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(中編)粗利経営は日本の未来にも重要な理由とは?フルカイテンCEO瀬川に聞きました。

フルカイテン戦略広報の斉藤です。在庫分析SaaS「FULL KAITEN」を開発・販売するフルカイテンはどんな会社なのか知っていただきたくて、このnoteを書いています。前回から当社が重要性を唱え続けている「粗利経営」について前編・中編・後編に分けてお話ししています。

今回は中編として、粗利経営は日本の未来にも重要な理由をCEOの瀬川に聞きました。

CEOの瀬川。今回も気合が入っています。

前回のおさらい

前編では、フルカイテンのミッション(世界の大量廃棄問題を解決する)実現のためには粗利経営が欠かせない理由を代表の瀬川に聞きました。その中で、FULL KAITENを導入した企業の導入時点のデータを分析すると、全商品のたった2割で8割の粗利を生み出しているというお話をしました。2割は手をかけなくても自然と売れるので、残りの8割こそが企業が見落としがちな大きな課題です。この8割からできるだけ多くの粗利を生み出せるように、在庫効率を向上させましょうという経営スタイルのことを粗利経営と呼びます。

今回は、粗利経営への変革は日本の小売業界や未来にとっても生き残りのカギになるぐらい重要なテーマだというお話をします。

企業にこれから起こる課題は「縮小均衡」

当社は、2020年から粗利経営の重要性をウェビナーやメディア露出の度に発信し続けています。当時はごく一部の企業が共感している状態でしたが、最近、粗利経営への変革を目指す企業が増えてきました。

コロナ渦で、各社とも仕入れ抑制と不採算店舗の撤退を行い、粗利率の改善と営業利益の改善が起きてV字回復をしたというニュースが散見されました。当社が発表した調査レポートはこちらです。

ですが、仕入れ抑制で粗利率が改善するのは値引きと評価損が減るのだから当たり前で、不採算店舗の撤退で営業利益が改善するのも固定費が下がるのだから当たり前のことです。

むしろ今は新たな課題に直面していることを認識すべきだと私は考えています。
仕入れ抑制で売り物が減り、不採算店舗の撤退で売り場が減ったわけですよね。変わっていないのは会社としての儲ける力、言い換えれば利益を生み出す力です。
売り物と売り場が減り、儲ける力は変わっていない状態。
ということはこれから起きる課題は業績の縮小均衡です。

大いに語るCEO瀬川

V字回復しているとは言っても黒字化までできた企業はまだ多くなく、今はまだ業績を伸ばさなければいけない状況です。
そんな中で儲ける力だけはコロナ前後で変わっていない。
ということは業績を伸ばすにはまた生産量を増やして仕入れを増やすしかなく、それを売るための売り場も増やす必要が出てきます。
これではまたコロナ前のあの在庫過多に逆戻りなわけです。

しかし在庫の量を減らす方が利益は増えることをコロナで経験しましたよね。
だからその路線は継続する必要があります。
しかしどうすれば良いのかわからない。
これが今まさに小売業やSPAが直面している課題です。

フルカイテンはこの課題を解決します。
粗利経営_前編で説明したように、粗利の8割は全商品のたった2割程度から生まれています。FULL KAITENは残りの8割の在庫から今までは生み出せなかった粗利を生み出すことで在庫の効率を上げ、経営を粗利体質に変革することができるのです。

在庫効率が上がって儲ける力がつけば、もうこれまでのような在庫量は不要になりますよね。だからサプライチェーンの川中に位置するメーカーや商社への発注量は減っていきます。
こうして大量生産がサプライチェーン全体で抑制され、結果として大量廃棄も解消に向かうのです。

コロナを経てこのような問題意識を持ち始めた企業が増えてきており、フルカイテンには毎月たくさんのエンタープライズ企業から問い合わせが来ています。
小売業やSPAは今本当に大きな潮目を迎えていると感じます。これから小売市場の粗利経営への変革をきっかけにして、サプライチェーンは大きく変わっていくと思いますよ。

市場環境を見ても粗利経営への変革は必須

ここまでの章で、コロナがきっかけで各社が粗利経営の重要性に気づき始めたという話をしました。実は粗利経営への変革は、日本の市場環境の変化という観点でも不可欠なことです。ここからは日本の市場変化と市場縮小の2つの観点から、粗利経営への舵切りが喫緊の課題であることをお話しします。

<市場変化>大量生産から付加価値へ

戦後から高度成長期は、モノ不足により消費者は物質的な豊かさを求めました。つまり大量消費がニーズ化したということです。このような市場が成長していた時代は、在庫を持てば売上も利益も増える時代だったので在庫を持つこと自体が戦略でした。だから、大量生産が価値を生みました。

しかし一億総中流社会になったことを機に日本はモノ余りの時代になりました。現在の日本は価値観が多様化した時代だと言われますが、それは物質的な豊かさが満たされたことによって消費者のニーズが多様化したという意味です。物質的な豊かさがニーズではなくなったということは、もはや大量消費はニーズを失い大量生産は価値を生まなくなったということです。
このような大きな市場環境の変化が起きたにもかかわらず、日本の小売業界は物質的な豊かさを追い求めていた時代と同じ拡大市場向けの大量生産を今も採り続けています。消費者は細かなニーズに応えてくれる商品を求めているのですから、大量生産を続けたところで売れ残るため価格競争が激化していくのは当然です。日本のデフレ要因はこういうところにもあります。

皆さんは買い物に行って、欲しいものが店頭になかったら、他の店にある類似品を購入した経験はありませんか?

