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マイナス金利政策解除!金利が上昇すると地方銀行が復活する理由~現役銀行員がわかりやすく解説~

2024年3月19日、日銀はマイナス金利政策の解除を発表しました。銀行関係者からは、この決定を歓迎する声が多く聞かれています。
「金利が上がると、地方銀行の業績は回復する」と言われていますが、その理由は何でしょうか?
本noteでは、どの新聞よりも「超わかりやすく」、その理由について解説してみたいと思います。

≪ご注意≫
本稿の内容は、私の所属する株式会社西日本フィナンシャルホールディングス、株式会社西日本シティ銀行の公式な見解ではなく、私の個人的な見解です。また、金融商品・サービスの案内や営利を目的としたものではありません。

地方銀行の株価は、1年間で大きくUP

2013年から続いたマイナス金利政策ですが、10年以上経過し、ついに解除されました。
この間、特に中小の金融機関は、収益の面で大きく苦しめられました。
しかしながら、この1年間で、地方銀行の株価は下記の通り大きく上昇しています。これは、マーケットからの地銀の業績回復に対する期待の表れと考えられます。

●7186 コンコルディア・フィナンシャルグループ(横浜銀行他)
 23/03/31 488円 → 24/03/22 799.5円(約1.64倍)
●8354 ふくおかフィナンシャルグループ(福岡銀行他)
 23/03/31 2,549円 → 24/03/22 4,193円(約1.64倍)
●7189 西日本フィナンシャルホールディングス(西日本シティ銀行他)
 23/03/31 1,088円 → 24/03/22 1,983円(約1.82倍)

Yahoo!ファイナンス

まずは、銀行の「儲け」の仕組みを理解

銀行の収益は、手数料によるものもありますが、基本的には「お金を低い金利で預けていただいて、そのお金を高い金利で貸し出す」ことで得られています。
下のグラフの通り、かつては平均2%で預金を預けていいただき、平均5%で貸し出している時代がありました。このケースでは、銀行の儲け(いわゆる「利ざや」)は約3%ということになります。
では、足元の金利はどうでしょうか?預金金利はほぼ0%ですが、貸出金利は多くの銀行で平均1%を切る事態となってしましました。この場合、銀行の儲けは約1%ということになります。
もともと3%あった儲けが1%になった、すなわち儲けが3分の1になったということです。 

銀行の利ざやは大きく縮小!

預金金利にマイナスはつけられない!?

貸出金利が下がった分と同じだけ預金金利を下げることができれば、銀行は儲けを維持することができました。しかし、預金金利はマイナスにはできないのです・・・。だって、みなさんの預金、銀行に置くだけで手数料を取られたりしたら、誰も預金しなくなっちゃいますもんね。いわゆるタンス預金が増えるだけの結果になってしまいます。

銀行はどうやって難局を乗り切った?

こうした苦しい状況を乗り切るため、銀行は2つのことを行いました。

1つ目は、貸出金の量を増やすということです。
利ざやが縮小しても、預金と貸出金をバランスよく増加させることで、収益をカバーしようとしたのです。結果として下のグラフの通り、銀行の貸出金はこの10年で大きく増加しています。
貸出金が増えたのは、銀行の努力によるところもありますが、不動産価格の上昇等も追い風となりました。
わかりやすい例でいうと、個人のお客さまの一番大きな借入である住宅ローン。当行のお客さまの平均借入額は、土地や建築価格が高騰したことにより、10年前の約1.5倍に膨らんでいます。

銀行の貸出金残高は10年で約33%増加!

2つ目は、手数料ビジネスを強化するということです。
NISAのテレビCM、最近増えましたよね。投資信託や保険商品をお客さまに買っていただくことで、手数料収入を増やそうとしているのです。
また、人材紹介やコンサルティングといった手法で、法人のお客さまからの手数料収入につなげようとする動きも活発化しています。

貸出金の金利は、すぐに上がるのか?

預金金利は4月から20倍!?

マイナス金利政策の解除を受けて、大手銀行や地方銀行の一部は、普通預金の金利を0.001%から0.020%へ引き上げることを発表しました。新聞紙面では「金利20倍!」などと騒がれていますが、これには少し注意が必要です。
では、実際に100万円を1年間預けた場合を例に、試算してみましょう。

<100万円を1年間普通預金に置いた場合の利息>
①金利0.001%の場合
 100万円×0.001%×(1-20.315%)=7円
②金利0.020%の場合
 100万円×0.020%×(1-20.315%)=159円

いかがですか?確かに金利は20倍なのですが・・・。100万円預けても、1年後は缶ジュース1本分の利息にしかなりません。しかも、利息には税金が20.315%かかっています。

貸出金金利はすぐには上がらない見通し

多くの銀行で貸出金の基準金利にしているのが「短期プライムレート」と呼ばれる金利です。実は、この「短期プライムレート」、マイナス金利が導入されたときに、「もう、これ以上は無理・・・」ってことで、各銀行は「短期プライムレート」の引き下げを行いませんでした。

従って、今回の金利引き上げに伴って、既存の借入金の金利が引き上げられる可能性は低いと考えています。

日銀総裁の記者会見では、「次の金利引き上げはいつなのか」に焦点を当てた質問が多かったですが、おそらく半年後から1年後の間くらいになるのではないでしょうか?その時までに、心の準備が必要といえます。

まとめ

地方銀行の株価が上昇しているのは、金利上昇により、利ざや(貸出金と預金の金利差)が拡大することで、業績の回復が見込まれると考えている投資家が多いことが理由と考えられます。

これまで、銀行は手数料ビジネスなどにも注力してきましたが、今後は企業の設備投資ニーズの拡大なども見込まれており、本来の貸出金ビジネスにより注力することになります。

最近は、地銀の就職人気には陰りが見えていました。しかし、これからは、金利上昇とともに明るい未来が拓けると信じています。地銀の行員のみなさん、そしてこれから就職されるみなさん、地域の発展に向けて力を発揮するときです。ともに頑張っていきましょう!


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