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認知症予防の秘訣と新たなアプローチ

「日本における認知症の高齢者人口の将来推計に関する研究」の推計では、65歳以上の認知症患者数は2020年に約602万人、2025年には約675万人(有病率18.5%)と5.4人に1人程度が認知症になると予測されています。

また厚生労働省は認知症患者のおよそ67%がアルツハイマー型認知症と推定しています。
『H25.5 都市部における認知症有病率と認知症の生活機能障害への対応』

脳血管性認知症はラクナ梗塞と言われる小さな脳梗塞が多発することで発症することが多いです。脳梗塞が原因であるため、予防としては脳梗塞の原因である、糖尿病や脂質異常症などの生活習慣病の予防やコントロールが重要です。

脳血管性認知症は予防の方法が比較的わかりやすいですが、問題は一番多いアルツハイマー型認知症です。

一般的にアルツハイマー型認知症のは、徐々に進行して、記憶ななくなったり、自分のことができなくなって、薬で進行を抑えることはできるが、基本的に治ることはない。というイメージだと思います。

そのイメージが定着してしまう程、アルツハイマー型認知症に対する対処法や治療法、予防法についてはあまり語られることがないのが現状です。


今回は上記の本を参考に、アルツハイマー病についての新しい知見や予防法、治療法について勉強していきたいと思います。


まずアルツハイマー病の原因としてよく名前を聞く、『アミロイドβ』についてみていきましょう。

アミロイドβが脳に沈着することによりアルツハイマー病を発症することはよく知られていますが、なぜ脳にアミロイドβが沈着するのかは長い間解明されていなかったそうです。

しかし最近は研究が進み、その理由が脳の正常な防御反応によるものということがわかってきたようです。

脳にとっての脅威である、炎症、栄養不足、毒素にさらされると、脳は防御本能としてアミロイドβを沈着させていくということです。

つまりアミロイドβが沈着しないようにするためには、炎症を終息させ、栄養不足を改善し、毒素の軽減やスムーズな排泄を促すことが重要であるということです。


ではそのためには生活の上でどのようなことに注意すればいいのでしょうか。

この本では33の方法として紹介されていますが、私が重要だと思うものをいくつか紹介します。

①食事の中の加工食品の割合を1割以下にする
加工食品をさける理由はやはり食品添加物です。それ自体も身体によくないですが、血液や血管の状態を悪化させ脳や心臓の病気を招く可能性があります。
もちろん便利で保存ができるというメリットもあるため、生活の中では欠かせない存在になっていると思いますが、人体への影響を知って、生活の中での調整を行いましょう。

②揚げ物を控える
揚げたり、焦げたりする可能性のある調理法では、酸化ストレスや炎症を引き起こすAGE(終末糖化産物)が多く含まれています。それ自体が脳への悪影響となりますし、それ以外にも油の中にはトランス脂肪酸などが含まれており、特に脳の海馬という記憶を司る領域に影響が出る可能性が高くなります。

③砂糖や人工甘味料を避ける
糖や甘さには色々な種類があります。
砂糖に限らず、果物の食べすぎなども注意が必要です。
高血糖の状態は中性脂肪の増加や炎症を引き起こしやすくなるため、脳にとってはあまりいい状態ではありません。
また人工甘味料は糖尿病の前段階である耐糖能異常が起こりやすくなります。
食品の成分表を見た時に、スクラロースやアステルパーム、サッカリンなどが添加されている場合は過剰摂取に注意しましょう。

④小麦製品は最小限に
食事を簡単に済まそうとすると、パンや麺などの小麦製品が多くなる傾向にあります。
小麦製品の過剰摂取により、腸内環境が悪化し、リーキーガット症候群(腸漏れ症候群)という状態になる可能性が高くなります。この状態は体内に炎症がある場合などは特に注意が必要で、本来吸収してはいけないものを吸収してしまい、血液や臓器に運ばれ、その場所で炎症を起こしやすくなります。
腸のバリア機能が低下するということは、脳のバリア機能も低下することになります。そして腸を状態を整えることは脳の状態を整えることに繋がります。その一部として小麦製品の過剰摂取には注意が必要です。

⑤亜鉛の摂取を意識する
亜鉛は体内で重要な役割を果たす微量元素であり、脳の機能や神経系の健康にも関与しています。
また亜鉛は鉛や水銀といった有害な重金属の毒性を弱める効果があるそうです。カキや牛や豚の赤身に多く含まれます。
亜鉛の不足と認知機能の低下は注目されているため今後の研究にも期待されています。
当院ではワタナベオイスターというサプリメントがありますので、興味のある方は診察時にご相談ください。



⑥化粧品や、制汗剤、殺虫スプレー、農薬、除草剤などに注意する
化粧品などにはケミカル成分(化学的な成分)が多く含まれており、毒素の蓄積が懸念されています。制汗剤も同様です。

また殺虫剤、農薬、除草剤なども虫が嫌うだけあって、身体に良いものではありません。身体に触れない、体内に入れないが理想です。しかし現代社会ではすべてを排除することは難しいため、まずはできるところから気を付けていきましょう。

⑦心を穏やかに喜びや楽しさを感じる生活を送る
心を穏やかにするためには、仕事や家庭などの環境面の影響が大きいですが、対策としては瞑想や呼吸法などを使ったリラクゼーションがお勧めです。

趣味や余暇、人間関係など社会性の面では、定年後などに大きく環境が変化する場合があります。その時にうまく変化に順応できるかどうかも大事になってくると思います。

コミュニケーションや地域社会との接点をしっかり持っておくことも大切になりますので、意識していきましょう。


いかかでしょうか。

認知症に関してはまだまだ予防策や改善策があります。
今回すべて紹介することはできませんでしたが、薬だけではなく、むしろそれ以外の方が効果的であったりします。

認知症のことを正しく理解して、向き合うための知識をしっかり身に着けていきましょう。

ふくいクリニックでは物忘れ外来として、CT、MRIなどの最新機器を使用した検査や脳神経外科医の診察、更には運動療法や栄養療法、栄養指導なども取り入れて、治療を行っております。

地域の方々の日々の生活が少しでも豊かになるように今後も情報発信を続けていきます。