これは大量生産で製造原価を下げすぎたことにより商品の付加価値を作れず、どの店に行っても同じような商品が並ぶという商品の同質化が起きているからです。この事実から分かることは、もはや消費者は欠品で痛みを感じていないということです。そうであるにも関わらず、売り手である小売業やSPAは欠品を売上機会損失だと捉える拡大市場時代の考えを変えずに大量生産を続けているのですから、そういう意味でも価格競争で利益を生み出せなくなるのは当然なのです。

まだまだ語るCEO瀬川

今のようなモノ余りの時代は、他社と差別化できる付加価値の高い商品を開発することや、「この店舗に行ってみたい!」と思えるような付加価値の高い売り場を作ること、優秀なスタッフが働きやすい環境を整えることが企業としての競争力の源泉になります。そしてそのための投資を増やすには粗利をしっかり稼げるようになる必要があるのです。

大量生産を続けて価格競争に突入し粗利を失っていく戦いは、これとは全く正反対の戦い方です。大量生産を強みとして在庫の物量で勝負する時代はもう終わりました。言い換えれば、在庫の物量を確保して売上第一を標榜する時代は終わったということです。

今の時代は多様化した消費者ニーズに応えるために付加価値で勝負する時代です。
前述の通り、付加価値で勝負するためには粗利の増加は欠かせません。
日本の小売業界にとって、粗利経営への変革は生き残りのためにも必須なのです。

<市場縮小>人口減少と高齢化

次に市場縮小の観点でも粗利経営の必要性を説明したいと思います。
日本は人口減少と高齢化が並行して進み市場規模の縮小が続いていますが、在庫の物量ありきの大量生産型ビジネスを続ける企業が多いのが実情です。これを2つの観点でお話しします。

1.人口減少
人口動態の統計データによると、この数年間で毎年60万人以上の人口減少が続いています。これは鳥取県の人口とほぼ同程度ですので、毎年日本から鳥取県がなくなっているのだと考えるとそのインパクトをイメージできるのではないでしょうか。また2025年を境に、人口減少は毎年100万人前後に加速することが同じく人口動態の統計データからわかっています。これは政令指定都市が毎年一つずつ減るイメージです。この規模の人口減少がおよそ50年程度続くと言われています。そして2030年には、1400万人も人口減少が進むと言われており、これは九州と同程度の人口にあたります。

※人口動態の統計データは、出生率や死亡率というほぼ変動しない数字で算出するため、最も信用できる統計と言われています。過去もほぼ統計通りに推移しています。

2.高齢化
人口構成比は、0〜14歳(若年層)12%、15〜64歳(生産年齢人口)60%、65歳〜(高齢者)28%です。若年層の割合が最も低く、出生率は1.37と最低水準です。
生産年齢人口は、消費を生み出しお金を稼ぎお金を使う人々を指します。日本は生産年齢人口の比率が高いため高齢者が増え、逆に若年層の比率が低いため生産年齢人口が増えにくい構造になっています。また出生率が低いため若年層が増えにくく、国全体が年老いていくことになります。
ちなみに2024年を境に、団塊の世代といわれる人口比率が高い人々が、全員75歳の後期高齢者になります。既に進んでいる高齢化は、ここから加速していきます。

ここまで見てきたように、人口の減少と高齢化が同時に進んでいるのが日本の現状です。

ただでさえ消費支出はこれまでも月に数万円レベルで下落しているのに、生産年齢人口の人々にとっては高齢化が加速したら社会保障支出や介護支出が確実に増えるので、消費できるお金がさらに少なくなっていく。
それが人口減少を伴いながら起きるわけなので、日本の消費力は想像もつかないぐらい落ちていくはずです。当然ながら、企業の粗利率が向上しない限り、働く人のお給料が上がらないのでこの負のスパイラルは続きます。そうすると消費力も落ち続けるわけですから、企業経営はどんどん先細りになっていくでしょう。

余談ですが、国の経済力を表す指標としてよく使われる一人当たりGDPは数年以内に韓国に抜かれる水準まで落ちてきており、10年20年のスパンで見ればマレーシアやインドネシアにも抜かれ、日本の経済力は途上国と同じ水準に転落する恐れすらあります。

このように人口減少と高齢化が進む日本において、小売業界が在庫の物量で勝負する戦いを選択するのは論理が破綻しています。

市場規模の縮小が加速し、しかも消費力も下落していく中でそのような戦いをすれば、少ない消費者の小さな財布を巡って価格競争が激化するだけであり、勝つのはごく一部の資金力のある大企業だけということになります。
やはり日本の小売業界は在庫の物量ではなく、消費者の多様化したニーズに応える付加価値勝負をする必要があります。
そして付加価値で勝負するためには粗利の増加は欠かせません。

以上のことから、日本の小売業界にとって粗利経営への変革は待ったなしのテーマだということがわかるのではないでしょうか。

後編では、粗利経営への変革が国内市場に起こす変化をテーマにお話しします。

ここまで読んでくださってありがとうございます。

後編につづく

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