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(後編)粗利経営への変革が国内市場に起こす変化とは?フルカイテンCEO瀬川に聞きました。

フルカイテン戦略広報の斉藤です。在庫分析SaaS「FULL KAITEN」を開発・販売するフルカイテンはどんな会社なのか知っていただきたくて、このnoteを書いています。当社が重要性を唱え続けている「粗利経営」について前編・中編・後編に分けてお話ししています。今回は後編として、粗利経営への変革が国内市場に起こす変化について代表の瀬川に聞きました。

粗利経営の後編を迎え、一層熱が入るCEO瀬川

前回のおさらい

中編では、粗利経営は日本の未来にも重要な理由をお話ししました。

小売業にこれから起こる課題は「縮小均衡」であり、その理由は仕入れ抑制で売り物が減り、不採算店舗の撤退で売り場を減らしても、会社としての儲ける力、言い換えれば利益を生み出す力はコロナ前と変わっていないからだというお話でした。

加えて、粗利経営への変革は日本の市場環境の変化という観点でも不可欠です。日本の市場変化(大量生産は価値を失っている)と市場縮小(人口減少、高齢化)からも分かるように、小売業界が在庫の物量で勝負する戦いを選択するのは論理が破綻しています。

上記からも分かるように、粗利経営への変革は日本の小売業界にとって待ったなしのテーマだとお話ししました。

今回は、粗利経営への変革が国内市場に起こす変化について紐解いていきます。

5年後10年後の国内小売市場で起きる二極化の正体

大量生産が価値を失い人口減少と高齢化が加速する日本において、この先5年10年を見通すと売上第一主義(売上を重視する企業)と粗利第一主義(粗利を重視する企業)とではどのような差が生まれるのでしょうか。

それは2つの二極化です。

企業の業績が二極化する

残念ですが、今後も売上第一を続ける会社は価格競争の激化で苦しみ、次の①~③のことが起きます。

①資金力のある大企業に淘汰される
人口減少と高齢化が加速する縮小市場で価格競争に挑むと、資金力のある大企業に淘汰されます。

②企業規模をさらに縮小しギリギリ存続する
だから経営を続ける為に事業規模を縮小し、ギリギリ存続する苦しい状況に陥るでしょう。

③M&Aや倒産もあり得る
最悪の場合、M&Aや倒産もあり得ます。価格競争は利益を圧迫し体力勝負となるため、資本の大きさがものを言う勝ち目のない戦いだからです。

一方で粗利第一に変革する会社は、以下に投資できるようになり、結果的に増益の好循環を生み出すでしょう。

①商品原価に投資し、付加価値の高い商品開発が可能になる
②店舗に投資し、付加価値の高い店舗開発が可能になる
③労働環境やITに投資し、生産性の高い労働が可能になる
④社員の教育や給与に投資し、優秀な社員を育てたり採用したりすることが可能になる

企業の人気が二極化する

売上第一を続ける企業は粗利を稼げなくなっていくため投資力が減衰し、その結果として社員は不幸せになります。
これは今後5年10年を考えると非常に重要なポイントになると思います。
中編でもお話ししたように、日本は生産年齢人口の減少と高齢化が進行しているため、更に働き手が減ることは明らかです。すると採用市場では人の取り合いが起こります。売上第一で商品、店舗、労働環境、人に投資できない企業に人は集まるでしょうか?

(商品)粗利が稼げないと商品原価に投資できないため、他社と同質化した商品しか開発できず、クリエイティブな人材が入社しません。商品が同質化すると、欲しい商品が欠品していても似たような商品を他社で購入できるようになるため、消費者は欠品で痛みを感じなくなります。だから「このブランドが好き」というブランド価値が生まれず、値段でしか違いを出せなくなってますます粗利を失うことになります。
ちなみに商品の同質化は既に起きていることでもあります。

(店舗)消費者との直接の接点である店舗に投資できないため、優秀な販売スタッフが入社しません。だから店舗の提供価値が埋没し消費者に満足やワクワクを提供できず、「このお店が好き」というブランド価値が生まれません。

(労働環境)労働環境やITに投資できないため業務負荷が高く属人化し、せっかく採用した人材がその企業でしか通用しない人材になってしまいます。他社でも通用する汎用的なスキルが身に付かない企業に就職したい人は少ないでしょう。

(人)社員の教育や給与に投資できないため、社員が一向に育たず優秀な社員の採用もできず、人数ばかり増やして凌ぐ事業モデルになってしまいます。価格競争が激化する中で人数が増えて固定費がアップするため、給与水準は下がり離職率は上がり、どんどん社員の質が落ちていきます。

