藤津亮太

アニメ評論家。アニメに関する原稿を書いて糊口をしのいでいます。

藤津亮太

アニメ評論家。アニメに関する原稿を書いて糊口をしのいでいます。

最近の記事

『地球外少年少女』の原稿

『地球外少年少女』が22年に劇場公開された際のパンフレットに寄稿した原稿です。note掲載にあたって、細かなところを修正しました。 (タイトル) “未来”を“現在”として生きる少年少女 (本文)  町中で子供を見かけると「この子供たちは、自分が見られない“未来”を見るんだなぁ」と思う。  “未来”というのは“自分が死んだ後の世界”のことだ。自分が生きている限り、そこは常に“現在”だ。そして人は“現在”をまだ見ぬ“未来”へと拡張しながら生きている。だから、人は決して“未来”へ

    • 2006年に書いた『鋼の錬金術師 シャンバラを征く者』の原稿

      短命に終わった『NewWORDS』(KADOKAWA)という雑誌に掲載された『鋼の錬金術師 シャンバラを征く者』の原稿です。当時、大判のカルチャー誌がいくつか出たので、その中の1冊という感じですが、こういうスタイルのレビューが「アリ」の雑誌だったので、一般読者(つまり作品の細部に興味はない人々)も視野に入れつつ、伸び伸びと挑発的に書いてますね。 (見出し) 過剰さからもたらされる「これはアニメだ」というつぶやき (本文)  「アニメ」を見ていると、「ああ、これはアニメだ」と

      • 2010年に書いたクインシュタイン博士(バルディオス)の原稿

        アニメージュのWEB(現在のアニメージュプラスとはまた別)で連載していた『24GIRLS』という女性キャラを取り上げた連載の11回。「24」という数字は、2年ぐらい続くだろうと思ってつけたのだが、媒体のリニューアルということで、半分の12回で終わってしまった。これはその11回目。ちなみに『鉄人28号』の蒼井優を推してきたのは廣田恵介さんであった。 (本文)  女性科学者萌え、というのがある。  少なくとも僕にはその傾向が少なからずある。実写映画では『ガメラ 大怪獣空中決戦』

        • 2009年に書いた『装甲騎兵ボトムズ』の原稿

          ニュータイプWEB(今のWEBNewtypeになる前)に連載していた「アニメを見ると××になるって本当ですか」の19回目『装甲騎兵ボトムズ』回。『ボトムズ』は今年放送40周年ですね。当時、角川の配信サイトで配信してた作品についての紹介コラムです。昨日も書きましたが、論評というほどでもなく、でも作品の「ここ」というポイントを捉えた上で、まっすぐ書かないということを意識してます。  「かっこいいことはなんてかっこ悪いんだろう」とアルバムタイトルに記したのはミュージシャンの早川義

        『地球外少年少女』の原稿

          2008年に書いた『ストライクウイッチーズ』の原稿

          ニュータイプWEB(今のWEBNewtypeになる前)に連載していた「アニメを見ると××になるって本当ですか」の10回目『ストライクウイッチーズ』回。当時、角川の配信サイトで配信してた作品についての紹介コラムです。昨日も書きましたが、論評というほどでもなく、でも作品の「ここ」というポイントを捉えた上で、まっすぐ書かないということを意識してます。  それは今から80年ほど前の出来事である。  ベルギーの画家が一風変わった絵を描いた。パイプを描いたその絵の下に、画家は「これはパ

          2008年に書いた『ストライクウイッチーズ』の原稿

          2008年に書いた『らき☆すた』の原稿

          ニュータイプWEB(今のWEBNewtypeになる前)に連載していた「アニメを見ると××になるって本当ですか」の10回目『らき☆すた』回。当時、角川の配信サイトで配信してた作品についての紹介コラムです。論評というほどでもなく、でも作品の「ここ」というポイントを捉えた上で、まっすぐ書かないということを意識してます。今読むと、2000年代はまだ平和でしたね。  スイスの長年の平和は鳩時計を生んだそうだが、日本の長く豊かな戦後はなにを生んだか。『らき☆すた』だ。  『らき☆すた』

          2008年に書いた『らき☆すた』の原稿

          女性キャラが髪を切る

          これは「新・Anime喜怒哀楽」という連載の第3回のために書いたものです。掲載は2010年。もともとWEBでやっていた「Anime喜怒哀楽」が終わり、紙の別媒体で書いたものだった……と思います。アニメの中の喜怒哀楽に注目した、アニメエッセイでこういう原稿はまた書きたいなぁと思っています。この回は、喜怒哀楽の「哀」にフォーカスした話題で、ここに出てくる女性は、2011年に死んだ母ですね。  ガンで闘病中の女性を見舞ったことがある。  抗ガン剤の副作用はあまり出ていないとは言っ

          女性キャラが髪を切る

          マンションと「人生の半分」

          2015年に週刊漫画誌のコラムコーナーに求められて書いたものです。このあたりから「空間」と「記憶」が、自分の中でなにかを探る時の手がかりになってきてますね。こういう原稿も書くの好きなんですよ。依頼はないけど(あれば喜びます)。 (本文)  横浜市にあるマンションが傾斜しているというニュースが報じられた。全4棟705戸というから1000人以上が暮らしているのではないか。立地からして子育て世代も多いだろう。昨年11月、そのうちの1棟で手すりの部分がずれていることが発見された。住

