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節分の翌朝、家から飛び出していった福の女神

あー......今年もやって来た。

世にも憂鬱な節分の日が・・・

・・・・・

昨日は、節分だった。

子供たちは、月曜週明けだというのに、

"今日は節分"

ということで、
やたらと、テンションが高い。

みんな、朝から大はしゃぎだ。

学校では、毎年節分の日に
豆まき集会がおこなわれる。

体育館で教師たちが鬼になって
暴れまくってくれるのだ。

最近、言葉にの使い方やマナーが
なっていない子どもを多く目にするが、

親からしてそうなんだから
どうにもならない・・

フー.......

『教師鬼』には、
学校のお勉強なんてどうでもいいから、
社会の一般常識とか礼儀とかを
そういった子どもたちに叩き込んで欲しい...
金棒持って、わかるまで・・・・

...と、本気で願う。

さてさて...

話は逸れてしまったが、

毎年、うちの子供たちは、
学校の豆まき集会を楽しみにしており、
『教師鬼』が撒き散らした豆を拾い集め、
マジックで名前を書いて持参したナイロン袋に入れて、
いつも嬉しそうに持って帰ってくる。

もちろん....

子供たちのお楽しみは、それだけではない。

節分の夜には、
我が家にも『鬼』がやってくるからだ。

学校にやって来る『教師鬼』とは、
また別の『鬼』が・・・

もちろん、

本物の怖い怖〜い鬼ではなく....
とっても優しい優し〜い鬼が・・・

そして、その鬼は、
金棒を持ってやって来るのではなく、
たくさんの飴やらピーナッツやらを
抱えてやって来る。

その...子供たちが楽しみに待っている
『鬼』の正体というのは、

"じいちゃん"

なのだ。

つまり、

私にとっては、

"父"

...ということになる。

孫思いの父が、毎年...節分の鬼役を
買って出てくれているのだ。

・・・・・

父の昔ながらの友人に、
食品を取り扱う個人商店を営んでいる人がいる。

大手スーパーやコンビニチェーンの台頭によって、
父の友人のお店も、年々客足が狭まる一方で....
それは、うちの父もよく理解しているため、
時々、友人の顔を見に行っては、
仁義もあり、あれこれと食品を購入してくるのだ。

我が家からは、
少し距離のあるところに
そのお店はあるのだが、

それでも、毎年節分になると、
父は、決まってその友人のお店で、
飴やピーナッツや、
子供たちが好きそうなお菓子までをも、
買って来てくれるのだ。

父の帰宅時間は、
大体19時半から20時くらいだ。

子供たちは、それまでに夕飯とお風呂を
済ませ、ワクワクしながら、
"じいちゃん"が扮する『鬼』の帰りを待つ。

車で会社通勤しているので、
家の駐車場に
『鬼』の車のエンジン音が聞こえてくると、

「あっ!じいちゃんが帰ってきたぁ〜!!」

..と、

子供たちは玄関に出向き、一斉に靴を履き、
駐車場まで、その『鬼』をお出迎えに行くのだ。

そして、

『鬼』の仕事カバンやら、
空っぽになったお弁当箱の入ったバッグやら、
飴やピーナッツなんかが入った買い物袋を..
この時とばかりは、3人仲良く
手分けして家まで運んでくれるのだ。

『鬼』が夕飯を食べている間、
子供たちは、母と私で作ったチラシの箱に、
飴やピーナッツを入れて、豆まきの準備をする。

子供たちが協力して作った鬼のお面を、
夕飯を終えたばかりの『鬼』がかぶり、
ようやく豆まきタイムが始まる。

子供たちは、もう大はしゃぎだ。

そして、

子供たちの笑い声に
『鬼』も大はしゃぎで、逃げまくる。

「鬼はそと、福はうち〜!」

リビングのカーペットの上は、
辺り一面.......
飴やピーナッツで、いっぱいになる。

すると、私の思考は....

