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3度の倒産危機の救世主は「AI×在庫」だった!在庫分析というニッチなSaaSに参入した理由と現在の事業内容とは?

フルカイテン戦略広報の斉藤です。在庫分析SaaS「FULL KAITEN」を開発・販売するフルカイテンはどんな会社なのか知っていただきたくて、このnoteを書いています。FULL KAITENは小売業が抱える在庫を利益に変えるお手伝いをしています。
先日、FULL KAITEN導入企業の導入当初のデータを分析したところ、「在庫全体のたった2割で粗利の8割を生み出している」という衝撃的な事実が判明しました。

データについてのプレスリリースはこちらです。

在庫全体の2割で8割の粗利を作っているなら、残りの8割はセールや廃棄になる可能性が高いですよね?アパレルロスの発生源はここにあり、この8割の在庫からしっかり粗利を生み出すことがFULL KAITENの存在意義です。

今回は、FULL KAITENが在庫に着目した理由と、従来型の在庫分析手法の問題点などを交え、現在の事業についてお話しします。

フルカイテンが在庫分析に着目した理由

なぜフルカイテンは在庫分析というニッチな分野でSaaS事業を始めたのか。それは、創業者でありCEOの瀬川が、会社員をやめベビー服のECで起業した際、在庫が原因で3度の倒産危機を経験したからです。この危機を乗り越える過程でFULL KAITENは生まれました。詳しくはこちらのnoteでお話ししています。

瀬川はこの壮絶な体験から、在庫は小売業の勝敗を決める最も本質的な要素だと学びました。

そして、小売業界、特にアパレル業界が長年抱える課題に気づきました。それは、在庫を増やせば売上は増えるが、それに比例して在庫も増えて在庫過多になり資金繰りに問題が出るという在庫問題です。特にアパレル業界は売り逃しを嫌い、仕入れが多くなる傾向があるので、余剰在庫を抱えやすいビジネスといえます。

しかし、単純に在庫を減らすだけでは売上は落ち、資金繰りに窮することになります。このように売上と在庫のバランスを取るのは非常に難しく、在庫過多を許容する企業は多いです。

しかも、この問題はおよそ30年もの間解決されないまま放置されています。
粗利経営_中編でも話したように、日本は戦後の高度経済成長期に大量生産と大量消費により成長し、増収増益を重ねた結果、一億総中流社会になりました。それが90年代初頭から、バブル崩壊、人口減少、高齢化などの影響を受けて市場が縮小していきました。

市場の変化に対応して解決への試みがなかったわけではありませんが、小売業界は市場が拡大していた時代の在庫分析手法の延長線上で解決を試みていたので、在庫問題を解決できていませんでした。縮小市場に適した今までと全く異なる在庫分析手法を見つけなければ、売上と在庫のバランスを取ることは難しいということです。

ところで、現在のアパレル小売業の在庫状況はどうなっていると思いますか?
FULL KAITEN導入企業の導入時点のデータを分析したところ、衝撃的な事実が判明しました。
なんと全商品のたった2割で粗利の8割を生み出していたのです。残りの8割が粗利を生み出せていないのは、縮小市場に適した在庫分析手法がとられていないからであり、FULL KAITENの在庫分析手法ならこの8割からこれまで以上の粗利を生み出すことが可能です。

この8割の在庫をFULL KAITENは独自の在庫分析テクノロジーで分析し、これまでより沢山の売上や粗利を生み出せる状態を「在庫効率が向上した状態」と当社は呼んでいます。
余計な値引きや廃棄を防ぎ、今ある在庫で粗利を生み出すことがFULL KAITENの存在意義です。

このあたりの話は粗利経営というテーマで以下のnoteで前編・中編・後編の3部作に分けてお話ししています。縮小市場の実態、そこで勝ち抜くための戦略について解像度高く説明しました。

従来型の在庫分析手法の問題点

前章では、小売業界は市場が拡大していた時代の在庫分析手法の延長線上で在庫問題の解決を試みているため、未だに縮小市場に合った在庫分析手法を見つけられていないとお話ししました。ここからは従来型の在庫分析手法の問題点についてお話しします。

戦後から高度経済成長期の拡大市場時代は、商品の9割が定価で売れたので在庫を持つこと自体が戦略でした。なので抱えた在庫が消化されたかどうかを見れば分析完了でした。具体的な指標としては、在庫消化率や在庫回転率や交差比率(粗利益率×商品回転率で求められる販売効率を見る指標)などです。これらは全て結果を表す指標であり、拡大市場時代は結果の確認をしておくだけで十分だったということです

