桜のしべが見つめている-03(小説)
「そう、きみにはコレがそんなふうに見えているのか。そうか」
ソレはそっと幹を離れて二歩ほどユウコへ近付いてきた。ユウコは咄嗟に、一歩だけ後ずさったところで止まった。一定の距離を保ったまま、ソレは何度も確かめるように、そうかそうか、と口にしてはうんうん頷いた。無数にある眼球のうち、いくつかは伏せられて口と一緒に感慨深そうな表情を作り、いくつかは興味深そうにぎょろりとユウコへ向けられる。
ユウコはいっそう居心地が悪く、誰か通りかかってはくれまいかと周囲をそっと伺った。けれども