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小説に近いもの

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書いたもののうち、小説だと思うもの
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#桜

桜のしべが見つめている-09(小説)

 見上げれば小さな花弁がひらり、ちらり、はらり、枝の先に別れを告げて風に乗って飛んでいく…

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桜のしべが見つめている-08(小説)

 たとえば講義の始まる時刻のぎりぎりに教室へ駆け込むとき、あるいは同級生が談笑に花を咲か…

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桜のしべが見つめている-07(小説)

 ユウコは相変わらずソレの姿を直視はできなかったけれど、気にしないのも限度があって、瞬き…

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桜のしべが見つめている-06(小説)

「だいたい、ぼくみたいなモノに姿かたちや言葉を必要だと思うのは、きみたちの都合だよ」  …

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桜のしべが見つめている-05(小説)

 ひどいじゃないか勝手にいなくなって、と非難轟々だった。発言者は一人だったし、口も一つし…

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桜のしべが見つめている-04(小説)

「や、ずうっと遠くの親類みたいな奴らがどうかは知らないけどね。少なくとも僕は人を食べた試…

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桜のしべが見つめている-03(小説)

「そう、きみにはコレがそんなふうに見えているのか。そうか」  ソレはそっと幹を離れて二歩ほどユウコへ近付いてきた。ユウコは咄嗟に、一歩だけ後ずさったところで止まった。一定の距離を保ったまま、ソレは何度も確かめるように、そうかそうか、と口にしてはうんうん頷いた。無数にある眼球のうち、いくつかは伏せられて口と一緒に感慨深そうな表情を作り、いくつかは興味深そうにぎょろりとユウコへ向けられる。  ユウコはいっそう居心地が悪く、誰か通りかかってはくれまいかと周囲をそっと伺った。けれども

桜のしべが見つめている-02(小説)

 自宅近くの小学校の校庭を、ぐるりと囲むように、ソメイヨシノは植えられていた。フェンス越…

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桜のしべが見つめている-01(小説)

 ユウコは、満開の桜を貴ぶ風潮がなぜだか昔から、さほど好きではなかった。今も大して好きで…