「あ、あと片づけが..............」

....となる。

だがしかし、

その程度のあと片づけくらいは、
いくら、あち片づけが苦手な私でも、
全然へっちゃらだ。

問題なのは・・・・・・・・・

『鬼』が自ら、率先して、
各部屋に豆をばら撒いて歩くことだ。

家じゅう全部の部屋に

鬼を寄せ付けないようにと.....

福を呼び寄せるようにと.......

「ほらっ!
おまえらも、鬼が来ないように
ジャンジャン豆撒け!撒けぇ〜!!」

..と、楽しそうに言いながら..

子分を3人引き連れて、
ホントにジャンジャンあちこちに
ばら撒いてくれるのだ。

・・・・・

こう書けば、
なんとも微笑ましい光景だ!

..と、思われるかもしれないが、

いやいやいやいや・・・・・・・・・・・

私が主張したいのは、別のところにある。

賢い主婦の方々ならもうお気づきのこととは
思うが、こっちは、『鬼』の尻拭いが大変なのである。

母は、持病を抱えているため、
夜になると、足が不自由になり、
あまり動けなくなる。

よって、
各部屋にばら撒かれた豆を拾うのは、
毎度毎度、私の役目なのだ。

田舎は、どこの家庭も
家が大きく作られているのが特徴なのだが、
我が家も比較的大きい作りで
部屋がたくさんあるため、

すべての部屋の....
しかも、
どこに散らばっていったのかも
よくわからない豆たちを

探しては拾い....探しては拾い.....

を繰り返す作業は、
私にとっては非常に煩わしいのだ。

ましてや、節分の時期は
真冬なのでと〜っても寒い。

暖房の効いていない部屋の中での
豆回収は、結構キツイものがある。

だがしかし・・・・

『鬼』の仕業は、これだけには止まらない。

家じゅうに豆を撒くだけでなく、
玄関から、外に向かっても
ジャンジャンばら撒いてくれるのだ。

豆まきが終わる頃に
私が回収作業に取り掛かろうとすると...

....『鬼』が、私に向かってこう言う。

「ユウリ、薄暗い中で拾うのも大変だから、
明朝の明るくなった時に拾えばいいだろう。
俺も手伝うからさぁっ!」

..と。・・・

私の記憶からすると、
今までに『鬼』が手伝ってくれたことは
一度もない。

ここは雪国だ。

毎冬、朝起きると、
深夜から朝にかけて降り積もった雪を
除く作業をしなくてはならず、
チマチマと豆を回収してるどころではないのだ。

それに『鬼』は、除雪作業を終えると、
すぐさま、
鬼の住むところ..
.....会社へと、足早に逃げていってしまうのだ。

だが・・・

ありがたいことに、
うちの子供たちも、みんな小学生になり、
ここ最近は、
豆を拾うのを手伝ってくれるようになった。

各部屋に散らばった豆は、
その日はそのままにしておき、
豆まきの翌日、
子供たちが学校から帰ってきた時に、
宝探しの感覚で私も一緒に楽しみながら
拾うようにしている。

拾った飴をみんなで舐めながら・・・

ちなみに、
ベッドの下に入り込んだ豆は、
100センチの物差し定規を用いて
小5の長男が拾ってくれるので、助かっている。

なので、

私は、『鬼』が玄関の外側に
撒き散らした豆だけを一人、
翌朝に拾うだけでよくなったのだ。

とは言え.......

真冬の朝は、気温が下がり、
厳しい寒さに見舞われる。

でも......

今年は暖冬で、雪が降らない。

" 雪がない分だけ、助かるわぁ〜!
翌朝の玄関先の豆回収は、楽勝ね・・・ "

......な〜んて、
一人で喜んでいたのに、
よりによって今朝、起きたら、
雪が少々積もっているではないか・・・

う〜!寒〜いっ!! 

...と思いつつも、

『福の神』...

いや.....

『福の女神』は、

家の中から飛び出した。

コートを羽織って、マフラーと手袋着用で、
長靴履いて、トングを片手に...

そして、
玄関先に散らばってる豆たちを
白い息を吐きながら、必死に拾うのだった。

そう.....

我が家の場合は、

♪  鬼はうち〜、福はそと〜・・・

なのである。

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