一方で、粗利第一に変革する会社は商品、店舗、労働環境、人に投資ができ、社員が幸せを感じながら働くことができます。

(商品)商品原価に投資する企業は、他社と差別化を図った付加価値の高い商品を開発できるのでクリエイティブな社員が入社します。ちなみに付加価値を高めるために製造原価が多少上がるとしても、値引きや評価損で失っている粗利の方が遥かに大きいので(毎年セールなどで何十%もの値引きが行われている)、付加価値の高い商品を開発する方がずっと粗利貢献が高くなります。

(店舗)消費者との直接の接点である店舗に投資することで、「この店舗に行ってみたい!」と思えるような付加価値の高い売り場を作り、消費者の満足度やワクワクを高めることができます。そういう店舗で働きたい優秀な販売スタッフを採用できるようになります。

(労働環境)労働環境やITに投資することで働きやすい環境が整い、採用市場で人気が上がります。サステナビリティにも投資できるため、事業を通じて社会に貢献している実感が生まれ、社員が誇りを持てるようになります。

(人)社員の教育や給与に投資できるため、スキルが高まり増益の好循環が生まれます。
だから給与水準が上がり、社員が定着し、さらに採用市場での人気が上がります。

つまり、5年後10年後の生き残る小売企業は、粗利経営に変革し商品、店舗、労働環境、人に投資する企業なのです。
そしてそういう企業は増益の好循環を生み出し、社員を幸せにする投資ができるようになり、その結果優秀な社員を採用できるようになって、更なる増益の連鎖を生み出すようになります。売上第一を続ける企業との差はますます開いていくことになるでしょう。

最後に、ここまでの説明をまとめたいと思います。

今は10年に一度の大きなチャンス

粗利経営_中編では、小売業が仕入れ抑制と不採算店舗の撤退を実施することで粗利率と営業利益が改善をするのは当たり前で、今は新たな課題に直面していることを認識すべきという話をしました。
仕入れ抑制で売り物が減り、不採算店舗の撤退で売り場を減らしても、変わっていないのは会社としての儲ける力、言い換えれば利益を生み出す力です。

売り物と売り場が減り、儲ける力は変わっていない状態。
ということはこれから起きる課題は業績の縮小均衡です。

この課題を解決する考え方こそが、「NewRetail経営」です。前章までで触れてきた粗利第一を実践する経営を弊社では「NewRetail経営」と呼んでいます。これには、このコロナ禍を10年に一度のビジネスチャンスとして捉えるという視点が含まれています。

これまでの話をまとめ、NewRetail経営の全体像を表現したのが上記の図です。

一番の根幹は粗利経営への変革です。この変革はビジネスモデルでいうと、仕入れの抑制、固定費の抑制、そして絶対に欠かせない要素として前述の「儲ける力」を身に付けることです。この3つが揃うと増益効果が生まれます。生まれた増益効果を次は投資に回します。具体的には、商品開発、サステナビリティ、店舗開発、組織環境やIT、給与や教育などです。今挙げたこと以外にも、各社、独自の投資が生まれるかもしれません。

このような投資をすると、社員の幸せを生み出すことができます。これによって会社にとっては、採用の競争力が抜群に上がると思います。離職率が下がり定着して働いてもらえると、企業として高い生存力が生まれます。だからまた粗利経営が進んでいくというサイクルを回せるようになることがNewRetail経営の姿です。

NewRetail経営の姿を身振りを交え、力説するCEO瀬川

とはいえ、こんなに分かりやすい小売の未来が見えているにもかかわらず、様子見する企業が大半でしょう。逆に言うと、ここで粗利経営に変革する企業は生き残れる可能性が高いということです。様子見を決め込んだ企業は、想像以上の市場縮小の荒波の中で自然に淘汰されて消えていくでしょう。

つまり、今は粗利経営に変革する企業が一人勝ちできる10年に1度のビジネスチャンスです。

粗利経営への変革に成功する企業が増えれば、少ない在庫で業績を向上させられる企業が増えます。
それは大量生産の抑制に繋がり、ひいては大量廃棄問題の解決にも繋がっていきます。

編集後記

今回は粗利経営について前編・中編・後編に分けてお話ししました。粗利経営は、企業の経営を持続可能にするだけでなく、日本の未来や地球の問題である大量生産・大量廃棄の解決にも密接にかかわっていることが分かりました。
長編となりましたが、これからの企業経営と地球にとって間違いなく重要なお話であると自負しています。

一社でも多くの企業にNewRetail経営を知っていただき、まずは小さなことから行動を起こすきっかけになればと思います。フルカイテンは今後も粗利経営について発信し続けます。

ここまで読んでくださってありがとうございます。


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