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「3分プレゼン」を磨いて、一流を目指せ!~銀行の「マーケティング」と「営業企画」の教科書~

先日、デジタル部門やIT部門の業務を半年間経験した若手行員(10名)が、1人3分プレゼンする場に立ち会いました。

執行役員以下、経営幹部を前にプレゼンテーション…、入行当時の私なら緊張で卒倒してしまったことでしょう。

それにしても、Z世代のみなさんのプレゼンスキルの高さ、堂々とした話しぶりには、本当に驚かされます。
一方で、ちょっとしたコツを掴めば、もっと素晴らしいプレゼンになるのにもったいないなとも感じました。

本noteでは、「3分プレゼン」のポイントやコツについて、お話ししてみたいと思います。


プレゼンテーションは本部行員の必須スキル

「新しいアイデアを出し、基礎分析を行い、正しい文書でわかりやすい資料作成を行い、プレゼンテーションができるスキル」
これが本部企画担当者の必須スキルです。

本部行員のみなさんは、各種会議での案件説明、外部パートナー企業へのオリエンテーション、営業店行員向け研修、お客さま向けセミナー等、さまざまな場面でプレゼンテーションを要求されます。

どんなに優れた商品・サービスを企画しても、聞き手にわかりやすく、正確に伝わらなければその目的を達成することはできません。従って、積極的にプレゼンテーションの経験を積みながら、その技術を磨いていく努力は欠かせないのです。

プレゼンの基本「結論をはじめに」「大きな声で」「文章は短く」

私が若い頃に、上司に教わったプレゼンの基本は次の3点です。この3点を押さえるだけでも、「普通のプレゼン」が「伝わりやすいプレゼン」に様変わりします。

① 結論をはじめに

家族や友達との日常会話では、「A→B→C、だからD」といった会話をしがちです。しかし、プレゼンテーションや上司への報告は、これではNG。
プレゼンや報告では、「Dである→理由はC→例えばB」という順番で話を展開していきます。

<NG例>
「○○部に伊東くんって優秀な若手行員がいるんだけどさぁ、上司があまり相談に乗ってくれないって不満を言ってたんだよなぁ。それで1年目からビズリーチに登録してたみたいでさ、ついに○○チュアに転職が決まったらしいんだよね。やっぱり、1on1とかちゃんとやっておかないとダメだよね。」

<わかりやすい展開例>
この会話をビジネスのプレゼンに置き換えるとどうなるでしょうか。
「若手行員の離職防止のためには、上司による1on1が不可欠です。なぜなら、若手行員は、上司が自分の悩みを傾聴してくれないことを一番不満に感じているからです。先日も、○○部の伊東さんが退職しました。その背景には、こうした上司の傾聴の姿勢に問題があったようです。」

いかがですか?わかりやすさがアップしましたね。同時に、言いたいことが先にわかるので、忙しい聞き手もイライラせずに済みます。

② 大きな声で

同じ内容でも、「大きな声でハキハキとプレゼンする場合」と「小さな声で自信なさそうに発言する場合」では、聞き手の受け止め方は全然違ってきます。
例え、自信がない場合であっても、プロフェッショナルとしては、自信がありそうに振る舞うことが求められるのです。
「会場の一番遠くにいる人に自分の声を届ける」意識を持って、普段よりも少し大きな声でハキハキとプレゼンを行いましょう。

③ 文章は短く

ときどき、長――い文章で、プレゼンをしてしまう人がいますが、できるだけ短い文章をつなぐのがプレゼンの鉄則です。

これは、政治家の演説が非常に参考になります。
「郵政民営化に賛成か?反対か?」
「もう一度、国民に聞いてみたい」
「自民党をぶっ壊す」
いずれも、小泉首相の語録です。

また、Youtubeにアップされている、近畿大学卒業式のプレゼンタイトルも秀逸です。
「情報を集めて行動せよ」(堀江 貴文氏)
「人生に失敗など存在しない」(西野 亮廣氏)
「欲望を開放しろ、環境にこだわれ」(本田 圭祐氏)
「大切なことは失敗から立ち上がること」(安倍 晋三氏)
「バッドエンドはない、僕達は途中だ」(又吉 直樹氏)

いかがですか?短い文章は印象・記憶に残りやすいですよね。
尚、「キーメッセージ」は13文字以内が望ましいとされています。

3分プレゼンのポイント

ここまで、すべてのプレゼンに共通する基本的な事項について説明してきました。ここからは3分でプレゼンの注意すべき点を説明していきます。

① メッセージは、聞き手が聞きたいこと1つに絞る

3分という長さ、プレゼン経験の少ない方は長いと感じるかもしれませんが、実は1つ以上のことを話すのは非常に難解な長さです。

冒頭に書いた若手行員のプレゼン会のお題は、「①経験したこと、②学んだこと、③今後の目標についてプレゼンせよ」でした。
実はすべてを、3分で説明するのは、はじめから無理がありました。
結果的に半分以上の人が「①経験したこと」を中心に話をしてしまい、時間が足りなくなっていました。

では、どこに焦点を絞ってプレゼンを行うべきだったのでしょうか?

