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竜とそばかすの姫

ネタバレを含む可能性があります!
なるべく無いように書きますが・・


「美女と野獣」オマージュでもド田舎青春映画でもない!

いろんな方のレビューを読みました。
予想外に批判的な評価の低いレビューが多くて驚きました。
私の勝手なイメージですが’細田守映画'ってもうブランド化されてると思うので
一定数のファンはいて、一定数の評価を得ていて
それにつられるように高評価を獲得していくものだと思っていたので・・

正直わたしも感想としてはいまいちでした。
省かれている部分が多すぎて、見ているその瞬間に理解できないことが
多かったかなという印象です。

ただ、他の方のレビューにあるような

「美女と野獣のオマージュをやりたかっただけ」
「ど田舎の青春物語から急な社会派映画への移行」
「ただのMV」

という意見には賛同しかねます。

いまいちではあったけど、そんな浅い映画でもなかったように思う。
あまりにもひどいことたくさんレビューに書かれてたので
なんかムキになって長文感想書きます。笑


設定のツメの甘さ

これは細田さんの認識の甘さ、読みの甘さだと思うのですが
「映画レディプレイヤーワン」のように完全に仮想世界に入り込んで
バーチャルな自分が仮想世界で活動するという設定でもなく
ただイヤホンのようなデバイスを装着するだけで
現代のツイッターのようなSNS空間もっと発達したバーチャル空間
間のような世界観で【仮想現実】が進行していく、という設定。

言ってしまえば「映画」なので、厳密に描く必要性はありません。
見ている人に委ねる、という選択肢をとるのも魅せ方のひとつではあると思います。
ただ今回は委ねすぎた、というのが戦略ミスのひとつだと思いました。

我々はバーチャル世界を、すでに少しずつ現実に起こり得るものとして
リアルに感じられるようになってきてしまっています。
技術進歩により、よくも悪くも【バーチャル=おとぎ話】
ではなくなっているのです。

つまりそれは、その設定に現実性を求めてしまうということ。

「遠い遠い国のお城の中に髪の長い女の子が閉じ込められていました」
よりも身近すぎる設定で、特に若者にとってのフィクションには
なりきれていないということです。

これってタイムトラベル系の映画によく起こります。
タイムトラベルって、理論的には何人もの頭のいい人たちが
仕組みを解明しようとしているために
タイムトラベルという現象設定をあいまいにしてしまうと
そこにあらを探す人が出現し、そのせいで物語に入り込めない本末転倒な人が現れてしまうのです。

それと同じような現象を感じ取ってしまった人が
おそらく監督の予想するよりも多かったのでしょう。

そしてこの物語においては、それが結構マイナスに転びました。
なぜならそもそも、「現実」と「ファンタジー」を
きちんと棲み分けて描かないと
魅力が感じられないストーリーだからです。
「現実のすず」と「ファンタジーのベル」の棲み分けとリンク。
これがこの物語の最重要項目なのに、それが描けていない。
描けていないというか、描き分けられきれてない?
これが観客を置いていった最大の理由では無いかと思います。

ベルはどうして野獣に惹かれたのか

単なる美女と野獣のオマージュをやりたかっただけなんでしょ?
と言うひとがいらっしゃいましたが、それはぶっちゃけナンセンスです。
この映画を見て、それしか感想が出てこないなら
おそらくこの映画が、今ある欠点を埋めていたとしても
その人には何も得るものはなかったでしょうね・・笑

某ネズミさんの美女と野獣は「恋愛」とか「本質を見抜く力」とか
そういったメッセージ性があると思います。

今回ベルが竜に何度も会いに行った理由。
あれは、恋では無いと思います。
その証拠にベルが何度も竜に会いに行く描写と同じくらい
何度も出てきた描写があります。

すずの母が、名も知らぬ少女を助けに行くシーンです。

つまり、母娘の繋がりをここに見出すことが出来なければ
この映画の良さはたぶんわからないと思います。

ベル、もといすずは竜の痛みに共鳴し
潜在的に助けたいと思って会いに行っていたと思います。
あくまで私の感想であり、私の願望でもありますが
その行動は、ただ損得勘定なく
ただただすずの「助けたい」
の気持ちだけであったと思います。(思いたい)

