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ものかきのおかしみと哀しみ

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2020年9月の記事一覧

信頼できる書き手は「声」を聴ける

信頼できる書き手は「声」を聴ける

苦しい文章と苦しくない文章がある。書いてても読んでてもね。

じゃあ、その文章はどこから生まれるのか。そんなの書き手の中からでしょと思うかもしれない。

たしかに文章生成的なAIを使ってなければ、書いてる人の中から生まれる。のだけど、そうやって生まれる文章にも息ができてるのと、息が上手くできてないのがあって。

息が上手くできてない文章は、なんていうか文章そのものの呼吸が浅い気がする。読むのもちょ

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深夜3時にガラスの棒を

深夜3時にガラスの棒を

深夜3時にガラスの棒を持って歩き回ったことがあるだろうか? 僕はある。

すごく不条理だったので忘れたいのだけど忘れられない。一度、不燃ごみの日に出したのだけど回収されずに戻ってきた。

それ以来、ずっと僕の記憶の片隅に転がっている。どこにも持ち出せずに。



僕が大邸宅で働いている。きっと家事代行サービスとか、もっとオーソドックスに住み込みのお手伝いさんをやっているのだろう。

ちょっとした

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独りわらしべ長者

独りわらしべ長者

こんな日なので頭の中をよぎった短い話。

一本のなんてことのない藁(わら)が、偶然出会った人びととの物々交換によって次第に高価なものに変わっていく。

2020年代のいまでも、なんとなく「わらしべ長者」の話は生きている。

これって不思議な気もする。昔話ではあるのだけど、完全に「昔の話だね」という感じでもない。

たとえば「鶴の恩返し」みたいに、これが現代でリアルになったらと想像すると、ちょっとサ

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フライパンで靴が焼ける少女

フライパンで靴が焼ける少女

謎の一言メモが発掘された。

あれこれ錯綜して時間が溶けだすとこういう事案が多発する。本人も意味がわからない。本当に自分が書いたメモなのか疑惑すら湧く。

《フライパンで靴が焼ける》

そりゃ、フライパンで靴を焼こうと思えば焼けるだろう。良い子はまねしないほうがいいけど。いや、そういうことじゃない。

いくらなんでも僕だってフライパンで靴を焼いたりはしないし、その必要性もメリットもない。だとしたら

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無責任って悪いことばかりじゃないよ

無責任って悪いことばかりじゃないよ

自分って責任感は強いんだろうか、それともふつうレベルなのかもしかしたら弱くらいなのか。

責任感を測る体組成計みたいなのを使ったことがないのでわからない。

いやもしかしたらあるのかもしれない。責任感のインピーダンス。

瓶に入ったピーナッツバターをちゃんと最後まで使い切るくらいの責任感はあるのだけど、きっとたぶんそういうのは責任感とは呼ばない。

けど、なんでもいまは測定してスコアリングできてし

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楽しいが迷子になってる

楽しいが迷子になってる

秋は自省的になる。マルクス・アウレリウスの季節だ。

いや、そんな高貴なものじゃない。もうずっと自分の中で決着も付かず、放置したままになってる話。

「楽しい」がわからないんだ。

Are you nuts? この人、ほんとに大丈夫か? と思われること必至な案件なのはわかってるけど。端的に言えば、楽しいがずっと迷子になってる。

「あ、いま楽しいんだろうな」というのはある。べつにずっと難しい顔して

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呑み書き二日酔いリターンズ

呑み書き二日酔いリターンズ

正直に告白すると、僕はリアルで二日酔いになったことがない。

そんなふうに言うとめちゃくちゃお酒強い人みたいになりそうだけど、そんなことはない。弱くもないけど強いの自覚もない。というか、なんでお酒の基準だけ「強い弱い」なんだろ。

コーラが強い人とか弱い人とかあってもよさそうなのに、あまり聞かない。俺、コーラ弱くてさ、呑みすぎるとだいたい記憶失くすんだよねー、とか言ってる人いたらそれはそれで怖いけ

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ハードボイルドなヤギから話がある #呑みながら書きました

ハードボイルドなヤギから話がある #呑みながら書きました

早いな。猛@一年か。男は薄暗がりの路地で独りごちた。うっかりハード彫り都度、ハードボイルドのテイストで書きはじめてしまった。

もう説明不要だと覆うけど、ここは例のnote野街に年に数回だけ扉が開かれる「呑み書き酒場」。俺はすっかり上ン連になっちまった。浄蓮。あまぎ声、天城越えじゃないぜ。

そう。第1回から気づいたらずっと入り浸ってるというわけさ。

この前、店主のマリーナにも言われたけど、俺は

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山とごきぶりホイホイには勝てない

山とごきぶりホイホイには勝てない

山を眺めるのが好きだ。

まあ、いまの仕事環境は視線を画面から外せば山が見えるから、好きでもそうでなくても視界には飛び込んでくるのだけど。

山を眺めていて見飽きるってことがない。不思議なことに。

べつにすごく山岳マニアというわけでもなく、ほうじ茶ラテ好きですねーというのと同じぐらいの感覚で山を愛でている。お茶と一緒にするな。

なんで山を眺めるのか。単純に癒されるからというのもあるけど、なんて

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エレベーターボーイ

エレベーターボーイ

エレベーターに乗って1週間が過ぎた。

またおかしなこと言ってると思われるかもしれない。何の比喩、あるいはメタファーなのかと。

そうじゃない、ただふつうに上昇するエレベーターで過ごしている。

このnoteだってエレベーターの中で書いている。もちろん、最初からではない。誰も好き好んでエレベーターで一日過ごしたい人はいないと思う。たぶん。

例の禍が少しだけ薄まって、久しぶりにあるクライアントのオ

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中野ブロードウェイで牛肉を

中野ブロードウェイで牛肉を

朝、歯を磨きながら、ふと思った。中野ブロードウェイで牛肉を買いたい。そうだ、今日は肉豆腐を食べよう。

肉豆腐とすき焼きはマイナーな部活とインターハイ常連の部活みたいだ。僕はなんとなく肉豆腐のほうに呼ばれる人生だった。

出掛けるために早速、着替える。

中野ブロードウェイに行くには、それに相応しい服装というのがある。これでも、服には気を使う。スーツとかトレッキングウェアだと、やはりなんか変だ。違

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素敵な商品と交換しませんか?

素敵な商品と交換しませんか?

一年経てばいろんなことが変わる。

散々、いろんな人が言ってるけど一年前の夏の終わりだか秋の初めに、一年後がこんなふうになってるとは思わない。変わり過ぎの一年。

なんだけど、思ったほど変わってないなということもある。

メール文化もそうだ。出版業界はなぜか伝統的にメールをよく使う。TwitterのDMでもSNSやチャットツールのメッセージでもなくインターネットのメール。

いや、プロジェクト系の

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