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情熱が導く風景1/2▶️Start-upログ⑥

アラフォー、バツイチ、頼りないドイツ語のままベルリン在住11年目。
服飾/舞台衣装デザイナー。コロナの都市封鎖により全劇場閉鎖=全仕事が吹っ飛んだことを機に、立ち止まり改めて仕事と向き合うことに。そこでの気付きを元に方向性をまるっと変え、一念発起で新事業を立ち上げる!と、いう。このブログは、そんな彼女の新たなる挑戦ドキュメンタリーである。

グラフィックデザイナーとの打ち合わせが延期になったので、今日は、起業話から少し横道に逸れて、最近心が動いた出来事の話をしようと思う。


わたしには、尊敬する兄が2人いる。
先月、兄の一人が、フランスで開催された”TDS”というトレイルランニングの大会に参加した。
"TDS = Sur Les Traces des Ducs de Savoie”という名のこの大会は、フランスーイタリアをまたがるヨーロッパ最高峰モンブランを寝ずに走り続けるというクレイジーな世界大会である。走行距離145km(悪天候によるコース変更で、今年は153kmに。)、UP&DOWNの総標高9100m。夜は、月とヘッドライトの光のみでこれまた走り続ける。しかも、各所通過に制限時間あり。聞いただけでも気が遠くなるのは、わたしだけではないだろう。

兄は、この大会に参加するためだけに夏休みを取り、フランスへ渡った。

大会が開催される週は、それまでの夏日が嘘のようにヨーロッパ中の気温が一気に10度ほど下がり、どんより曇り空が続いていた。
しかし、そんな心配は何処へやら。彼が拠点となるフランスのシャモニーに無事到着したよ!と報告してくれたメッセージには、清々しい青空の写真が添えられていた。よく来たね!宇宙が歓迎してくれたのだ。

いよいよ迎えたスタート当日。
予定より40分遅れで迎えたスタートは、現地時間夜中の12時40分。
大会のGPS付きリストバンドを装着しているので、タイムリーに彼がどこを走っているのかがわかるようになっていた。世の中が寝静まった頃、彼は走り出した。

スタート地点ですでに標高1000m。そこから2000mまで一気に山を駆け上がる。わたしがぐーすか寝ている間に随分歩みを進めていた。仕事中も隙さえあれば彼の足跡を追い、進んでいることを確認する。彼は、前へ前へと進み続けていた。それを見る度、胸が熱くなり涙が溢れる。キャンプ好きなわたしは、自然の美しさや厳しさ、そして、登山の楽しさやキツさも一握りながら知っている。

どんな気持ちで走っているのだろう。
どんな景色を目にしているのだろう。


無事を祈ると同時に、彼が最初に完走した市民マラソンの光景が何度も頭に浮かぶ。20年も前の10kmマラソンだっただろうか。当時まだラン友もおらず、ゴール地点で待っていた母とわたしに、へへ。と照れ臭そうに笑っていた兄。何を思って走り始めたのかは、尋ねたことがない。でも、自分を変えたい。打破したい。当時のわたしには、そう思っているように見えた。
あれから何年もの月日が流れたが、その間も彼は走り続け、目標を見つけていた。その目標=夢の一つがTDSだ。この世界大会は、誰もが出場できる訳ではなく、いくつかの100マイル級のマラソンを完走していることなどの条件があり、出場希望者が多ければ最後は抽選で決められる。それらを見事突破し降り立った夢の舞台。憧れの舞台を、思いっきり楽しんで♬:) そう言っておくり出した。

頑張れ、頑張れ。
皆の応援が、自然が、彼を守ってくれるようただひたすらパワーを送り続ける。関係ないのに、わたしの食欲が落ちる程に。。

to be continued..

大自然(モンブラン)の中を走るTDSトレイルラン


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