文月 楓

ファンタジー、児童文学でわくわく、ドキドキ、ときめきたい! 日常を忘れて、物語の世界に…

文月 楓

ファンタジー、児童文学でわくわく、ドキドキ、ときめきたい! 日常を忘れて、物語の世界に入り込む、その瞬間が大好き!そして、その本が人生の大事な心の支えになることも。いつか自分もそんな小説を書きたい!そう思い、2024年3月に初めて物語を書きました。よろしくお願いします。

マガジン

  • 魔女の旅立ち

    一人の魔女が旅立つことになる経緯を書きました。 3部作です。 日常を忘れてわくわくドキドキしていただけたら幸いです。

  • カヤの秘密の冒険

    小学生の女の子の小さな冒険を書きました。 3部作です。 児童文学、ファンタジーが好きな人におすすめ! 日常から離れてドキドキわくわくしていただけたら幸いです。

最近の記事

【短編小説】魔女の弟子になりたくて第十話

リリーは師匠を送りに「あちらの世界」につづくドアの前まで来た。 「じゃ、お茶、ごちそうさま。たまには連絡ちょうだいね」 「田中さんから近況報告は入ってるんじゃないですか?」 「もう、あなたから聞きたいのよ」 師匠はまた「じゃ」と言って、ドアに手をかけたが、振り返りリリーを見た。 「花菜ちゃんの弟子の件、あなたの好きになさい」 ずっと弟子をとれと言っていたのにどうしたのだろう。 「色々心配したけど大丈夫みたいだから」 師匠はにこやかに笑った。 「大丈夫ですよ」

    • 【短編小説】魔女の弟子になりたくて第九話

      リリーはおかわりのカモミールティーをカップに注いだ。 あのこと。リリーが師匠の家を破壊してしまったこと。 師匠にとってあの家は旦那さんと息子さんとの思い出が詰まった大事な家だった。それをリリーが破壊してしまった。 「ちがいますよ」 リリーはカモミールティーが入ったカップを口に運んだ。香りを肺いっぱいに満たす。 「ねぇ、ゆり。私あなたがあの家壊してくれて感謝してるのよ」 リリーは目を見開いた。そんなわけがない。あの家は師匠にとって思い出が詰まった大切な宝物だ。 知っ

      • 【短編小説】魔女の弟子になりたくて第八話

        https://note.com/fumiduki_kaede_/n/n5fbc38ad4521 リリーは師匠を調合室に案内した。 まさか、このタイミングで師匠が来ると思わなかった。 (田中さんの悪いクセだ) 花菜の前にパートでお手伝いに来てくれていた田中さんは、良くも悪くもおせっかいをやく。基本的には助かるがこうしていらないおせっかいもやいてくれる。 きっと師匠には今の状況が筒抜けになっているだろう。 師匠には適当に座ってもらい、リリーはカモミールティーを入れている

        • 【短編小説】魔女の弟子になりたくて第七話

          花菜は、血の気が引くというのはこういうことだと思った。 自分の全身の血液が、温度をなくしたかのようだった。 それなのに、心臓だけはドクドク脈打っている。 冷たい汗が噴き出る。 「ねぇ、私も話にまぜてよ、人の家で何話してたの?」 「ご、ごめんなさい」 花菜の肺は空気を入れることを拒否しているように息がちゃんとできなかったが、かろうじて謝罪の言葉が口から出た。 「アッシュ」 呼ばれたアッシュは固まっている。 「なに勝手に人のこと話してるの?」 「ごめん」 いつもの

        【短編小説】魔女の弟子になりたくて第十話

        マガジン

        • 魔女の旅立ち
          3本
        • カヤの秘密の冒険
          3本

        記事

          【短編小説】魔女の弟子になりたくて第六話

          アッシュの後について、花菜は店と調合室がつながる廊下にきた。 「ここ」 アッシュが止まったのは、廊下に飾ってある大きな百合の絵の前。 「この絵に何かあるの?」 「ついてきな」 そういうと、アッシュは絵に向かっていった。 そして、アッシュが消えた。 「え!?」 花菜は何が起きたかわからず、その場で固まってしまった。 (絵の中に消えた??) どうしたらいいかわからず、そこに立ちすくんでいると、絵の中からひょこっとアッシュの顔だけが出てきた。 「おい、早くしろ

