人気者になりたい
前回はこちら。
「いや~危なかった~」
「あれ?
ネズミくん?
どうしてまだいるの?
干支から外されたんじゃなかった?」
「神様が取り下げてくれたんだよ」
「ウソ?!
神様…パンダちゃんの正式採用、
ノリノリだったのに」
「んん?…
そうだったか?…
気でも…変わったんじゃないの?」
「ジーーーーーー!!」
「…………
わかったよ!
言うよ!
昨晩…
ちょっと神様のところに行ってきて…
この社の柱、
美味そうですね?
そう言っただけだよ…」
「恐喝!
いや、脅迫だ!」
「いやいやいやいや!
違うって!
世間話をしただけなんだって!」
「悪い人、みんなそう言うよ」
「しょうがねえだろ!
こっちだって、必死なんだよ!」
「あっ、開き直った!」
「そもそも人気があるから、
パンダを採用なんて、
乱暴な話だろ?」
「僕はいいと思ったよ。
可愛かったし…
それにネズミくんより…優しそうだし」
「牛くん、そういうこと言う?!
まだあの干支選抜の時のこと、
根に持ってんだろ!?
牛くんの背中に乗ってたこと」
「そんなことありませぇ~ん」
「絶対、根に持ってる言い方!!」
「パンダちゃんの方が好みなんですぅ~」
「言い方、ムカつく~!!
牛くんがそんなこと言うヤツとは、
思わなかったよ!
もういいよ!
今度、虎のヤツに…
牛くんの格付け…
A5ランクに上がったらしいよ…
って、教えてやるから!」
「止めて~!!
僕、食べられちゃうから~!!
ごめんよ~ちょっと言い過ぎたよ~」
「こっちは必死なんだよ。
正直…
オレは…体も小さい。
特にアピールポイントもない…
人に愛されるというより、
現実世界では厄介者扱いだ」
「ネズミくん…」
「人気がないのはわかってた…。
でも…
どうしても注目されたかった。
どんな手を使ってでも…
干支の選抜メンバーに選ばれたかった。
選ばれさえすれば…
みんながオレのことを見てくれる。
故郷の母さんだって…
12年に1度はオレのことを、
みんなが注目し…思い出してくれる。
屋根裏や排水口で生活する
日陰者のオレが…
表舞台に立てる…。
これが唯一のチャンスだったんだよ!」
「ネズミくん…そこまで…」
「だからこれからも、
何だってするさ!
ここに居座るためなら!」
「ネズミくん…
クズの言い訳だね」
「コラ~~!!
何でオレの熱い想いに、
ほだされないんだ~!!」
「そのセリフ、この前テレビで見たよ。
罪状認否で…
刑を軽くしようとしてる悪人が言ってた」
「くそ~!
でも…もう遅い!
神様が来年からもネズミくんで…
って、もう決定したんだからな!」
「はぁ……
しょうがないのかぁ~。
パンダちゃんが良かったなあ…
そうすれば僕の隣に……ムフフフ」
「おい!
エロ牛!!
お前こそ邪な考えで、
パンダ採用に賛成したんじゃねえか!」
「そ、そん、そんなことは、
ありまへん」
「明らかに動揺してるじゃねえか!
前沢牛のくせに!」
「いいじゃないか、それぐらい!
新しい風を感じたいよ、僕だって!
パー牛虎を夢見たっていいでしょ!」
「それって…どうよ?
パンダだからパー…。
語呂…悪くない?」
「え?
パー牛虎?
僕は気にならないけど」
「待て待て。
パーってカタカナ?
みんな干支の動物は、
漢字一文字で表記されるだろ?
パンダ…どうすの?」
「そうか…そこまでは考えなかった。
パンダって熊猫だよね?」
「熊じゃ別の生き物だし、
猫もそうだぞ」
「うわ~。
まさかそんな落とし穴があるとは…」
「結局はオレが神様脅さなくても、
結果的にそこで不採用だな」
「残念だなあ~
何か、いい方法ないかな~」
「おい!
パンダばかりに熱上げて…
オレのことを心配しろよ!」
「ええ~。
ネズミくん…姑息だから…」
「選抜の時のズルは悪かった!
それは謝るよ!
ごめんなさい。
でもよく考えてみろ。
別に1位も2位も、
干支では大差ないだろ?」
「まあ…そう言われればそうだけど」
「もう水に流そうぜ」
「……わかったよ。
いつまでも言ってても、
始まらないしね」
「よし!
そこで相談だ!
今後もパンダのような、
応募してくる新勢力に、
どう対応するか?」
「そうだね。
でも、どうしよう?」
「そうだな…
まずは最下位脱出!
何とかして人気者になる!」
「ネズミくんが?」
「何だよ…無理だろみたいな顔して!」
「だって…
相当、難しいでしょ?
ちなみにネズミくんは…
干支の中で勝てそうなのは、
誰だと思ってるの?」
「勝てそう?
んん~~~
あっ、あれだよ…トリ?」
「それは無理でしょ。
だってペットとしてトリくんは、
人様に親しまれてるよ」
「じゃあ、蛇!」
「まあイメージ的に苦手な人は多いけど、
ヘビさんは神様の化身だよ。
神様が外さないと…思うなあ」
「ええ~!
じゃあ……羊?」
「ネズミくん…
自分の姿…鏡で見たことある?」
「何だよ!
いねえじゃねえか!
圧倒的、最下位じゃん!」
「そうだねぇ…絶望的だね」
「絶望的まで、言うな!」
「もう諦めた方が……
あっ!」
「どうした!?」
「人気…あるよ!
ネズミくん…大丈夫だよ!
君は干支でトップを取れる!!」
「オレがトップ!?」
「そう!
君にはポテンシャルがあった!
すっかり、忘れてたよ!」
「ポテンシャル?」
「君は忘れてるよ…
すでにトップだったことに」
「どういうこと?」
「いるじゃない…
ネズミの人気者…
ほら?
某遊園地の!」
「それって…まさか!」
「そう!
ヤァ!僕、ミッキー◯ウスだよ!」
「いやいや、ダメだろ、それだけは!
まず著作権で間違いなく揉めるって!」
「だってネズミだよ。
世界的な人気者だよ!?」
「スケールがでかすぎるわ!
それにバカ!
アレを他と並べてみろ!
他の干支とバランス取れんぞ!」
「え~。
ミー牛虎…いいと思うけどな」
「おい!
そこはネのままにしとけよ!
オレじゃ、なくなってるじゃねえか!」
「わかった!
じゃあ、ちょっとスケールを、
小さくすればいいんだね?」
「まあ、できれば…な」
「じゃあ、うってつけがいる!
国内最強のネズミ!」
「国内最強?!」
「ピカピッカ~!」
「お前それって!」
「ねずみポケモン、
ピカ◯ュウ~!!」
「それも無理!
ミッ◯ーとほぼ同格の人気者!」
「ピー牛虎…
これも悪くないなあ」
「お前…
オレを消そうとしてるな!!」
ガンバレ~!
ネズミく~ん!
負けるな~!
ネズミく~ん!
お疲れ様でした。