やる気はあります!!
事務所。
「あっ、リカちゃん」
「はい?」
「良いところに来た!
ちょっとちょっと」
「どうしたんですか、課長?」
「さっき二人、面接したんだ」
「ああ。
さっき廊下歩いてるの、
チラッと見ました。
若い人ですよね?」
「そう。
その二人。
実はカップルで面接に来たんだよ」
「へえ~珍しいですね」
「そしてこれが、
なかなかだったんだよ」
「どういう意味でですか?」
「ちょっと、これ見て」
「これって…履歴書ですね。
何というか…やんちゃな字ですね」
「この字もなかなかだろ?
これは彼氏の方なんだけど、
元自衛隊員だったらしくて…ここ見て」
「経歴ですか…
令和2年 自衛隊 隊社…ブッ!」
「な?な?!
凄いだろ!!」
「隊社って!
これ漢字違いますよね!?
除隊とか退職じゃないですか!?」
「そうなんだよ!
もう笑い堪えるのに、
必死だったよ!
目の前にいるんだよ!
書いた本人…真面目な顔で!」
「プッ!
それは…課長…お疲れ様でした…」
「受け答えも凄かったよ~。
はい!やれます!
はい!大丈夫です!って、
もう…やる気が漲ってて!」
「まさに自衛隊ですね」
「それでさ…ここ見て…ここ」
「どこです?」
「この備考欄」
「ん?
オレのスケと同じ部屋にして下さい…?
何です、これ?
このスケって何ですか?」
「スケって、流石にリカちゃん知らないか?
水戸黄門に出てくる助さん格さん。
その助さん役の役者さんのことだよ」
「課長。
それ絶対、ウソですよね?!
しれっとウソ付くの止めて下さい!
騙されませんよ!」
「ごめんごめん。
スケってのは彼女のこと。
うちには社員寮あるだろ?
そこに彼女と一緒に、
住み込み希望なのよ。
まだ付き合って1ヶ月なんだって」
「課長。
この人、採用するんですか?」
「ま・さ・か~!
リカちゃんに見せてる時点でなしでしょ」
「ですよね?」
「うちは…
やる気のある人は採用するよ。
でもさ…これ見て」
「これは…
彼女の履歴書ですか?」
「備考欄…
同じこと書いてあるでしょ?」
「ん?
彼と同じ部屋にして下さい…?!」
「やる気はいいの…
でも、夜のヤル気は…ね~。
そういう子たちは必ず遅刻するし…
そもそも寮はホテルじゃないから」
「あっ!
同じ部屋って、そういうこと!
……ププッ!」