だけど願いはかなわない 第十三話「先制攻撃」
「すみません。私、料理は苦手で…。」
あれは、ジュンを雇い始めてほんの数日程の事だったと思う。
週刊連載のコラムのネタ出しに苦戦していた俺は外食に出かける気力も無く、出前の飯にも飽きがきていたので、ちょうど出勤してきたジュンに何か簡単なものでいいから作ってくれないかとお願いをしたのだ。
そうして返ってきたこの言葉は、てっきり嘘や謙遜の類いだろうと思った。
なぜなら、ジュンの淹れるコーヒーや緑茶は、馬鹿舌の俺でも違いが分るくらいに美味かったからだ。
「カレーとか焼きそば