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NHKスペシャル「看護師たちの限界線」感想③

※流行り病についての描写があるため、あまりそういった話題を得たくない方は閲覧をお気をつけ下さい。

集中治療室で重症患者を診る看護師たちのお話を見た感想です。

前回までは人材不足ゆえに第一線を退いた看護師たちが呼び戻されることになったという様子を目にしました。中には罹患しやすい傾向にあるという高齢者のかたや妊婦となったかたまでいらした。

人材不足となった背景にはそれまでのノウハウがあまり役立てられないまま看護にあたらなければならないという現状があり、その中でも実に早々に患者の命が奪われていってしまう。防護服がなければ完璧な看護ができるはずなのに、それができないせいでみすみす患者の命が目の前で消えていってしまうことにより看護師たちの心身負担はこれまでに例を見ないほど高まっていってしまい、次々と離脱者が出てしまった。

その現状を象徴するかのように、内容を見聞していけばわかる利発で健康そうな若い看護師のかたが退職届を提出するところからこのドキュメンタリーは始まったのでした。

看護師の目から見た現在の医療最前線

時間は午前一時十分。病院内で上記退職届を出すことになってしまう京河さんは院内で仮眠しました。そして規定の時間に起きれなかったのか、同僚の方に心配され起こしてもらう。こんな時でも夜勤がある。素直に疲れましたと零す。

既に彼女は自問自答を続ける日々を過ごしており、現在している看護は医大卒業時に目指したものなのかを疑問に思い続けています。目の前で助けを求める命が散っていく現状。ここにいたくないと訴えかける患者たち。彼らにふれあいながら、優しい笑顔を見せて安心させてやることもできない。

自分のしている薬剤投与なんかは時間になったら同じことができるロボットができるはずであると考える。それでもこの場所に人間として存在していることには何かの意味があると考える。

夏の賞与は前年度の半分であり、冬は6割程度。定期昇給は見送られている。こちらはなにかと報道される内容と一致しています。東京女子医科大学病院は経営が悪化している。院内感染を危惧した人々は受診控えを選択してしまった。そのため現在、消化器内科を始めとした3つの病棟が閉鎖されているそうです。この閉鎖された病棟に勤めていた看護師たちはこちらのICUに派遣されることはなかったのでしょうか……

感染患者を受け入れている医療機関において、第三 四半期における賞与を減額した病院は四割ともなったそうです。そこで厚生労働省は医療従事者および職員等に慰労金を最大20万円給付した。今回の取材を受け入れた理由が伝わってくる気がします。

この現状を赤裸々に見て欲しいという想いがあるのではないでしょうか。できることは全てやっている。それでも目の前で人が死んでいく。助けられなくても、また同じかも知れないと思ってもまた明日が来る。正当に評価されず、報われることがなく、国からの一時金でなし崩しに過ごすしかなくなっている……

京河さんは現場を災害医療と捉えており、環境や制度が整うことを待つ暇なく患者は送られてきており、この一年は世界中の医療従事者がまったく同じ想いをしていたのだろうと状況判断しました。そして自分がそのような現場で医療に携われる限界は一年だと思った。これが彼女が退職を決めた理由なのでしょう。

これ以上正しく頑張る方法が見つからないまま、自分で見つけろとでも言われているかのような状況で、人類の危機と身体ひとつで戦わなければならない。しかしながらその評価が適正におこなわれているとはいえない。全人類の危機である世界的な危機状況と対面しているにも関わらず、所属している医療機関の経営状況に自分の評価が問答無用で左右されてしまう。そのような環境下にいる方々に頑張れと言える立場の人は治療費を支払う患者以外にいるのでしょうか。

引き続きカメラは看護師さんの1日に密着するようです。

次回はまたそちらから書かせていただきます。お読みくださりありがとうございました。

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