「U」という何度でもやり直せる救いの仮想現実で
すずはあの日の母の思いを知るのです。


冒頭のすずの台詞に
「なぜお母さんは名前も知らない子を助けに行ったのか。なぜ私と生きることを選んでくれなかったのか。」
というのがありました。

すずは「なぜ」と言いながら、同じ状況に直面したとき
知らずしらずの内に母と同じ選択をし
その時初めて「あのときの母の気持ち」を知るのです。


’臆病だった私の気持ちを解き放ってくれた’
現実世界の竜とやっと出会えたとき、竜にすずはこう言います。

母との最期の記憶で蓋をしてしまっていた自分を
竜を救うことで、救って上げることが出来た
この事実に気づけないと、たぶん最後の方のシーンの
すずが素顔で歌うところは、何も響かないただの歌うシーンに成り下がってしまうと思います。笑


すずを見守る優しすぎる現実世界

すずは母のいなくなった世界から「U 」に救いを求めますが
私はすずを見守る現実世界の登場人物も
実は全員優しすぎる、と思っています。笑

これはコロナ禍の今だからですか?
細田さんのメッセージ?笑
勘ぐりたくなるくらいには優しい。

説明が不足しすぎているせいで、すずと幼馴染のしのぶくんの
素敵な関係性にも中盤は気づきにくいし
母の友人である合唱団おばさまーず(勝手に命名)の
すずを見守る優しさにも気づきにくい。

ああ!もったいない!笑
こういうところ!!こういうもったいないところ多かった!笑

すずはちゃんと「U」に行かなくたって
守られて、助けられて、救われていたのです。
特にお父さん。
母を助けられなかったお父さんが
黙って東京に竜を助けに行くすずを、よく快く送り出したとは思いませんか?笑
実は父ちゃんが一番苦しいのではなかろうか、とさえ思う。

最後にすずは、父との愛もしっかり取り戻します。
そこが一番泣けた。父ちゃんに感情移入して。笑

声優陣の豪華さと「幾田りら」の驚異

私、この映画いつものごとくノー予備知識で行ったので
声優陣がこんなに豪華だという言うことを知りませんでした。
しのぶくんが成田凌なのはわかった。
イケメンみたいな気だるい喋り方は、ありゃ成田や。笑
あと染谷のわざとバカっぽくしゃべる感じもわかりやすかった。

問題は竜と、すずの友人のヒロちゃん。

まず竜。
あれ佐藤健なのね?みんな知ってた???
私知らなったし、最後のエンドロールで見るまで
気づきもしなかったよ。

ドラマとか映画とか、顔が出るやつは
いかにも「佐藤健でっせ〜」みたいな演技しかしないくせに
声優になると馬鹿うまくね?
うまいというか、良い意味で佐藤健ってわかんない演技だった。

あんなのもできるんだね。笑

あと一番ビックリしたのが「幾田りら」ちゃん。
YOASOBIの子だよね?おばさんよく知らんけども。笑
え、あの子歌手だよね?歌だけ歌う子よね?
演技とかしてないよね????

うますぎやない?????

これから演技とか女優もすりゃいいのに!!
って思うくらいには上手だった。


あと言わずもがな、すず役の中村佳穂さん?
の歌と演技は最高だった。
中村さんの歌がなければ、この映画はもっと大ゴケしてると思うし
そもそも成り立ってないと思う。
「人の心を震わせる歌」ってはじめから設定が決まっていて歌わなきゃいけないってどんなプレッシャーだろうね。
「現実」でしかない自分の声を、ファンタジーにしていくってどんな作業なんだろう。
想像しうる限りコワイよね。
私ならチビる。
中村さん、これまで存じ上げませんでしたけどもすごい人になりそう。
しらんけど。笑


ホントはもっと言いたいことある!
アニメーションって、実写より表情筋とかの表現できるモノが
選択肢として削られる分、繊細な人の心の機微って
実は描きにくいと思うんだけど。
それを両立させるためなのか、台詞のテンポ感?
キャラ同士の会話のテンポ感が、ちょっと違和感あった。
半拍ズレてる感じ?がした・・
これは私の勝手な思い込みかもしれないけど。笑

とかとか。

書きたいこといっぱいあるけど
すでに激長なのでこのへんで。
ぶっちゃけ金ローでやると思うから
1800円も払って見なくてもいいと思う。

でもこぞって、低俗に批判するほど
浅い映画でもなかったぞって話でした!





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