フタゴヤ キエゾー

実話怪談と日常のメモ | 普段は白空庵という屋号で縁起物を制作しています | 無断転載…

フタゴヤ キエゾー

実話怪談と日常のメモ | 普段は白空庵という屋号で縁起物を制作しています | 無断転載・改編禁止

マガジン

  • 忘備録

    作家として、人間として、その時々に思ったことの記録

  • 怪談

    これが何になるかより、ただアウトプットしたくて始めた実話怪談。

最近の記事

怪談21:最後の戦

眠る前にお経を読んでいた。 お盆が近いということもあり、普段いる土地の供養と守護の為として、日々のお勤めに一巻加えていた。 その日の夜。 夢を見た。ひとりの初老の男性がいる。現役の頃は前線で戦っていたが、今は馬の世話をしているらしい。そんな彼に、声をかける人物がいた。まだ若者だが聡明で、どうやら彼が軍を指揮しているようだとすぐに分かる風態だった。 彼は初老の男性に、次の戦では共に出陣だと伝えていた。理由はわからないが、白羽の矢が立ったのだ。 老兵は戦った。 愛馬も次

    • 怪談:20 おまじないの人形

      その昔。オカルトやスピリチュアルに興味のない知人が、幸運のおまじない人形の写真をSNSにあげているのを見つけました。 そもそも優等生であった彼女。精神的なことに一切興味はなく、学生時代は教師からの信頼も厚く、社会に出てからは地域の役員をするなど、与えられた仕事を律儀にこなしているような人でした。 また、子育てなど一切の苦にならない・子供を邪険にする人のことは理解しかねると言い、いわゆる潔癖なところも持っていました。 しかしそんな彼女が、ある時からしきりに離婚をしたいと言

      • 怪談19 上、うえ

        年末を迎えるにあたり、体が不調に。神棚に手を合わせて「何か原因があるのでしょうか」と問うと『上、うえ』と伝えられた気がした。 上?家の上に何かあるの?それとも屋根裏とか? そんなことを思って2・3日。 そろそろ大掃除の時期だなと、神棚の掃除をすることに。 ホコリを払おうと棚からお社を下ろすと、屋根がパックリ裂けている。 「ああ、上ってコレのこと!」 理由はエアコンで乾燥しすぎたためと、経年劣化だと思うけれど。翌日、急ぎ新しいお社を購入。古いお社は、神社にご連絡して引

        • 怪談18:供養と夢の女の子

          今日は、少し不思議な夢のお話。 つい最近のことですが、憑き物について調べ物をするなか、ご先祖さまの供養をしようと思うようになりました。 きっかけは餓鬼。言葉としては知っていたけれど、実際に興味を持ってみると、餓鬼の中にも色々な種類があり、何故餓鬼になったのか・どのような苦しみを持っているのか・どのような食べ物ならば届くのかなど、それぞれのようで興味深い。 何故餓鬼になったのか?の理由がとても具体的で、そこに過去の自分を見たり、知った人の顔が浮かんだり。思うことは様々だけ

        マガジン

        • 忘備録
          24本
        • 怪談
          17本

        記事

          いろんな怪談、何が好き?

          怖い話を聞いたり書いたりしはじめて、少しの時が経ちました。 最初は、漠然といろんな人の話をボーッと聞くだけだったのが、オカルトの中にもジャンルがあること・怖い話の中にも好みがあることに気付いたり、「話の作りとして、いい怪談」というものがあることが分かってきたりして。 ただ怖い話を聞いて、怖さを楽しむだけではなくて、話をする側の人たちが考えていることに興味を持つようになっています。 ちなみに私は、体験するのは幽霊で十分怖いけど、幽霊がいるのが当たり前+それより怖いもの(山

          いろんな怪談、何が好き?

          怪談17 石

          石が好きだ。世の中には色々な石との付き合い方があるけれど、地中から出た神秘の雫として鉱物が好きな人間として、あまり危険なものを除けるために使いたくはない。 けれど、時には起こることから守ってくれるチカラがあるもの…それもまた、真実だと思っている。 ある日のこと。その日は山の怪について調べていました。間で怪談を聞きつつ、日本の山々で起こる奇妙な出来事や事件に思いを馳せるなか ふと、日本各地にいる名のある神・名のない神、自分がいつかどこかに帰らなければならないなら、制約があ

          怪談16 鴉天狗

          先日、夜中にふと目が覚めました。目を開けても特に何もなく、さぁまた寝ようと瞼を閉じると、そこにギョロリとこちらを睨む目が見えました。 これは怖いものなのか?と思いながらじっと意識を集中していると、そこに浮かんだのは鴉天狗でした。天狗を見たことはなく、山から山に天狗が飛ぶのを見たという人の話を聞いては「嘘だ」と思っていたのですが。 怖いと同時に、初めて見た(感じた)天狗の姿に、少しだけ感動したのを覚えています。 わー…と思いながら姿をよく見ると、他に何か大切そうに抱えてい

