I Can Fly. You Can't Fly!!
友達二人。
何やら談笑中。
「ついに…や~っと」
「来たね~」
「高級車の値段まで下がるの、
何年かかった?」
「何年って言われても、
もうすっかり忘れたし。
むしろ売るの?って感じだったでしょ」
「だよな。
免許取得も大変だったけど、
抽選申し込みが一番時間くった。
でも苦労の甲斐あって、
やっと週末、納車決定!」
「やったね!
まず、どこ行く?」
「そうだな。
やっぱりちょっと遠くへ行きたいよね。
みっつ県またぎで静岡とかは?」
「いいね。
さわやかのハンバーグ食いたい!」
「じゃあ昼、そこ決まり!」
「でも初運転で、
長距離大丈夫?」
「大丈夫だって。
ほぼ自動運転だし。
目的地指定したら、
俺の役目はおしまいだろ」
「まあそうだけど。
この前、事故あったし」
「ああ、あったな。
例のダイナミック入店」
「いや、あれは入店じゃないよ。
あれは爆撃」
「それな!
なんでなるってわかってるのに、
一般販売始めたんだろ…空飛ぶバイク。
人間って馬鹿だよねぇ」
「お前、それ買った奴の
言うことじゃなくない?」
「でも言いたくなるじゃん。
車で最新安全性能ですとか言っても、
事故起きてるじゃん。
散々事故のドラレコ映像流して、
加害者叩いてたくせに、
さらに危ない乗り物売り出すってどうなの?」
「それはそれ。
これはこれってやつかもね」
「でも、そいうやこの前の事故で、
死者出なかったよな?」
「搭乗者がギリギリ射出ボタン押したとか。
でも高度が低くて、
両足骨折の重傷って言ってた。
まあ店舗は全焼したけど、
幸い怪我人なしって…奇跡だよね」
「これからどんどん増えるんじゃね?」
「どうかな?
多分、年齢制限で高齢者は乗れないし、
高いから購入する人も限られてるし…
まず免許取得が難しいから…。
でもどうなんだろ?わかんねぇ。
この前の事故の件で言うなら、
事故は誰でも起こすってことでしょ?」
「それは真理。
やっぱどんなものでも使う人間の問題。
今はまだ事故程度で、
メディアは騒いでいるけど、
もう少ししたら、真にヤバい奴出てくるから」
「真にヤバい奴?どんな?」
「それ聞く?」
「いや、今ほのめかしたでしょ?」
「お前、絶対やらない?」
「よくわかんないけど…やらない」
「ほんとかな~」
「鬱陶しい!
さっさと教えろよ」
「わかったよ。
真のヤバイ奴とは…」
「……」
「ダイナミック亡命者!」
「は?!」
「え?!わかんないの?」
「何それ?」
「頭悪いなあ。
だから、最初は恐らく…
本州から北海道とか、四国から九州。
そして次に九州から種子島経て、
奄美大島経由の沖縄って感じで、
海を渡る動画をアップする奴らが、
出てくるわけさ」
「ああっ!!」
「するとだ。
これ海外いけるんじゃねえ?と、
安易な考えでダイナミック出発して、
ダイナミック入国を試みる!」
「やばっ!」
「するとどうなる?」
「かなりヤバイ!」
「やばいのはやばいけど、
領空侵犯だぜ。
ちょっと考えれば、
空飛ぶバイクで入国できるわけないじゃん。
で、クレイジーな奴のせいで国際問題さ!
そのバイク、途中で海に落ちてみ?
今度は領海侵犯。
それどうすんの?誰が助けに行くの?
南か東なら、まだ救いようはあるよ。
でも北と西に行ったらアウトっしょ!
外交問題待ったなしだよ、これ!」
「日本終わった…」
「何でも発売すれば、
いいってもんじゃないんだって…。
便利なものであっても、
誰もが使っていいわけじゃない。
使える人間を限定するのも大切なんだって」
「限定?」
「別に金持ちの肩を持つわけではないけど、
金持ちって公の場では、
馬鹿なことしないじゃん?
やるなら絶対見つからない秘密の場所でだろ?
あの人たちは手に入れた富と権力を、
阿呆な行動でフイになんて絶対にしない。
そう考えると本当、空飛ぶバイクに関しては、
富裕層限定にしておくべきだったんだよ」
「説得力は…あるね」
「クルーザーで領海侵犯する金持ちや、
プライベートジェットで亡命する金持ち、
聞いたことないだろ?」
「ない。全然ない」
「あとはきちんと管理できる人間。
国家とか地方機関。
あと大手企業なら、
利用目的が明確だし、
常識をわきまえてるから、
そこだけが所有することにすれば…」
「でも、今更そんな熱弁しても、
もう遅いでしょ?
人気に火が着いてるし」
「まあ何でも大事になってからしか、
行動しないのは昔からだし、この国は」
「いつも後手後手だね」
「まあ全世界で発売されるんだから、
この件は日本だけに限った問題じゃないけど、
日本で空飛ぶバイクの事故が起きると、
お決まりの模倣犯が湧いてくるだろ?」
「それまずい!」
「それが団体さんになったら、
また古の言葉で報道されるよ」
「古の言葉?何それ?」
「神風特攻隊…」
「あ~くわばらくわばら」
STOP!一般化!
お疲れ様でした。