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新規事業創出の極意②ビジョン構築と未来予測

新規事業創出に必要なスキルの連載記事の第2回です。

前回は新規事業が必要かという観点の記事を書きました。


今回は新規事業創出で必要な「ビジョン構築」と「未来予測」をまとめていきます。

ビジョンの重要性

既存事業と違って新規事業は特に「ビジョン」が重要です。
もちろん、既存事業にも「ビジョン」は必要ですが、先の見えない新規事業にとっては更にその重要度が増していると考えています。

では「ビジョン」はどうやって決めたら良いのでしょうか?

「ビジョン」には正解がないのですが、自分たちがどういったことを目指した活動をしているのを明確にする「言語」が必要です。その「言語」が「ビジョン」になるのです。また、そのメンバーたちが自分なりに、その「ビジョン」が腹落ちして納得感を持つことも合わせて大事です。

一方的にトップがこういったビジョンで進めるといっても、なかなか現場に浸透しません。多分、会議などで何度言っても無駄でしょう。トップと現場が互いに議論する中で微修正し、方向性を合わせていかないと形だけのものになってしまいます。

結局活動するのは現場の人たちなので、若い人たちが納得しないと組織全体のアクティビティが上がりません。

新規事業創出に向けたビジョン策定はどうすれば?

新規事業創出に向けた活動は、良くも悪くも毎日のように方向性が変わります。また、どういった方向に進めて良いのかを皆で迷走することも非常に多いです。そういったときに立ち止まって、我々がどういったことをしたいのかというビジョンと照らし合わせると道に迷わなくなります。

最も重要なことは相互理解です。

メンバーがどういった人で何を考えているのかをちゃんと理解しないと新規事業チームの運営は無理だと思います。また、直近の成果が見えてこない中で一緒に壁を乗り越えていく一体感も必要です。

最初の頃に徹底的に新規事業を担当しているメンバー同士で話し合って、方向性を決められるのが一番大事です。なかなか、こういった議論は発散して決まった方向性を決めるのは難しいですが、互いの考えを共有することが必要です。一回で無理なら時間を取ってでも何度も繰り返した方が良いです。

同様に隣の人がどういった感性で何を考えているのかが理解できることが大事ですよね。特に方向性が定めにくい新規事業はその傾向が強いですし、コロナ禍で対面で意見交換しにくい環境になっているので、どんな手段を使ってでも考えを共有化して、グループのビジョンを定めた方が良いです。

日常の相互理解も大事

日々の会話が相互理解も深まりますし、どういった点で悩んでいるかを把握できます。新規事業は特に悩みが多くなってしまうので、「人に話すこと」と「人に話を聞いてもらうこと」が非常に重要になっています。

すれ違いざまにしばしば話をしていたら、周りから見たらただの雑談のように思われてしまうこともあります。でも、そうではないのです。

ただ、単純に手を動かすだけでが仕事ではないので、議論の中で方向性を定めながらイノベーティブな活動につなげていきます。ふらっと飲み物を買いに行くタイミングでも良いので、数分程度の話でもスッキリしたりします。

そういったことが当たり前に行える雰囲気を醸成していくことが大事です。職場ですれ違いざまに話をすることが悪いことではないのだと!

ただ、最近では対面で会える機会が極端に減ってきているので、気楽に呟けるSNSとかチャットを活用しても良いと思います。今は便利なツールが多いですから、会社のルールで使えるものは限られそうですが、是非活用ください。

ビジョンなんてなくてもと言われてしまうことも・・・

民間企業では既存事業でずっと仕事をしていた人が、突然新規事業担当になるケースも多いです。新規事業なんてやったことがないし、自分が上司になっても分からないけど、部下に相談もできない状態になってしまいます。

そういった人に限って、明確な「ビジョン」なんて考えなくても、なんとかなると思ってしまいます。それは、今までは先行きの理解しやすい事業を効率よく進めてきた人なので、求めらえる考え方が全く違います。

それは優秀とか優秀でないという問題ではなくて、過去の経験が違うだけです。本当は適材適所の人事をすればよいのですが、特に日本は人事の適材適所が世界的に見て最もできていないという評価されているので、それは良くあることです。

そういった人は本当は既存事業をどんどん拡大していく方向で力を発揮してもらえれば良いのですが・・・新規事に向いている人や経験の中でそういったスキルを身に着けてきた人を新規事業チームにアサインをしないとお互いに不幸ですよね。

そういった場合に、「ビジョン」なんて横文字を持ってきても感情的に反発をされてしまいます。それよりも「今年は何件提案するのかの目標を決めろ」と言われたりします。そういった行為は新事業開発には特に意味を持ちません。

そうなると下の人たちは、「なんで上の人が理解してくれないんだろう」と率直に愚痴を言いたくなることもあります。それで、自分の提案もなかなか認められないと、最初は高かったやる気も落ちてしまいます。

内部の部下に言われるとなかなか進まない場合には、外部のコンサルタントなどを使うのが良いでしょう。

明確な共通見解がないと判断がぶれてしまいます...