          怪談14 死霊と子ダヌキ

          死霊に生霊、呪いにモノノケ。 怪談と言っても、色んなものに因んだ話があります。 私には、死霊の顔は見えません。生霊は、頭の中で感じたものがホログラムのような色で見えます。やたら神経が立ったような夜に、瞼を閉じて変な人形の顔が浮かんでは消えてを繰り返すようなときは、呪いの類だと思っていて。モノノケは…今のところ肉眼で遭遇したことはありません。 ただ一度、夜中に目が覚めたと思ったら、白黒の写真のような老女の姿が浮かんできたことがありました。 うわ、死んだ人…と考えていると

          怪談14 死霊と子ダヌキ

          怪談13 囲炉裏

          その日は、知人に誘われて、あるアート系のイベントに参加していました。 ほんの少し山を登ったところ。いわゆる自然派嗜好の人たちの集まりで、大きな会場で火を焚き、最後にとある民族の儀式を模して、神に祈りを捧げるというものでした。 イベントと言っても、その地域の人や身内の人の手伝いも多く、やることもなかった私は、ただプラプラと参加者との会話を楽しみました。 そして、そろそろ陽が傾きだすかなという頃になって、祈りが始まったのです。 大人たちが集まって神妙な顔で神様に語りかける

          怪談12 海

          ある日の夕暮れ。友人と浜辺を歩いていました。 落ちている流木を拾ったり。鳥の羽を探したり。 少しずつ暗くなる浜辺で、のんびりと話をしながら過ごしていました。 夕日が段々と沈み、海の向こうに落ちていく。そして、プツッと小さな陽が姿を消した瞬間、海の向こうから何かがやってくるのを感じ始めます。 姿は見えません。波の音だけが当たりを包んでいます。しかし、真っ暗になりきる海の向こうから波の上を進み、ゆっくりと何かが迫ってくるのだけが分かるのです。 そろそろ、行こうか。 友

          怪談11 島

          山を登っていました。 それは、徒歩30分ほどで登れる小さな山で、石英や長石の塊を探しながらシダ茂る道を歩いていました。 途中までは何とか普通に登れるものの、山頂付近になると途端に道はなくなり、張られたロープだけを頼りに落ち葉の滑る道をなんとか進むようなところでした。 山頂に着くと、そこには古いお城の跡と、小さなお社があります。手を合わせてふと横に目をやると、そこからは海と、海岸に続く茂った森を眺めることができます。 途中、人とすれ違いながらも、平日の真昼間。そこには私

          怪談10 人神

          優秀な行いをした人物を祀るため、または、怨みより祟りをなす人物を鎮めるため、神として信仰するようになったもの。これを人神(ひとがみ)と言う。 昔々、まだ20代だったころ。一人の女性がおりました。溌剌とした、私より一回りほど年上の方でした。 もともと不思議なものが好きな方で、初めはいろいろな神社を巡りながら御朱印を集めるのが趣味というほどの穏やかなものでしたが、ある時期を境に言動がおかしくなっていきました。 共通の知人曰く、ある信仰宗教のなかで、集団で囲まれて霊能力がある

          怪談09 女子高生

          ある日の夕方。 妊娠していた私は眠気に耐えられず、昼寝をしていました。主人が帰ってくる時間が近づき、そろそろ夕飯を作らなければと起きあがろうとしたときのこと。 ふとベッド横のドアに目をやると、一人の女の子が立っていました。 薄暗い部屋の中に、特徴的なリボンをした、ブレザー姿の女子高生。陰っているような、心ばかり透けたような色合いで、顔は見えない。 それまでも、気配を感じたり、頭の中の映像をそこに見るようなことはあったりしましたが、肉眼で真っ直ぐ向けた視線の先に「幽霊を

          怪談09 女子高生

          怪談08 かんの虫

          昔々、まだテレビがブラウン管だった頃、樋屋奇応丸のCMが流れていた。 赤ちゃんの夜泣きや「かん=疳の虫」を穏やかにする玉薬だそうで、ひやひやっひやのひやーきおうがん♪というキャッチーなメロディーと共に紹介されていたのを今でも覚えている。 時が経ち、私が二十歳を超えたときだった。 若い親戚の女性と、そもそもあの疳の虫ってなんのことやろね?という話になった。なまじオカルト好きだった私は、中国の三尸説(さんしせつ)のようなものだろうかと思っていたのだけれど、ちょうどネットを通

          怪談08 かんの虫

          怪談07 狸

          あれは、少し前のこと。 絵の題材のため、私は、訪ねたことがある土地の不思議な歴史を調べ直していました。特に憑き物についての話題が目に付きましたので、生き物についての言われや伝承について掘り下げていこうとしていました。 その中で、急に食欲が増した期間があったのです。 普段も食べることが好きなタイプですが、明らかに自分でも無茶とわかるぐらいで。1日に6食ほど食べる日が、数日続きました。 体はパンパンになり、夜は具合が悪くて眠れません。 ストレスや緊張のせいかと思いました

          怪談06 母

          母は、六感がある人でした。 平成も初めの頃。当時はまだ携帯電話もなく、ディスプレイ付きの電話が出たか出ないか…ぐらいの時だったと思います。 我が家にもディスプレイ付きの電話がやってきて、近しい親族から電話がかかってくると、登録した番号が表示されるように設定していたのですが ある日、プルルル!と電話が鳴ると、表示された名前を見る前に「多分、○○のおばちゃんからやわ。キエゾー、私用事してるからちょっと出て。」と言いました。 何を適当言うてるの…と思いながら画面を見ると、そ