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夜に駆ける

僕の名前は時田ときた真守まもる
時をちょっとだけ戻すことができる。
 
これは誰にも話してない…
僕だけの秘密…。
 
僕はある日、
運命の女性に出会った。
 
彼女とは…
数合わせで呼ばれた合コンで知り合った。
 
彼女は…
とても明るく可愛くて…人気もあり、
第一印象は…僕とは不釣り合いだと思った。
 
だから遠くからずっと、
楽しそうに話してる姿をながめてた。
 
でも、見れば見るほど、
その表情や仕草にかれた。
 
ここで僕は時間を戻した…。

あの笑顔は何回でも見れる…
結果、ここで僕は2回戻した。
 
今日は課長に怒られるのを、
回避かいひするため1度使ったので、
1日の使用回数は残り2回だ。
 
すると、彼女が先に帰ると言い出した。
 
ずっと彼女と会話してた友達が、
俺も用事があるから一緒にと言った。
 
僕は時を戻した…。
 
そして…
悪いと思いながらも、
友達のスマホをこっそり、
お店の観葉植物の根本にかくした。

 
そして僕は、彼女と一緒に店を出た。
 
駅まで一緒に歩いたけど、
上手く会話ができなかった。
 
やり直そうと思ったけど、
あと1回だから止めた。
 
まだ大事な瞬間が、
あるかもしれない…そう期待したからだ。
 
彼女は横浜、僕は千葉。
 
僕は見送るよと言って、
東横線のホームへ。
 
ホームで電車を待つ間、
やっと共通の話題で話しができた。
 
とてもうれしかった。
 
気分が良かったので、
リピートしようとしたが…
すんでのところでとどまった。
 
女性との交流が久しぶりで、
すぐ使ってしまいたくなる…僕の悪いくせだ。
 
電車が入ってきた。
 
ホームでの会話は…
長いようで…短かった。
 
でも…
有意義な時間だったことは、
心臓の鼓動こどうが物語っている。
 
電車に乗り込む彼女…

一瞬、寂しそうな表情をしたが…
笑顔で僕に手を振ってくれた。
 
まるで映画のワンシーン…
僕はそう思った。
 
ゆっくりゆっくり…
遠ざかっていく彼女を、
映画の主人公のように追いかけたい…
その衝動しょうどうおさえながら見送った。
 
こんな不器用な僕の姿は…
彼女にはどう見えていたのだろう?
 
主人公のように…
見えていたら…いいなあ…。
 
僕の中で…
手を振る彼女の笑顔が、
エンドレスでリフレイン繰り返している。
 
これが始まり…
ここから二人の物語が始まるんだ。
 
次に彼女と会う時には…
 
会う時…
 
ああっ!!
連絡先交換してない!!
 
僕は時間を戻した…。
 
そして…
 
彼女の笑顔が目の前に。
 
そして…
手を振る彼女が遠ざかっていく…。
 
僕は駆け出した…
主人公のように…

スマホのQRコードをゆびさしながら…。
 
………。
 
恋って急がないといけないんだ…
 
1分って…一瞬いっしゅんなんだね…。
 
 

このお話はフィクションです。
実在の人物・団体・商品とは一切関係ありません。

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