答えは、「②学んだこと」です。
焦点を絞るには、「聞き手の興味・関心、あるいは聞き手のメリットを想像すること」が大切です。今回、参加した「聞き手」は経営幹部の人達。彼らが聞きたい話はどんな話だったでしょうか?
おそらく、「どんな経験をしたか」よりも、「その経験から何を学び、どのような行動変容があったか」ではないでしょうか。

外部の研修に参加した後、上司に「研修、どうだった?」と聞かれて、みなさんはどう答えますか?
研修の内容を詳しく答えてしまった方、残念ながら不正解。
上司が聞きたいことを想像すると、「その研修から、何を学び、今後どう仕事に活かしていくのか」ではないでしょうか。

また、3分のプレゼンでは、前置きは一切必要ありません。いきなり本題から入ることを心がけてください。

② 「PREP法」を意識する

PREP法とは、「まず結論を述べ、その結論に至った理由と具体例を説明し、最後にもう一度結論を伝える」プレゼン方法のことです。
このPREP法を意識した文章構成を行うことで、要点が伝わりやすく、内容に説得力が生まれます。

PREP法の流れ

では、「PREP法」の流れを見てみましょう。

Point :結論
「プレゼンの基本」でも述べた通り、はじめに結論を明確にします。
例)若手行員の離職防止には1on1が重要である。

Reason :理由
その結論に至った理由を明らかにします。
例)若手行員の不満の1位は、上司が傾聴してくれないことである。

Example:具体例
できるだけ具体的な事象を挙げます。
例)伊東くんの退職は、上司が傾聴してくれなかったことが一因である。

Point :結論
もう一度、結論を繰り返します。
例)1on1を制度化することで、若手行員の離職防止につながるのではないか。

ポイントとなるのは、「Example:具体例」です。ここが抜け落ちてしまっているプレゼンが多いのですが、話に説得力を持たせるためには、できるだけ具体的な話を盛り込むことが重要です。

さて、今回聞かせてもらった若手行員のプレゼンの事例では、「自身が変化した話」を盛り込むのがベストだした。「今までAと考えていたが、経験を積んでBと考えるようになった」「今までAの視点しかもっていなかったが、BやCの視点でも思考できるようになった」上司が聞きたかったのは、そんな話だったはずです。

③ 必ずロープレする/絶対に時間を守る

大事なプレゼンの前には、必ず練習が必要です。かなりのベテラン社員の方も、ここぞというときは、事前にロープレを行っています。大事なお客さまの前でプレゼンするときは、自分でしっかり練習したうえで、先輩行員にもロープレを聞いてもらうようにしましょう。自分では気が付けなかった気づきがあるはずです。

そして、もう一つ大事なことは、与えられた時間を絶対に守ること。どんなに素晴らしいプレゼンも時間をオーバーしてしまっては台無しになってしまいます。時間感覚を持ち、他人の時間を奪わない配慮が必要。そのためにも練習は不可欠なのです。

伝家の宝刀!レトリカル・クエスチョン

最後にとっておきの裏技をみなさんに伝授したいと思います。
それは「レトリカル・クエスチョン」と呼ばれるものです。
これをプレゼンで使いこなせるようになると、みなさんのプレゼンレベルは数倍上がります。

「レトリカル・クエスチョン」とは、「答えを求めない質問」のことを言います。

では、先ほどの1on1の例でちょっとやってみましょう。

「伊東さんが退職に至った理由は、1つではないと思います。しかし、もしも、上司がしっかり伊東さんと向き合っていれば(間)、5分でも(間)、10分でも(間)、会話する時間が持てていれば(間)、伊東さんが退職に至ることはなかったのではないでしょうか?(間)」

いかがですか?単に「1on1が大切だ」と述べるよりも、説得力が増しませんか?

「レトリカル・クエスチョン」が難しければ、単に「クエスチョン」でも構いません。プレゼンの中で、「?」を付けて相手に投げかけることで、ぐっと聴衆を引き付けることができるのです。

そして、もう一つ大事なのは、クエスチョンの後に、「間」を入れること。聞き手に考えさせる「間」を与えることで、その効果をさらに高めることができます。

おわりに

今回は、銀行の本部行員に必須のスキル「プレゼンテーション」について、基本的なことを説明しました。
プレゼンを上達させるには、やはり場数をこなすことが重要です。失敗を恐れず、たくさん経験を積み重ね、ともに成長していきましょう。


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