企業の新規事業開発部門のリーダーからは、「メンバーの中に明確なビジョンを持って行動している人財が少ない」というお悩みもよく聞きます。これは、自己のビジョンを意識せずとも過ごすことができ、ビジョンを持つという意識が非常に薄いのではないかと考えています。

ビジョンのまとめ方に正解はないです。「最初から明示できる人」や「具体的な活動の中でまとめていく人」など、アプローチはなんでも良いです。ここで、大事なのは壮大で崇高な世界観をビジョンで表現するのではなくて、自分なりに実現できそうな世界を見つめることです。

もう一つ重要なのは「自分を知ること」です。自分がどういった点に価値を見出して、どんな人と働きたくて、どんな環境でやりがいを感じるなどを何度も考えながら自分の価値基準を明確化していきます。

特に格好良い言葉ではなくて、本音ベースで自分が何をしたいのか?をよく考えてみましょう。「組織の中でこういったことをやらなくては?」ということではなく、「自分という人間が人生をかけて実現したい世界」が本音です。

何年も抵抗勢力にあってもやり続けて、周りを説得しながら、新事業を実現しないといけないので、こういった想いがないといつか力尽きてしまいます。

特に既存事業でずっと仕事してきた人は、論理性や効率性が求めらてきたので、職場で自分の本音を出すことは少なく、本音を表現することに戸惑うこともあるかもしれません。そういった人を周りがフォローできると良いですね。

不都合な未来は過小評価してしまう

どうしても、「将来はこうなっていくと私は思っています」と言ったって、「自分はそう思わない」と言われたら、そこで話は終わってしまいます。そこで、もう少し論理的な未来予測が必要になってきます。

私自身の経験で言うと、今から15年くらい前にタッチ式の携帯電話が最近増えているんだよという話が社内でありました。その時は、いつまで経ってもボタンを押すタイプの携帯電話が主流だと皆思っていましたが、現実世界ではほぼ入れ替わりましたね。

でも、そんなものです。

私では大学時代にようやく携帯電話やPHSが出てきた程度で、ここまでYoutubeやSNSが流行するとは思っていなかったです。また、これが仕事になるなんて10年前はほどんどの人が想像もしていなかったのではないでしょうか?

自分の価値観の範囲内で世の中が分からないと思っていること自体が間違っていて、10年もすれば大きく社会が変わっていくと思わないとダメですね。ただ、社内で事業部の人にそんなことを言っても、理解されないですが・・・

でも、結局は大きな未来の変化は小さい一歩の積み重ねで出来ています。小さい一歩でも前に進み続けることが新規事業推進者には必要です。自分の信念に従って、障害を一つずつ突破していくこと、それが大事です。

最近気になっているテキストマイニングを利用した未来予測

未来予測の手法は色々なところで紹介しているので、ここで具体的な説明はやめておきます。

その中で、未来予測の一つの手法で。個人的に最近気になっているのはテキストマイニングを用いた手法です。これは世の中の文字データを集めて、解析することで気が付かなかった未来を予測する手法です。

文字データは週刊誌、新聞、論文、特許なんでも文字になっていれば大丈夫です。どういった「言葉」が注目を集めているかを定量的に把握できます。「どこかの記事に書いてある文字だけで未来のことが分かる訳がない」という人もいます。

でも、それは間違いです。
世の中でちょっとずつ話題になってきたキーワードが今後飛躍することも多いですし、自分の知らかなったところで新しいブームが来ることも多いです。

そういったことにテキストマイニングは有効な手段になります。世の中でどういった話題が出ているのかを定量的に把握できます。どこかの記事を読んで、そこに書いてあるからといって「自分は未来がこうなると思う」と言ったって説得力がないです。

ただ、テキストマイニングは単純に文字の出現数だけでなくて、文字同士の相関とかもちゃんと解析しないといけないので、初心者がやるには結構敷居が高いです。

Pythonでやればある程度のところまでは初心者でもできますので、やる気があって興味もある人は是非。材料面ではマテリアルズ・インフォマティクスが盛んになってきており、新事業という分野ではこういったデータ解析を使った分析技術が今後伸びていく分野だと思います。

今回は新規事業創出に関する「ビジョン」と「未来予測」をまとめました。どちらも重要な要素であり、新規事業をや担当している人/やりたいと思っている人は参考にしてください。

明日は第三段の「コミュニケーション力」と「雑談力」です。
乞うご期待!!

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