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吾輩と猫

陽だまりの縁側えんがわ
 
椅子に座っているおじいさん。
 
ひざの上には猫。
 
「あったかくなったのう~」
 
年輪ねんりんのようなおじいさんの指が、
猫の喉元のどもとを小刻みにでる。
 
指はあごからのどへと、
行ったり…来たり…。
 
猫は目を細め、
ずっと喉を鳴らしている。
 
庭をながめながらおじいさんは、
猫の頭を撫で始める。
 
少し顔がつぶれた猫は、
それでも気持ちよさそうに目を閉じてる。
 
やがておじいさんは、
頭から背中へとゆっくり撫でていく。
 
大切な骨董品をみがくかのように。
 
おじいさんはふと手を止め、
自分の右手を見つめる。
 
「お~あったかくなったからのう。
 こんなに毛が抜けたぞ~。
 ひい、ふう、みい、よう…5本も~。
 わしは今朝、枕元に3本だけだから、
 今日はわしの勝ちじゃなぁ~」
 
今日も…
日本は…平和です。
 
「ニャ~~」
 

 このお話はフィクションです。
実在の人物・団体・商品とは一切関係ありません。

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