          マンションと「人生の半分」

          締切過ぎたので書けなかったコメント

          『アリスとテレスのまぼろし工場』の試写を見た人に、応援コメントを募るという例のパターンの宣伝展開があり、参加するぞと思っていたのですが、コロナになってしまい、ふと気づいたら締切を過ぎてました。書く気持ちだけはあったのですが、締切すぎたらダメのようで、その気持を成仏させるためだけに今更ですが、個人的にコメント書きました。渡しそびれたラブレターみたいなもので、一種の供養ですね。 『アリスとテレスのまぼろし工場』へのコメント 映画の圧倒的な存在感に、鑑賞後しばらくは言葉を失ってし

          締切過ぎたので書けなかったコメント

          『BRUTUS』ホラー特集用アニメ

          作品を紹介・おすすめする時は「選ぶ」ことが大事です。特に仕事として依頼があった時は、決められた総本数の中で最大限の効果をあげられるように考えるのが肝要だ。趣味なら「◯◯監督作品全部は必須」とかいってもいいですが、まあ、それは趣味だから許される言い回しですね。 というわけで、『BRUTUS』のホラー特集用にセレクトした15作をここに再録しておきます。新旧・定番と意外な作品をいかに組み合わせるが考えました。あと映画などと並ぶので、ショック描写でアニメはどうしても実写より弱いことを

          『BRUTUS』ホラー特集用アニメ

          『桜の温度』(平尾隆之監督)について

          2011年に「アニメージュ」で『桜の温度』について書いた原稿です。『桜の温度』は、徳島の映画館ufotable Cinemaでのみ見られる20分の作品で、その後『魔女っ子姉妹のヨヨとネネ』、『映画大好きポンポさん』を手掛ける平尾隆之監督の手によるものです。 (本文) ふるさとは遠きにありて思ふもの そして悲しくうたふもの よしや うらぶれて異土の乞食となるとても 帰るところにあるまじや 「小景異情」室生犀星  一番自分に馴染む場所。だから、一番嫌いな場所。故郷を思う気持ち

          『桜の温度』(平尾隆之監督)について

          書かれることのない映画時評の導入。あるいは、「故郷」の発見。

           ある映画を見て、これは「原風景=故郷」についての映画という側面がある作品だなと思った。そう思ったのは、とても個人的な感慨だから、映画の時評にこのことを書くことはないだろう。これは書かれることのない時評の導入部分なのである。  僕の父は一人っ子だった。さらにいうと祖母の伯父の家から、もらわれてきた養子であった。ややこしいのは、祖母がそれを父にもひた隠しにしていたことだ。詳細は省くが、父が大学進学する折に祖母は、「養子」となっている戸籍を見せた上で、「でもあなたは私が産んだ子

          書かれることのない映画時評の導入。あるいは、「故郷」の発見。

          廣田恵介さんのこと。

          ライターの廣田恵介さんが亡くなった。福岡市美術館の「日本の巨大ロボット群像」が発表になったばかりで、さぞかし心残りなんではないかと思う。 雑誌『グレートメカニック』で廣田さんとの対談連載「オヤヂ酒場」をやっていたのは、2000年代の前半の数年間こと。 事前にテーマを2つぐらいに絞ったら、昼間からカラオケボックスに入って(昼間なのは僕の子供がまだ小さくて、夕方には帰ったほうがよかったから)、酒を飲みながら3時間ぐらい、ダラダラと話をした。いちおう録音はしていたが、2人とも、録

          廣田恵介さんのこと。

          HOW TO BUILD THUNDERBOLT

          昨年、『ビッグコミックスペリオール』より依頼があって書いた『機動戦士ガンダム サンダーボルト』10周年のための原稿です。タイトルにピンと来た方はわかるように、そういう内容です。 (本文)  『サンダーボルト』は楽しい。もちろん内容はハードで、キャラクターがたどる運命は厳しい。しかし、そこにはある種の風通しのよさがある。それが何かを考えるために、まずは少々過去を振り返ってみたいと思う。  『機動戦士ガンダム』のプラモデルが最初に発売されたのは1980年7月。その時点で『ガンダ

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          HOW TO BUILD THUNDERBOLT

          『PSYCHO-PASS サイコパス』が描いたもの

          2014年6月にS-Fマガジン用に書いた原稿です。時期でいうとTV第1期は終わっていて、第2期、劇場版は発表前というタイミングですね。Wikipediaに断片的に引用されているらしいので全文を。 (小見出し) お題は「警察もの」「未来もの」 (小見出し)  『PSYCHO-PASS サイコパス』は2012年10月よりフジテレビ「ノイタミナ」枠で放送された番組だ。犯罪を未然に防止する「シビュラシステム」によって治安が維持された未来の日本を舞台に、犯罪者・槙島聖護を追う厚生省公

          『PSYCHO-PASS サイコパス』が描いたもの

          『24GIRLS』ラン(うる星やつら)

          2009年に書いた原稿の再録です。 (タイトル) 24GIRLS 記憶の中の彼女たちを思い出しながら…… (本文タイトル) ランの場合 (本文)  学生時代にあんなに憧れていた人。でも、同窓会で会ってみたら、なんだかその時の気持ちが思い出せない、なんてことがある。向こうが変わったわけじゃない。自分が変わったんだ……。  前回のメーテルは「昔からずっと好きな人」だったけれど、今回取り上げるランは「当時、好きだったことを思い出すとかなり恥ずかしい人」だ。  ラン。『うる星やつら

          『24GIRLS』ラン(うる星やつら)