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スパイのためのハンドブック/ウォルフガング・ロッツ(1982/3/30)【読書ノート】

 元イスラエルの情報機関の構成員だった人が書いた本である。この本には、実際のスパイ活動について具体的に記されている。私(勝丸円覚)は日本でスパイハンターを務め、海外で情報活動を行った経験があるが、その経験からも、本に描かれた現場の状況がリアルに感じられる。著者の呼吸の使い方まで想像できるほど詳細に書かれており、非常に感情が伝わってくる。
 スパイは教育や訓練を受けるが、その訓練では学べない、現場での判断が求められる危機的な状況の切り抜け方が記されている。こうした状況でどのようにして危機を乗り越えたかについても書かれており、教科書には載らない現実の対処法が綴られている。実際の現場を経験している私から見ると、本に書かれた内容はまさにその通りで、現場で即座に判断しなければならないことが重要だと強調されている。
 この本を読んだのはかなり前だが、記憶に新しい。改めて読み直そうと思うほど、内容が印象的である。これはスパイになるための教科書と言えるだろう。しかし、実際に高度な訓練を受けた人が書いたものなので、これからスパイを目指す人には理解しがたいかもしれない。そんな現実離れした状況が本当にあるのか、そしてその中でどう対処するのかという疑問が強くなるかもしれない。
 しかし、私はそれが全て真実だと思っている。現場を知る者として、あり得ないことが現場で起こり得ること、それにどう対応するかがこの本の中で語られている。初心者には驚きの内容かもしれないが、現場経験者には納得のいく内容だ。
 情報を扱う部門に新たに参加する人や、これから現場に出る予定の初心者にとって有益な読み物である。[勝丸円覚]


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