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あの生理現象にお名前を

私はずっとこの名で呼んでた。
 
まだ誰にも話したことはない。
 
とてもくだらないことだから。
 
 
真夏。
 
この時期になると思い出す。
 
小学校のプール。
 
体育の先生がこう言いました。
 
「くれぐれもプールの中で、
 オシッコはするなよ。
 
 このプールはオシッコすると、
 すぐわかるかなら」
 
「!」 「!」 「!」
 
「このプールにいてる消毒剤は、
 オシッコすると赤くなるんだぞ!
 
「!!」 「!!」 「!!」
 
私は海に行った時、
オシッコをしたことがありました。
 
砂浜で遊んでいた時は、
何ともなかったのに、
水に入ると急にもよおしたのです。
 
だから先生の言葉に、
私はふるえ上がりました。
 
だから水泳の授業の前には、
どんな状況であっても、
必ずトイレに行くことにしました。

尿に反応して赤くなる薬品…
今では変だと気付くことも、
当時の無知な私には効果絶大だった。
 
そして授業が3回目になると、
生徒の中に勇者が現れます。
 
「おれ今日、プールでオシッコしたけど、
 赤くならなかったよ」
 
またたく間に話は広がり、
体育の先生の話は嘘だということが、
生徒達に知れ渡ります。
 
きっとのあの日をさかいに、
色々ゆるんだ子がいたでしょう。
 
その子の話を、
安易に信じられない私は、
授業前のトイレが、
習慣付けられた夏の思い出…。
 
 
そして…私は思ふ。
 
そもそも何でプールや海で、
オシッコしたくなるのだろう?

 
水圧による血流の変化や、
体の冷えによるものなど、
ネットには答えがあふれています。
 
でも私の中では、
それが正解だとわかっていても、
しっくりはこないのです。
 
私の中でそれは、
もっと人間の本能であり、
慣れ親しんだなつかしい感覚から、
くるものではないかと思っていた。
 
そして私はこの現象に、
勝手に名前をつけた。
 
羊水ようすいの記憶】……と。
 
 

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