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線虫が細菌を忌避する学習を、RNAの形で他個体に水平伝搬できるという発見

Cell誌に発表された文献が個人的に面白かったので掲載する。日本語で既に記事があるので、特別なカテゴリーを設けないが、トランスポゾン由来のRNAがウイルス様の粒子に包まれて、それが培地中に出てからも、他の線虫の個体に取り込まれると、その細菌に出会っていなくても、細菌を忌避する行動をとることができるのだという。ある種のワクチンじみた免疫機構を学習・行動でやっているようで面白い。実際に、神経細胞の働きも実験で確認している。何よりも、担当するRNAの阻害実験を学習前、学習後の線虫、その線虫の子孫に対して、綿密に実施し、突っ込みどころがないところまで突き詰めている努力が凄まじい。かつて否定されたラマルクの「獲得形質の遺伝」を見ているようでもある。水平移動のみならず、生殖細胞を介した子孫への学習の「垂直伝搬」もされているようだ。ただ、線虫にも様々な株があり、ハワイアン株という種類では、この学習はできないようである。


https://murphylab.princeton.edu/sites/murphylab/files/test.pdf



リンク先の説明にもある通り、最も面白いのは、トランスポゾンとしての働きのみならず、ウイルス様の粒子に包まれてこのRNAが運ばれる点であろう。遺伝子の水平移動の新たな機構であり、この論文が世に出たことを心より祝福したい。画像は論文に掲載されている、実験結果を総括した模式図になる。上記PDFでも閲覧できる。



線虫は「粒子」で記憶を他の個体に転送していたと明らかに (3/4) - ナゾロジー米プリンストン大は線虫が記憶した情報をRNAを含む粒子を介して他個体へ転送していると報告。有毒なエサを学習させた線虫を粉砕し、別の個体に接種したところ、未学習だった個体もエサを避けるようになったそう。

nazology.net



線虫はお互いのRNAを交換することで、記憶を共有することが判明 (2021年9月17日) - エキサイトニュース体長1ミリ程度の多細胞生物である線虫は、どのようにして次の世代へと記憶をつむいていくのだろう?例えば、食べると病気になってしまう食物の危険性を伝えることができれば、種が生き残る確率が高くなる。新たな研...

www.excite.co.jp


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