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怪談11 島

山を登っていました。

それは、徒歩30分ほどで登れる小さな山で、石英や長石の塊を探しながらシダ茂る道を歩いていました。

途中までは何とか普通に登れるものの、山頂付近になると途端に道はなくなり、張られたロープだけを頼りに落ち葉の滑る道をなんとか進むようなところでした。

山頂に着くと、そこには古いお城の跡と、小さなお社があります。手を合わせてふと横に目をやると、そこからは海と、海岸に続く茂った森を眺めることができます。

途中、人とすれ違いながらも、平日の真昼間。そこには私しかいません。

ずっと森から海に続く様を見つめていると、昔はこの四国も静かな島で、恐竜たちが暮らしていたのだろうと思える映像が想像できました。まさにジュラシックパークでしか見たことがない光景で、それをこの時代に感じられる場所がまだあったことに、感動したのを覚えています。

その時間を独り占め出来たことは、今でも宝物です。

四国の巨石を探している時、少しだけ地層の情報にも触れることがありまして、実際にその場所から恐竜の化石が出ていたと知るのは、もうちょっと後のこと。

海の青い南国でも無いし、雪も降る。四国を一つの神宿る島として見る人は少なくて、どちらかというと霊場・田舎で薄暗く重い印象を持つ人が多いのかもしれません。

しかし、私はときどき思うのです。

特別な何かを求めて遠くを訪れる人は多いけれど、この四国も一つの大きな島だ。そして、ここには海に・山に・時には里の神社仏閣に姿を隠した神様たちが居て、どんな場所にも負けない不思議な魅力が、きっと沢山詰まっているのでないだろうか…と。

地元バカ。

それでいい。この土地の木や水たちに、眼差しを向けて生きてみたいと、あの光景を思い出すたびに願うのでした。


・・・いつか、奄美大島へは行きたいけど。笑

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