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妄想依頼#03『Zoom』

今回の妄想依頼者:内気なけんちゃんさん

昔から電話が苦手だった。
習い事の書道をずる休みするとき、
入念に書いたメモを20回復唱して言い訳を練習してから電話した。

大人になっても電話が苦手だ。
相手の表情が見えないから。
そう思ってたけど、そうではなかった。

苦手な理由は物理的な問題だった。
画面に人が映っていて表情が分かってもやっぱり苦手だった。
沈黙が怖いし、かといって話し続けるとテンパる。

この前社内ミーティングでZoomをした。
Zoomは話す人が中心にフォーカスされる。
あと、同期の南がくしゃみした瞬間、音を発した人もフォーカスされることが分かった。
上司の村井さんが画面右端を指さしてこう言った。

「君の画面だけフリーズしてるよ」

僕は電波越しに人と話すのが苦手だ。

小学校の給食時間がZoomやったら今頃リモート飲み会もお手のものやったのに。

そんなことを考えながら1人酒を飲んでると、懐かしい友人からLINEが来た。

「Zoomせん?」

ちょっと迷った。
でも今克服せんかったら社会不適合者になりそうな気がしたから、
了承の返事を送った。

友人「ちょっと待ってな」

恐らく、友人は僕を招待する準備をしてくれている。
しばらく待った。
僕は毎回、招待される側。
こうやっていつも時代に流されて生きてきた。

友人「これどうやって招待するん?」

彼も同類だった。

僕「LINEのビデオ通話でよくない?」

何故か僕が主導権を握り、
そのままZoomはほり投げられた。

久々の対面。
懐かしい友人の顔を画面越しに見ると、
自然とあの頃の自分を思い出した。

話したいことなんか何もなかったのに、
気付けば缶ビールも3杯目。
互いの引き出しを突散らかすように、
思い出話が溢れ返る。

思い出話も束の間、
続いてはこれからの話。
お互いの夢や野望を語り合う熱苦しいやつだ。
不思議なことに、人と話してると自分とは思えないほど立派な台詞を話したりする。
分かりやすい例え話や人生を積み重ねてきたような名言。
相手の話を吸収して、引き出して、
自分の意見を吐き出して、引き出してもらって。
そんな会話がとても心地良くて、
気付けば夜中の2時になっていた。

僕は電話が苦手じゃなかった。
僕は内気な自分を電話のせいにしていただけだったのだ。

自分の欠点をZoomが気付かせてくれた。

そんな今日、会社のZoom会議がある。僕は髭を剃ってメモ帳とペンをテーブルに添えた。

そして、テーブルの右端に缶ビールを1本仕込んだ。


今回の妄想依頼者:内気なけんちゃんさん
依頼内容:リモートワークが苦手でなかなかコミュニケーションが取れず最近凹んでます。どうしたらいいか分からないので解決法と元気ください。


内気なけんちゃんさん
妄想依頼ありがとうございました。

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最後まで読んでくださりありがとうございました。

それではまた明日
妄想日記でした。





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