          【短編小説】魔女の弟子になりたくて第六話

          【短編小説】魔女の弟子になりたくて第五話

          https://note.com/fumiduki_kaede_/n/n4aa8ae427386 魔法薬店のアルバイトを始めて、1ヶ月が経とうとしていた。 アルバイトはかなりの重労働だった。 雑草のような草たちを刈り取り、乾燥させたり、すりつぶしたり、何かの液体に漬けたり。日によってはそれが木の実だったり、花だったりした。 植物の日はまだいい。それが、ナメクジだったり、ダンゴムシだったり、イモリやヘビなど虫や爬虫類のときがあった。 花菜は小さいころ父の仕事に連れられ、

          【短編小説】魔女の弟子になりたくて第五話

          【短編小説】魔女の弟子になりたくて第四話

          https://note.com/fumiduki_kaede_/n/n38de37531ac3 花菜は黒猫に付いて行き、カウンターの横の入り口から店の奥に入っていった。 中には廊下があり、左の壁には人の身長ほどある百合の絵が、豪華な額縁に入って飾られていた。 黒猫は絵には目もくれず、廊下をまっすぐ進んでいく。いくつかドアがあったが、黒猫は一つの真っ赤なドアの前で止まった。 「リリーがお待ちだぜ」 リリーとは店の名前と一緒なのでたぶん店主のことだろう。 花菜はどうすれば

          【短編小説】魔女の弟子になりたくて第四話

          【短編小説】魔女の弟子になりたくて第三話

          https://note.com/fumiduki_kaede_/n/nfddcbd2fcd1f 面接当日になった。 結局、昨夜はなかなか寝付けなかった。 それでもやっぱりやめようと思わなかったのは、もしかすると本物かもしれないという期待を捨てられなかったからだ。 (おかしいと思ったらすぐに逃げればいい) そう、自分に言い聞かした。 面接は学校が終わってからだ。 授業が終わって、急いで帰りの支度をした。 そのとき、同じクラスの男子が声をかけてきた。 「花菜さん、こ

          【短編小説】魔女の弟子になりたくて第三話

          【短編小説】魔女の弟子になりたくて第二話

          「魔法薬店 調合手伝い等 未経験可」をクリックすると他の求人票と同じ様式の求人票が出てきた。 魔法薬店 Lily(リリー) 魔法薬店 調合手伝い等 未経験可 職種    魔法薬調合手伝い、薬草収穫、店番(接客有)、掃除、他 勤務時間  1日3時間からOK       薬草収穫期は残業をお願いするかもしれません 給与    時給1,100円(研修期間は1,000円) 勤務地   ○○駅徒歩15分 職場環境  裏庭があります 四季を感じられる職場です       猫がいます(

          【短編小説】魔女の弟子になりたくて第二話

          【短編小説】魔女の弟子になりたくて第一話

          「あぁ、もう、失敗した」 花菜(はな)は自分のベッドに倒れこんだ。 高校入学して2週間がたった。 花菜はこの春、高校デビューをした。 花菜は自他共に認める本の虫。特にファンタジー、空想の世界が大好きであった。 中学時代は休み時間のほとんどを読書に費やし、アッという間に三年間 が終わってしまった。 花菜自身はそれで充分幸せだった。 空想の世界に浸って、たまに幼稚園から一緒の気心知れた子たちに、その話がどんなによかったか熱弁している時間が、何より充実していると感じていた。友

