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新規事業創出の極意⑤幅広い知識と高度な専門性

今までに、民間企業、大学、NPOの立場で新規事業創出にそれぞれ携わってきました。個別の具体例は色々と問題になってしまいますが、折角の経験なので考え方などをまとめて欲しいと知人に勧められました。もちろん、公開可能な範囲の内容だけです。

前回は「説明力」と「説得力」について記事化しました。

5回目のテーマは「幅広い知識」と「高度な専門性」です。新規事業創出には、技術的な知識という観点では両者をバランスよく持ち合わせる必要があります。

知識に関する内容なので一朝一夕では改善しませんが、日々こういった考えを意識することで、気が付いたときには飛躍的に成長を実感できます。少しでもマインドセットを良い方向にシフトさせて、どんどん新規事業創出につなげていきましょう!

広く浅い知識は必要なのか?

敢えて聞くまでもない質問です、広い知識は当然必要です。
広い知識の全てに対して極めていくのは無理なので、まずは広く浅い知識で十分です。また、既存事業を担当している人よりも、新規事業担当者はアンテナを張り巡らせておく必要があります。

新規事業は、「既存のコア技術」を「新分野」に展開することも多いです。そうなると、自社技術の展開先を考える時の視野も広がりますし、技術の組み合わせも考えることができます。また、周辺領域の新しい技術情報を仕入れていると、どこかのタイミングで使えることもあります。

もう一つの利点として、常に新しい情報に敏感になっておくことで、習慣的に新しい情報に触れたり、考えることが習慣として身についていきます。

以前、脳の専門家の話を聞いた話によると、脳みそが新しいことを覚えられるのは多くて3つくらいだそうです。例えば、帰りにお店で買い物をして、レンタルビデオ屋にDVDを返却して、図書館に寄ってと、正直覚えていられるかが不安になります。確かにおっしゃる通りです。

一方、反射的にやっている作業は脳みそをほとんど使わないそうです。毎日帰りに買い物を続けていれば、何も考えなくても忘れないといった感じです。また、会社でいつも同じ作業をしているのも、この反射的にやる作業に該当します。特にあまり気にしなくても、忘れないという実感を持っている人も多いのではないでしょうか?

つまり、新しい情報を得たり、そこから何かを考えることをやり続けることで、習慣化されて、特に何も考えなくてもやるようになるのです。そうなったら、一段レベルアップです。無意識のうちに考えられるようになって新規事業を効率的に進められるようになると期待できます。

脳の働きについては一度ちゃんと整理して、どこかのnote記事でまとめます。

どうやったら幅広い知識を入手できるのか?

これには明快な回答はないです。
情報源はたくさんあるので自分なりに取捨選択をする必要があります。

もちろん色々な選択肢がありますが、まずは日経などの雑誌や業界の専門誌、新聞などで十分です。企画部門などは部署で購入しているものも多いと思います。それを時間を確保して読むことが大事です。また、最近ではデジタルで読み放題のサービスもあるので、比較的お金をかけずに情報を簡単に収集できます。

その程度の情報ではあまり意味がないということをいう人もいますが、新しい情報に常時触れていることで、幅広い知識が身いついた感覚になってきます。こういった感覚は大事です。そのポジティブな状況で自分を良い方向に導いてあげると効率的に進みます。

また、使えそうなネタはスキャナで取り込んでも良いですし、自分でワードに入力しても良いですが、何かしらの形で保存しておきます。後でそれを見直すこともあると思いますが、何よりも記憶に残ります。

このような記憶に残すという作業は非常に重要です。実際には非常にたくさんの情報が溢れてくるので、データとして保存してもどこに何があるのかが分からなくなります。しっかりとしたデータベースを作るのも一つの手ですが、私としては記憶に残すことを強くお勧めしたい。

