すのは昨年、noteでChappyさんが江ノ島の記事を書かれた時のこと。
その際に正体のわからない龍についてお尋ねがあり、
私、このように答えています。
雨龍、アメリュウ、ウリュウです。
私も前職で初対面したときは、なんだこのニョロと思いましたが、結構あちらこちらにさりげなくいる可愛いヤツです。
雨乞いにもなるそうな。
この時から今に至るまで、私の中では
雨龍=「このニョロ」。
そんな致命的な状態から、それでも
「梅雨だ、雨だ、雨龍だ!」と走り出しました。
![](https://assets.st-note.com/img/1717051641255-jr4zhB53FS.jpg?width=800)
雨龍について
まず読み方は、アメリュウ・アマリョウ・ウリュウといったところ。
調べていくうちに、なんとなく私はアマリョウに落ち着いています。
そんな雨龍。
ズバリ、見分けポイントはなんなのか。
1.ツノがない
2.体がニョロっとしている
3.たてがみがふわっとふくらんでいる
4.うろこがない
1と2はよく言われているところ。
3と4は、コレも加えられるんではと思ったものです。
雨龍は紋として用いられることが多く、
社寺装飾でも板面に描かれたり、石に掘られたり。
なかなか彫刻のような立体でお目にかかることは少ないものです。
![](https://assets.st-note.com/img/1717052627631-UvbLPLbmEU.png?width=800)
https://hakko-daiodo.com/kamonsozai-koushin-20221102
だいたい上の画像のような感じですね。
まずこの顔にピンときて、なおかつニョロで、
水玉や波頭のようなものが周りにあれば宣言します。
これは雨龍。
ここでカレンダーに話は戻り、
②~⑤の龍の出どころですが、『内外文様類集』という本から題材をとっています。
その本の「リュウ」の項目に彼らは載っており
②と③、「雨龍」とは一言も記されていません。
![](https://assets.st-note.com/img/1717053453008-6Gz6dHdGc2.jpg?width=800)
正確さを求めるならば②と③は「リュウ」止まり。
ただ③は雨龍条件にしっかり当てはまり
②はいささかマッチョですが、雨龍のニオイがするのでヨシとしました。
④はこれ、見たことないくらい毛むくじゃら。
ためらいつつも「雨龍盤 所載蒙古襲来絵巻」と明記してあるものだから…
ただ、『蒙古襲来絵詞』のどこに載っているか記載がなく、探してみたものの力及ばずでした。
とっても良い類例集ですが、出典がわからんのです。
![](https://assets.st-note.com/img/1717055923326-H3i1otwTzb.jpg?width=800)
螭竜と璃龍と雨龍と
さて、ここからだいぶややこしい話に入ります。
雨龍を調べていると必ず出てくる「螭竜」。
もしくは「璃龍」。
そして「蛟」。
これらと雨龍は同じものだという話が出てくるんですね。
これが厄介。
そもそもこれ、龍を細かく分類した際に出てくる名前です。
曰く、
「応龍は翼がある龍だ」
「ツノのあるものは虬龍だ」
「ウロコがあるものは蛟龍で、
ツノがないものが螭龍」。
たまったもんじゃありません。
そもそも龍って
「角は鹿、頭は駱駝に、目は…」の九似三亭説で強引に定義づけたのではないのか、
だのにツノやウロコがないのを龍に加えて良いのか、
翼があるのは応龍というなら飛龍・翼龍=応龍で良いのか。
さらに赤いやら黄色いやら色設定があり
ランク付けがあり、年齢があり
ポケットなモンスターのごとき進化形態があり
そのどれもが重々しく語られる割に
名前がダブる・設定が矛盾する。
途端に色々ブレ出します。
今回のカレンダーの⑤も「古墨螭竜紋」とはっきり書かれていながら、
ツノもそれに負けじとはっきりと描かれている。
ツノなしではなかったのか。
![](https://assets.st-note.com/img/1717064230999-Jq9ExHupVY.jpg?width=800)
嫌なドキドキが止まりません。
と、だいぶ龍調べの鬱憤がたまっていたようです。
要は
・色々な龍の名前と設定がある
・雨龍は、螭竜や璃龍や蛟と同じものという話がある
・調べてみるとそもそも螭竜や璃龍や蛟の設定がかなり流動的
我々の雨龍がなんなのかはっきりしない。
あのニョロは結局なんなんだという、マゼコゼワカメ状態です。
しかし大丈夫、
螭竜やミズチにはハナから諦めムードを身に着けているので。
こういうのは相手にしないに限ります。
暗雲たちこめるなか気を取り直し、明日の後編では
「日本の雨龍」に焦点をあてて沼に落ちていこうと思います。
月初からお疲れ様でした。
どうぞ明日も乞うご期待のほどを!
龍カレンダー6月の参考
①雨龍図鐔/志水甚五 作、東京国立博物館所蔵・17世紀
ColBase 国立文化財機構所蔵品統合検索システムより
https://colbase.nich.go.jp/collection_items/tnm/F-13516?locale=ja
②竜文
内外文様類集 第10巻やーわ.山田錠一 発行.河原崎奨堂 編輯.㈱芸艸堂.1963年,p922より
③竜文
②と同,p935より
④雨龍盤 所載蒙古襲来絵巻
②と同,p932より
⑤古墨螭竜紋
②と同,p939より
その他参考
荒川紘.龍の起源.紀伊國屋書店,1996年
笹間良彦.図説 龍とドラゴンの世界.遊子館,2008年
京都国立博物館.特別展覧会 金色のかざり ‐金属工芸にみる日本美‐.イメージファクトリー.2003年
ColBase 国立文化財機構所蔵品統合検索システム「蒙古襲来絵詞」
https://colbase.nich.go.jp/collection_items/shozokan/SZK002942?locale=ja
国書データベース「静女蛙蟆竜舞衣略縁記」https://kokusho.nijl.ac.jp/biblio/100352814/1?ln=ja
名所化する遺跡-静御前墓所伝承の地の200年-.白井哲哉.2009年
https://nichibun.repo.nii.ac.jp/record/5187/files/niso_043__393__381_394__393_406.pdf
おまけのモゴモゴ
ツノなしというのと水に縁があるというので螭龍が雨龍と同一視されることもありますし、
璃龍という龍の幼体が螭龍と同一視されるけれど、幼体つながりで雨龍は璃龍なんだよ、という話もありますし、
まぁ水に関係しているんだからミズチじゃん、という話もあります。
しかし絵に表されている螭龍は雨龍とは似つかない丸い頭でしっかりした体つきだったり
幼体だから璃龍だといわれても、「そもそも雨龍は幼体設定なのか」という疑問が湧いたり、
ミズチ、「あなたはちょっと席はずしてください」だったりします。
(理由は下記記事をご参照)
だいたいの元凶は『三才図会』と『和漢三才図会』。
そして霊獣についていくら考えても答えはないという(;’∀')
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