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地域企業、創業129年の府中の老舗和菓子屋、青木屋さんのブランディングデザインのフローを書いてみた。

どーもー。デザイナーのワケです。
先日の記事では府中の創業129年の老舗和菓子店青木屋さんブランディングデザインと、ブランドサイトを手がけたことを書きました。
青木屋さんの和菓子は大変丁寧に作られていまして、ほっこりした味わいがあります。そんなプロジェクトの成果物を記した記事でした。


今日はこの中で少し触れた、地域企業のブランディングデザインのフローを書いていきたいと思います。
そして、そのフローとしてあげたのが下記のようなものでした。

①ユーザーインタビュー(企業の社員さんと、お客様にインタビュー)
②ワークショップ(企業の社員さんと!)
③トップインタビュー
④創業エリアの散策調査(社長さんや社員さんによる案内とか文献/実地)
⑤メッセージ構造の策定
……からのクリエイティブ過程

今日はこの具体的なところを振り返って書いていきたいと思います。

クリエイティブ過程に入る前段階が、とっても重要

社内の方々と主にワークショップを中心に取り組んでいますが、ここまでで、5ヶ月がかかっております。なぜこんなに大変なことをするかというと、ブランディングデザインに重要な「メッセージ構造の策定」に必要な模索の期間だからです。
このフローの最終的な目的は

・メッセージの構造を策定すること
・メッセージの最重要ポイントを絞り、クリエイティブをしていく上での下準備をすること

です。

一般的なクリエイティブやデザインのフローでは、ざっくりいうと下記のようなフローを踏みます。

  1. クライアントや広告代理店から、クリエイティブにオリエンテーションをする

  2. ・コンセプトや、キービジュアルの提案をクリエイティブ側からする

  3. ・クライアントはそれを選択したり、意見をフィードバックし、クリエイティブとの擦り合わせする

  4. ・実制作および修正作業

  5. ・納品

上記のような流れですと、クリエイティブとしては大変進めやすいですが、オリエンテーションのところで時たま、クライアントの本質的な「よさ」(稚拙な言葉ですが)ではないんじゃないかな、ということを伝えられることもあります。マーケティング戦略上での「こうなりたい!」という欲求の感覚や、「自社はこんな会社である」という固定化された考えが強すぎるためかなと思ったりしています。
そんな時は、提案する形式で、クリエイターとしてこういう良さもあるんじゃないかという視点を提供していければという想いで、お仕事をさせてもらっています。

しかし、もう一歩深く、それらを企業さんと一緒に発見できるフローを踏むことができれば、もっと意味のあるものになる。そのように考えています。さらにその過程自体も、重要なプロジェクトになります。
そういったわけで、クリエーター/アートディレクターとして、企業さんと直接お仕事をさせていただく時には、今回の事例のように、クリエイティブ過程の前段階を充実させて取り組むことがあります。
それも一重に、メッセージ構造や、メッセージの最重要ポイントを明確にすることがエッジの効いたクリエイティブには必要だと考えるからです。

ちょっと脱線しますが、その私の考え方のバックグランドとなっているものは、アートプロジェクトの経験です。アートと企業活動、一見全然関係ないんじゃないの?と思われるかもしれません(し、実際、そのように言われることもあります)が、こと企業のストーリーや、メッセージの策定などに対しては、かなり親和性が高いと私は考えています。

アートプロジェクトの経験

私は、いくつかのアートプロジェクトの経験がありまして、その中で実践してきた方法の中から、ブランディングデザインにすごく親和性のあるやり方があるなと感じてきました。
(去年、「東京の地場に発する国際芸術祭東京ビエンナーレ2020-2021」に作家として参加をしておりまして「屋上区」というアートプロジェクトを手掛けました。その他にも和紙をテーマにした「みんなのかみすき」などがあります。)

屋上区

例えば、現地に行って、細かく観察やフィールドワークをして、
「フックを発見する」
「現地の協力者の話を深く共有しポイントを抽出し、整理する」
「人のみではなく、地形的な条件や、歴史的な条件などから、現在その場がなぜそうなっているかを発見していく」など
そういうさまざまな条件を洗い出し、その上で、
「ここにはこういう場所・もの・方法が必要なんだ」というメッセージを最終的には自分ならではのアートワークにしていきます。
このメッセージを炙り出していくことが、ヴィジュアル的なブランディングには大変重要な要素です。
そのため前述したような、アートプロジェクトでやるような方法を導入して、地域の企業さんの魅力を形にする取り組みをしています。
クライアントワークとアートプロジェクトとでは厳密には行うことは異なりますが、大きく、メッセージを炙り出していく、という部分に関しては、共通するものがあると考えています。


フローのご紹介

あまり個別のケースについて詳しくは書けませんが、一般的な範囲で紹介しますと…

①ユーザーインタビュー(企業の社員さんと、お客様にインタビュー)

お客様や、これからお客さまになってほしい層を中心に、対面でインタビューをしました。
こちらは、いわゆるマーケティング調査の「ユーザーリサーチ」というような形式ばったものではなく、その後の②ワークショップでコンセプト等を考えていくための情報収集として行うものです。
ざっくばらんにお客様と話すことで、何をユーザーが体験しているかを、感じるために行います。
よく対象のものを考えられるために行うことですので実際のお客さん以外のユーザー(自社製品を購入しない人)の話も聞いてみるということです。
合計で6名のお客様にお話を伺いましたが、主にそれを行ったのは社員さんたちです(クリエーター側で一部対応する場合もありましたが、あくまでも伴奏者という形が理想的だと思います)。
よくリサーチ会社とかに依頼する場合もあると思うのですが、規模が許せば絶対に、自社で行った方が良いと思います。
目的は「ステークホルダーの話から体感し、よく考えられるようになること」です。それを他人の目に任せてしまうことは、情報の半分が見えない状態にしてしまうことでもあります。

②ワークショップ(企業の社員さんと!)