しかし現在のようなモノ余りの縮小市場時代は、商品の4割5割ほどしか定価で売れず、在庫を持つことはもはや戦略とは言えません。今は在庫を効率よく利益に変えられるかが最重要なので、在庫消化率や在庫回転率や交差比率のような拡大市場時代に使っていた結果に過ぎない指標を見ても意味がありません。なぜなら、結果に過ぎない指標を見たところで過去に戻ることはできず、在庫を効率よく利益に変えることはできないからです。

これからの在庫分析手法とは

ここからはFULL KAITENの分析の元になっている考え方についてお話しします。

前章のように、結果だけ見ればよかった拡大市場時代は分析が非常に楽でした。このような結果に過ぎない指標のことを遅行指標と呼びます。
今は縮小市場なので在庫を効率よく利益に変える必要があり、そのためには遅行指標で結果を確かめるような従来型のアプローチでは常に手遅れになります。例えば、算数の試験で50点だったので点数を上げたい場合、50点は結果に過ぎない遅行指標なので今更見ても点数は上がりません。試験は既に終わっているからです。

縮小市場時代は売上、粗利、消化率などの結果が出る前に、先んじて様々な対策を取ることで結果の数値(粗利)を増やせるような指標を見なければなりません。結果の数値を改善するためには、結果に対して影響を及ぼす指標を決めて改善する必要があります。そのような結果に対して影響を及ぼす指標のことを先行指標と呼びます。
先ほど例に出した算数の点数の話でいうと、点数を伸ばしたいなら50点という結果(遅行指標)ではなく、「算数の勉強時間を増やす」という未来の指標が先行指標にあたります。算数の勉強時間を増やすから、次の試験の点数を改善できるわけです。

遅行指標と先行指標の違い

先行指標を設定していないと、手がかりなしに結果(遅行指標)を変えようという話になるので改善できません。
ですが、先行指標を設定すると結果が出る前にさまざまな手がかりを見て戦略を立てることができ、大きな課題に対して段階的に改善することができます。

もう一つ、分析する際に重要な考え方があります。それは、在庫を「売れる」「売れない」の二択だけで判断しないことです。
どういうことかというと、在庫は「売れる」「売れない」の二択ではなく、その中間の「グラデーション」の部分があるということです。

中間の商品の在庫リスクをたどっていくと、ほとんどが元々は売れ筋商品だったということに気づきます。新商品が次々に登場することで、せっかく売れ筋だった商品の販促が手薄になり中間の状態に落ちていくのです。これらは販促が手薄になっただけですので商品力はあります。しかし、多くの小売業はこの中間の商品(グラデーション)を明確に把握できていないため、販促をテコ入れすることができません。だから期末に余計な値引きをして無理矢理お金に変えるようなことが横行しているのです。
前述のように「残り8割の在庫」から利益を生み出せていないというのはまさにこのことを指します。

FULL KAITENの凄いところ

FULL KAITENは、「残り8割の在庫」から粗利を生み出すという価値を提供することができます。代表の瀬川がベビー服事業を行っていた時の、在庫が原因の三度の倒産危機を乗り越える過程で、在庫を効率よく利益に変えるためのさまざまな分析手法を開発したのが始まりです。そしてその分析手法を小売事業の日々の業務の中で利用できるように業界で初めてソフトウェア化し、クラウドサービスとして提供し始めました。
これまで実務担当者が見落としていた「残り8割の在庫」を使った販促で売上や粗利を200%増加させたり、仕入れを増やすのではなく不要な値引きの抑制で年換算およそ1億円の粗利を生み出したりといった成果を出しています。
前述の通り、小売企業がこのような販売力を身につけることができればこれまでより少ない在庫で業績を向上させられるようになります。

フルカイテンは今後も多くの企業にFULL KAITENを導入いただき、一社でも多くの企業が少ない在庫で業績を向上させられるように変革を成功に導くことで、大量生産の抑制とフルカイテンのミッションである「世界の大量廃棄問題の解決」を実現します。

FULL KAITENとは

ここからはFULL KAITENはどんな製品なのかお話しします。

FULL KAITENは小売企業の在庫を利益に変える各種機能を提供しているクラウドサービスです。「プロパー消化率の向上」「不要な値引きを抑制」「客単価を向上」「欠品による機会損失を避ける」などの機能は、どれも在庫効率を向上させ、売上・粗利・キャッシュフローを増加させるのに有効です。

