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父の事情と謝辞

お父さんと子ども。
 
「パパ見て!」
「ん?何だ何だ」
 
「ついにこのゲームで、
 93位になったよ!」
「えっ?!
 世界ランキングに入った?
 それはすごいなあ!
 やったなあ!」
 
「へへ。
 頑張ったんだよ~。
 課金せず一生懸命、
 ゲーム内広告を見て…
 貯めたポイントで、
 地道にキャラ強化してきたんだから」
「そうか。頑張ったな。
 ゲーム始めたのは…3年前ぐらいか?」
 
「そう2年生になって、
 友達が始めたのを見て、
 僕も一緒に始めたんだ」
「もう3年か~。
 早いなあ~。
 でもここまで強くするの、
 大変だったし長かったろ?」
 
「そうだよ。
 ほんと大変だったよ。
 何が大変だったかって言うと、
 広告を見るのが一番大変だった
「広告?
 どうして?」
 
「だってさ、まず広告って、
 表示される秒数出るでしょ?」
「出るね」
 
「あれ、一回終わったと思わせて、
 別の画面が開いて、
 また秒数出たりするんだよ!」
「そう……なのか?」
 
「そうだよ。
 終わったと油断させて、
 別の広告ませようとするんだよ。
 ひどくない?」
「それは…ひどいな」
 
「あとね、
 右上の×ボタンも、
 押しにくい場所にしたり、
 最後にちょっとずらしたりするの。
 そして、すぐにやり方を変えてくるの。
 ああいうのズルかしこって言うんでしょ?
 僕はああいう大人になりたくない」
「そうだな…。
 お前は今、感じた気持ちを大切に、
 立派な大人になるんだよ」
 
「うん!
 僕もパパみたいな立派な大人になる!
 
(……
 ……
 ……済まない息子よ。
 
 その広告作ってるの…パパなんだ。
 
 わかってる!わかってる!
 申し訳ないと思ってるんだ。
 
 でも、これは仕事なんだ。
 
 お前も大人になればわかる…
 いや、わかってくれるはずだ。
 
 パパはこれでお前を育ててるんだ。
 
 でも良心の呵責かしゃくはある…だけに…。
 
 だからパパは毎日、
 神様に懺悔ざんげをしている。
 
 この仕事を初めて、
 一日も欠かしたことはない。
 
 ほんとだよ。
 
 そして…
 こんなパパを思ってくれてありがとう。
 
 今度、またこっそり課金しておくから、
 こんなパパを許しておくれ…)
 

このお話はフィクションです。
実在の人物・団体・商品とは一切関係ありません。

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