社内にチームを作っていただき、上記の内容を分析していきます。

ペルソナ化し、ニーズとインサイトを発見していく
まずはインタビューの中からお客さんの生活や、商品の人生における存在などを分類しながら把握していきます。
一通りそれが終わったらその中のニーズを明文化し、それを持った人物像をペルソナ化して行きます。そうすることで実際に話を聞いたユーザー像そのままではなく、客観的なレベル感で、その人の生活やインサイトを想像していくことができるからです。
こうやって発見したニーズやインサイトは複数できるのですが、その中から「誰に、何を伝えたいか」をいくつか作り、優先順位を決めて行きました。

自社のストーリーの洗い出し
同時に自社を振り返りながら、どのような物事が存在するのかを収集して行きました。
例えば「商品づくり」「歴史」「土地」「人」…など、項目に分け、出していきます。業務や、それ以外の事柄でも心が動いたものを列挙して行きます。ここで得られたものを元にして具体的に「誰に何を伝えていくことができるか」ストーリーを炙り出していく作業です。

③トップインタビュー

いわゆる創業者の想いや、トップの継承への想いをインタビューします。基本的には自由に自社に関してのお話をしていただきます。
その中から、商品を通じて、お客様にどのような状態になってもらいたいか、何を感じてもらいたいか、未来にどのようになっていたいかのヒントを聞いていきます。

④創業エリアの散策調査(社長さんや社員さんによる案内とか文献/実地)

工場見学・府中周辺の散策
何度もお菓子を作っている工場などに出向いたのはもちろん、府中周辺の様子もご案内いただいたりしながら、現地の雰囲気をクリエイティブチームで吸収して行きました。動画制作のロケハンなども兼ねています。
府中の魂である大國魂神社はもちろん、府中の風景の一つである欅の雑木林のあるところを散策したり、お隣調布の飛行場の見える武蔵野の森公園なども行きました。

大國魂神社。ご案内いただきました。
青木屋さんには3代目の自伝である「小豆の歌が聴こえる」という書籍もありました。
こし餡づくり。早朝から始まる。大鍋に半日かけて仕込んでいました。

水の発見
意外なのですが、府中って水が豊富な地なのです。多摩川が作り出している水の風景はもちろんですが、地下水も豊富。
青木屋さんのお菓子作りも、地下水から作られていますし、周辺にはサントリーのビール工場、レンズ工場など、水を必要とする工場が周辺に多くあります。
大國魂神社にも、水神社という水に因んだ神社があります。
そんな情報を文献や実地調査から得まして、サイト中のキービジュアルの一つの要素として扱ってます。

青木屋さんの本店のお隣にある、郷土の森公園で目にした地下水の川の風景が印象的でした。そんな体験をもとにweb上では水の流れを表現しています。


⑤メッセージ構造の策定

ここまでの過程の中から、様々な視点での情報が集められてきました。それを整理していくと、結果的に下記の3つの方向のメッセージが見出されてきました。(これは、自然に導き出されてきたもので、必ずしもいつもこのようになるわけではありません)
・優位性に基づくもの
・精神に基づくもの
・提供価値に基づくもの
それぞれに「訴求要素」ワークショップ等の「情報の源泉」を整理し、全体の情報を構造化する表を作りました。
あとは、その中から何を1番に持ってくるかを決断していただいた上で、それはやがてコンセプトとなり、タグライン、キービジュアルを策定していくクリエイティブのフェーズに移行して行きます。
その他の情報はブランドサイトの中のどのような位置づけで扱っていくかを決めていきました。

構造化することで、企業をめぐる情報が一元的に整理される

⑤のような情報の構造を整理をなぜするのかと言うと、優先順位と構造の配置を明確にしておけば、制作をしていくときに、ブレが生じることが少なく、表現としても尖ったアイデアが出やすくなります。
また、例えば迷った時も、振り返る材料があり、立ち戻ることも可能です。

そしてクリエイティブのフェーズへ

はい、ここまでで、プロジェクトの前段がやっと終了といったところです。できるだけ順序立てて書きましたが、実際には行きつ戻りつしながら、コンセプトを発見して行きました。
紆余曲折あり、ここからクリエイティブ視点で
コピーライター共に、あらためて言葉やビジュアルを考えていきます。
→クリエイティブの提案/決定のフェーズ
→修正/リリースのフェーズ
そしてその最終成果物として

・コンセプトを言語化したタグライン
・キービジュアル
・ストーリー性を、キーとなるビジュアルのトーンアンドマナーで展開したブランドサイト

が完成いたしました。
今後重要なことは、コンセプトやキービジュアルが
運用の中で段々とぶれていくことなく、発信されていくことかと思います。

青木屋さんの和菓子は小豆から、精魂込めて自社で作られている数少ない企業さんです。129年続く和菓子屋さんの味を堪能してみてはいかがでしょうか。



フューチャーズ
和氣明子
是非のぞいて見てください↓↓

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