「月曜の朝イチに使われる在庫分析クラウド」というコンセプトで、現在6つの機能を提供しています。主要な機能は以下の通りです。

クオリティ分析
売上や粗利益の増加を目的に、プロパー販売が可能な商品、値引きを抑制できる商品、セールすべき商品のリストアップが可能。

単価分析
売上や粗利益の増加を目的に、客単価向上に貢献する商品のリストアップが可能。

ディストリビュート分析
売上や粗利益の増加を目的に、倉庫から店舗、店舗から倉庫または店舗から店舗の最適な在庫移動数の自動算出が可能。

追加発注
売上や粗利益の増加を目的に、売れ筋商品の欠品を防ぐための追加発注数量の自動算出が可能。

機能の詳細はこちらをご覧ください。

需要予測SaaSの事業化を見据える

現在のFULL KAITENは、在庫分析に特化したSaaSをサプライチェーンの川下(小売業、SPA)に提供しています。2021年はFULL KAITEN導入企業の累計総額で3000億円を超える売上データが蓄積されました。現在もエンタープライズ企業の導入実績が増え続けているため、2022年度には7000億円、2023年度には1兆円を超える見通しです。
今後はこのデータを使って業界や業種ごとに生産量を最適化するための需要予測SaaS事業を立ち上げ、サプライチェーンの川中に位置するメーカーや商社に対して提供していく計画です。業界ごとに重要予測SaaSを立ち上げますので事業の幅はますます広がりますし、「世界の大量廃棄問題を解決する」というミッション達成のために海外への展開も狙っています。

ちなみに、Amazonや楽天が保有する売上データはあくまでAmazonや楽天内でのものですが、FULL KAITENは、小売業の多様な販路の売上データを保有している点が強みです。Amazonや楽天が出品社の他販路のデータを得ることは不可能だからです。以上のことからも、FULL KAITENは多様な販路の売上や在庫のデータをビックデータとして在庫プラットフォームに蓄積し続けているので、精度の高い需要予測を実現できると分かります。

FULL KAITEN導入企業の成果

最後に成果事例も紹介します。

メンズアパレルA社では、VMD変更の為に打ち出し商品の選定をFULL KAITENで行いました。結果的に230万円近い売上増加に寄与しました。この企業では、これまで各店舗が独自にVMDを変更していましたが、今回の施策ではFULL KAITENのBetter在庫から上位10品番を選定し、売り場のVMDを変更したことで大きな成果に繋がりました。

レディースアパレル・雑貨ECのB社では、在庫削減施策として特集ページに載せる商品をFULL KAITENを使って選定しました。分析には2つのリストを使用しました。具体的には、22SSを対象にしたリストからBetter在庫の売上貢献度上位30FKUを選定するリスト、22SSを除く過去品番を対象にBestとBetter在庫の売上貢献度上位30FKUを選定するリストです。この2つのリストを分析し、施策を実施しなかった場合の在庫削減額予測値に対して、セールにて削減できた在庫金額(原価×販売数)が、何もしなかった場合の予測と比べて7倍でした。これにより在庫削減に大きく寄与するという定量的な成果を出しました。

上記の成果からも、FULL KAITENを導入した企業は、全在庫の残り8割の在庫から売上や粗利を生み出しており、そのような価値を提供するために、FULL KAITENはあらゆる販路の売上データや在庫データを日々蓄積しています。そのようなデータが蓄積すれば、社会問題の解決を実現できると信じて、これからもテクノロジーの力で社会の変革に挑戦し続けます。

編集後記

FULL KAITEN導入企業の導入当初のデータを分析したところ、在庫全体のたった2割で粗利の8割を生み出しているというお話をしました。私は以前生活用品メーカーに勤めていた際に、一部の売れ筋があるのは普通のことだと思っていました。ですが、8割の商品が利益を生まず、値下げするしかない状況のまま、商品数を増やすと不良在庫が更に増える事が想像されます。もし利益を生む8割と利益を生まない8割を選べるとしたら、当然利益を生む8割を選択すると思います。

FULL KAITENは「残り8割の在庫」を使った販促で売上や粗利を200%増加させたり、仕入れを増やさず不要な値引きの抑制で年換算およそ1億円の粗利を生み出しています。
今ある在庫で業績を向上できれば、経営自体もサステナブルに変革できます。

現在当社は在庫分析SaaS事業を行いながら、需要予測SaaS事業化に向けて、売上や在庫に関するビックデータを毎日蓄積しています。これができれば、必要なものが必要な量だけ流通する社会が実現し、フルカイテンのミッションである世界の大量廃棄問題の解決の大きな一歩になります。

フルカイテンの事業の広がりにも注目していてください。
ここまで読んでくださってありがとうございました。


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