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【自作詩】 砂時計


『砂時計』 /匤成深夜

砂時計の砂が流れ始めたとき
世界は広くて綺麗に見えただろう
流れてゆく砂の名は“人々”という

彼らは希望と自由を探していた
そして見つけたものは何だっただろう

「広い世界を自分のものにしよう」という 
願いの足もとに 憎しみと戦いが
転がっている事に気づかず転んでしまった

窪みの大きさは決まっているから
チャンスは等しく与えられたけれど
窮屈さは増すばかりで 下に降り積もるたびに
ここまで落ちた速さを信じられない思いで
窪みを見上げている

今や終末時計は100秒しか残されていない
砂はそんな事は知らずにどんどん流れてくる
「少しでも華々しくあろう」と派手に散らばる
けれど どこに行ってもガラスに阻まれて
結局はほかの砂と同じように降り積もってゆく

喜びと妬みの気持ちが混じり合いながら
残り少ない砂の数を見る
「大変な人生が待っているぞ」と
教訓めいた捨て台詞を残して
いま下の世界の中段にいる

“おや こんな所に砂時計があるじゃないか”
誰かそう言って 時計をひっくり返してくれないか

少しずつ 少しずつ 
しわがれた野太い指をした手が近づいている
下の世界が陰に覆われるごとに
きっと 砂時計がひっくり返される日は近づくのだろう

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2020年10月30日 追記

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