やはり、自分で新事業の企画を考える時は、パソコンの中のデータベースを見て考えるというよりは、。あまり使えないと思っています。日常の打ち合わせや外部の講演会などで話を聞いていく中がインスピレーションが湧いてきます。そういったアイデアを大事に育て上げることで良質な新規事業のネタに繋がります。

また、情報源としては内閣府や経済産業省、環境省などの政府関係の情報も結構使えます。数年度の制度設計を公開しているので世の中がこういう方向に変わっていくのだというのを理解することができます。

国家レベルの制度設計には数年単位で考えていますので、長期的な視点で計画を考える際に参考になります。

専門知識はどの程度必要

幅広い知識と合わせて特定の分野で良いので深い専門知識も必要になってきます。それはそうですよね。そういった知識がなければ、論文を読んでも技術の有効性が分かりませんし、市場調査本を見ても判断が付きません。また、技術の有効性を判断する勘所も働きません。

もちろん、前述のように全ての分野の専門知識を極めることは不可能です。ただ、新規事業を企画する人にはそれなりのレベルで広い分野の知識を深めてもらいたいです。

ざっくりとしたイメージですが、技術的な専門性は大学の先生レベルの専門家と1時間位マンツーマンで議論できる程度が欲しいです。例えば、その先生の論文を読んで、ちょっと議論させてくださいと言って、二人で話し合えるレベルです。また、事業に関する内容も、自社の事業部の方と面と向かって議論できるレベルが好ましいです。

簡単に書いていますが、そのレベルまで達するには、優れた理解力や継続して勉強する忍耐力も必要となってきます。新規事業担当者は色々と迷走しがちなのですが、自分で時間を確保して勉強を続けていきましょう。

専門知識を深めるためには?

多少無理でもつらい環境に置くのが一番良いかと思っています。
強制的に勉強しないといけないようにしてしまうのです。

例えば、知りたい情報を持っているであろう専門家の大学などの先生を訪問するアポを取って、行くまでに必死に勉強します。それはもう必死ですよね。会社の経費を使っていきますし、向こうの時間も使うので、「何のために来たの?」って思われるようなことはできません。

それこそ、必死にその先生の論文を何本も読みますし、引用文献のリストも全て調べます。また、業界の動向や他の同業の研究者の研究内容も把握します。そうすると、その先生にも有益な情報を提供できるかもしれません。

また、自分が訪問したことで、その先生が新しい研究に着手するヒントが生まれるかも知れません。両者にwin-winの関係が築けたら、相手もこちらに良い印象を持ってくれるので、長く続く良好な信頼関係が作れるという副次的なメリットもあります。

単純に大学などの先生に時間を使ってもらって、場合によっては共同研究費を提供しますという程度ではもったいないです。自分が勉強する機会として積極的に活用して欲しい。勢いでも良いので、アポを取ってしまったらやるしかないですよね。

もちろん社内の専門家に対して同じやり方が通用します。特に同じ社内の人なの方が今後の人間関係や新しいアイデア創出につながる可能性も高いので、是非こういったやり方を試してください。ただ、社内だとなれ合いで適当になってしまわないことだけは、避けないといけません。

知識を新規事業創出につなげていくには?

どうしても専門知識が多くなると、それをベースに新規事業を考えていくという思考になりがちです。それではダメです。

一般的に新規事業は1000に3つせいこうすればOKと言われています。つまり、1000個の技術開発をしたら、3つくらいしか事業化しないということです。まあ、感覚的にもその程度だと思っています。

じゃあ、1000個の新規事業ネタを提案しないといけないのかというと、そうではないのです。社会のニーズに対して、その課題を解決できる技術を解決できそうな技術を1000個調べれば良いのです。そうすれば結構な確率で成功します。

そういったことを可能にするために幅広い知識が重要です。解決したい社会課題を見つけた時に、そのためのシーズ技術を探すというスタンスで進めましょう。

次回は「人間関係構築力」と「頼れる人の作り方」という観点で記事をまとめていきます。ご期待ください。また、Twitterも引き続き強化中ですので、是非宜しくお願いします。

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