見出し画像

魚群探知機誕生の地「五島」/海辺の水彩画

絵・文 岡本 幸雄

なかなか明けない7月の梅雨空を横目に、雨の五島列島を旅しました。
小雨の長崎から船に乗り福江に上陸。港近くにある上皇上皇后両陛下もお泊まりになったという老舗ホテルに連泊しながら、ここをベースに島内や上五島方面を巡ることにしました。

五島は、九州の最西端にあり長崎港の西方約100㌔に位置しています。福江島や中通島など5島を中心に140もの小島からなる南北に延びる列島です。島全体が自然海浜や海蝕崖など変化に富み、ほぼ全域が西海国立公園に指定されています。

福江滞在2日目、時速80㌔の高速艇ジェットフォイルで上五島の中通島へ向かうと、30分ほどで奈良尾ならおに着きました。
小さな船着き場から対岸を眺めると「FURUNO」の看板が目に飛び込んできました。ここは同社の奈良尾サービスセンターです。

奈良尾漁港。岸壁中央にFURUNOの奈良尾サービスセンターがあります。
月夜間になると港内は帰港した大型まき網漁船群で埋まります。

奈良尾といえばNHKのテレビ番組『プロジェクトX ~挑戦者たち』で2001年に放送された「兄弟10人 海の革命劇」を思い出します。

『70余年前、「魚群探知機なんてインチキだ」という噂が飛び交う中、長崎県の港町で船舶の電気艤装工事業を営む古野清孝・清賢兄弟が、魚探の試作機を一隻の木造船に載せ、奈良尾漁港を出漁した。
いつも漁獲は最下位。周囲からは「ドンビリ船」と揶揄されていた隣村の桝富丸ますとみまるだった。ところが魚探を装備した桝富丸は、なんと一躍、連続3カ月トップの漁を記録したのである。』

初期の魚群探知機イメージ。
紙幅15㌢の湿式記録紙上にペンを走らせ魚群反応を記録表示していました。

現在、奈良尾漁港には3カ統さんかとうの大型まき網漁船がいます。地域によって異なりますが、1カ統とは、 本船・探索船(灯船)・運搬船の2~5隻で構成された1グループのことを言います。

月夜間つきよま」になると操業中の全船が帰港し、月に一度の休漁に入ります。月の光が強くなり、夜間操業時の集魚灯効果が得られないため漁を休みます。
月夜間は、満月を挟んだ7日間のことで旧暦の13~19日をいいます。この間、まき網漁船団は帰港し乗組員らの休養のほか次回出漁の準備にとりかかります。
特に、忙しくなるのが舶用電子機器メーカー関係者です。次の出漁に備えて漁労電子機器のチェックとメンテサービス、機器の入れ替えや新設工事、乗組員への技術指導、勉強会開催などなど――多忙を極める7日間となります。
ちなみに、FURUNOのカレンダーには創業以来、月夜間の期間が太い黄色線で掲示されています。

FURUNOのカレンダーには「月夜間」が掲示されています。
月夜間は旧暦の13-19日で、満月を中心にした1週間のこと。
月夜間では月明かりが集魚灯の邪魔をするので漁を休みます。
祈りの島、五島市。
ここは中通島の奈良尾漁港から6㌔ほど北上した海辺にある「カトリック中ノ浦教会」です。

おかもと・ゆきお profile
1944年、姫路市生まれ。1967年古野電気入社。フルノ在籍時からマリンギアライターとしても活躍し、「須磨はじめ」のペンネームでフィッシング雑誌などに寄稿。著書に「魚探とソナーとGPSとレーダーと舶用電子機器の極意」、「魚探大研究」、「魚探・GPS 100%使いこなしブック」など多数。著書の挿絵から水彩画の世界へ。

本記事は2016年〜2022年までBoat Fishing誌にて連載されていた「海辺の水彩画(絵・文 岡本 幸雄)」を再編集したものです。
「魚群探知機誕生の地「五島」」は2019年10月号に掲載された内容です。
当時の面影とともに水彩画の世界観をお楽しみください。

この記事が参加している募集

ふるさとを語ろう

みんなにも読んでほしいですか?

オススメした記事はフォロワーのタイムラインに表示されます!

- 海を未来にプロジェクト -