          【短編小説】魔女の弟子になりたくて第一話

          魔女の旅立ち(3)3,746文字

          もう、何を言っているのかわからない。 非現実的な話に頭が痛くなってきた。 アビゲールは自分を落ち着かせるためにお茶を飲んだ。 ウォルター卿は、黙ってこちらを見ている。 その真剣なまなざしは、嘘を言っているようには見えなかった。 「その計画を聞く前に、なんで王太子が私に協力求めているのかしら?」 ウォルター卿の顔が一気に明るくなった。 「それは王太子殿下があなたを気に入っていらっしゃるからです」 またしても、初耳の情報が入ってきた。 王太子とは接点がなかったはず。なの

          魔女の旅立ち(3)3,746文字

          魔女の旅立ち(2)3,034文字

          ベケット卿が帰って、アビゲールはウォルター卿と呼ばれた赤い騎士と二人になった。 「悪いけど、もてなす気にはなれないわ」 「かまいません。私は、野宿に慣れているので」 アビゲールは本当に野宿する気か聞こうか迷ったが、騎士とは言え、見知らぬ者を家に入れるのは抵抗があった。 「そう」 と、言って自分だけ家に入ってしまった。 (どうしよう) 気丈にふるまっていたが、心の中は大騒ぎしていた。いったい何が起きているのアビゲールにはわからなかった。 (とりあえず落ち着かなく

          魔女の旅立ち(2)3,034文字

          魔女の旅立ち(1)2,642文字

          アビゲールは、今日摘んできた薬草の処理をしていた。 ここ数日暖かい日が続き、森には薬になる草たちがぐんぐん伸びていた。 アビゲールは町から少し離れた森の中に一人で暮らしていた。 こうして、森に生えている薬草を摘み、薬を作っている。 町に売りに行ったり、町から買い付けに来たりするので、町の人との交流はあった。 しかし、町には住まず、森の中に暮らしていた。 森に住んでいるほうが、こうして薬草を摘むのにも楽だし、自分の魔法が失敗して周りの家に被害が出ることもない。 アビゲー

          魔女の旅立ち(1)2,642文字

          カヤの秘密の冒険(3)2,284文字

          二人はドングリを拾いながら、コリンの家に向かった。 カヤはドングリ拾いに夢中になっていた。 家の近くだと小さなドングリしか落ちてないし、こんなにいろんな種類のドングリは見たことがなかった。 大きいもの、小さいもの。 まるいもの、細くとがったもの。 よく見るとドングリの帽子の模様がどれも違う。 そのたびにコリンがドングリ博士になって、ドングリの説明を始めるが、カヤはドングリの種類はどうでもよかった。 ただ、このつるつる輝いているドングリたちを集めることに夢中になっていた。

          カヤの秘密の冒険(3)2,284文字

          カヤの秘密の冒険(2)1,861文字

          カヤは森の中を進んでいった。 周りを見渡して不安になってきた。 最初は平地だと思っていたが、斜面がある。 (おばあちゃんの裏山に似てる。もしかして、山なのかな?) カヤが知る限り、近所にこんなに大きな山はない。 それに車の音や人の声が聞こえない。 聞こえてくるのは木のこすれる音と鳥や虫のさえずりだけ。 (どうしよう。戻ろうかな?) そう思ったとき、前に何かが飛び出してきた。 「わっ!」 「わっ!」 飛び出してきた者も驚きの声を上げた。 カヤは飛び出してきた者

          カヤの秘密の冒険(2)1,861文字

          カヤの秘密の冒険(1)1,293文字

          「近くの公園で遊んでくる」 カヤは家を出るとき、お母さんにそう言って出かけた。 でも、近くの公園には行かなかった。 今日は一人で行ったことのない公園に行くつもりだった。 「大丈夫、それほど遠くには行かない。車で通ったときに見たあの公園に行くだけ」 そう自分に言い聞かせた。 お母さんは、そこの公園は踏切を越えないといけないから、一人で行くことを許してくれなかった。 「今度、お母さんと一緒に行きましょう」 と、いつも言われるけど、その今度はずっと来ない。 カヤはちらっ

          カヤの秘密の冒険(1)1,293文字