『24GIRLS』ラン(うる星やつら)

2009年に書いた原稿の再録です。
(タイトル)
24GIRLS
記憶の中の彼女たちを思い出しながら……

(本文タイトル)
ランの場合
(本文)
 学生時代にあんなに憧れていた人。でも、同窓会で会ってみたら、なんだかその時の気持ちが思い出せない、なんてことがある。向こうが変わったわけじゃない。自分が変わったんだ……。
 前回のメーテルは「昔からずっと好きな人」だったけれど、今回取り上げるランは「当時、好きだったことを思い出すとかなり恥ずかしい人」だ。
 ラン。『うる星やつら』に登場するラムの幼なじみ。普段はブリブリのかわい子ぶりっこ(死語)だが、ささいなこと(主にラムへの逆恨み)で猛烈にブチきれてしまう、というキャラだ。
 もともと僕はラムがそれほど好きではなかった。可愛いとは思わないでもないが、なにか物足りない。なぜかといえば「ギャグマンガのキャラなのにちっともおもしろくない」からだ。
 そういう意味で、ランは、かわいさがそのままおもしろさにつながっているキャラクターで、そこが魅力的だったのだ。

 けれども時は流れた。
 フリルのついたエプロンドレスを中心とした少女趣味な衣装、男の理性を溶かすような甘ったるいしゃべり方……。ランのいちばんの魅力だったかわいさに、今はもう人工甘味料のような甘さしか感じない。
 どうしてだろう。
 当時の僕は「女のコ」というものに多大な幻想を持っていたのだ。甘くふわふわとした綿菓子のような幻想を。それは思春期の過ちといってもいい誤解だ。そして、ランの趣味半分作為半分の「ぶりっこ」は、そんな幻想にストレートに応えるものだった。だから時間が経って、幻想が幻想だとわかると、ランの魅力も色あせてしまったのだ。
 だから今、ランを見ると、思春期の過ちが思い出されて胸がうずく。もちろんそこには、彼女のことを「過ち」と呼んでしまう後ろめたさもあるのだが。

(2023年追記)
でも『うる星やつら』(2023)のラン(CV:花澤香菜)見たら、やっぱりおもしろかわいかったんですよ……。成長とは。

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