2010年に書いたクインシュタイン博士(バルディオス)の原稿

アニメージュのWEB(現在のアニメージュプラスとはまた別)で連載していた『24GIRLS』という女性キャラを取り上げた連載の11回。「24」という数字は、2年ぐらい続くだろうと思ってつけたのだが、媒体のリニューアルということで、半分の12回で終わってしまった。これはその11回目。ちなみに『鉄人28号』の蒼井優を推してきたのは廣田恵介さんであった。

(本文)
 女性科学者萌え、というのがある。
 少なくとも僕にはその傾向が少なからずある。実写映画では『ガメラ 大怪獣空中決戦』('95)の長峰真弓(中山忍)が素晴らしかった。逆に、「女科学者好きならおすすめですよ」といわれて見た『鉄人28号』('05)の立花真美(蒼井優)は、全然科学者っぽい格好をしなかったので、いっこうにハートにくるものがなかった。

 そういえばアニメで女性科学者といえば……といって思いだしたのが、エラ・クインシュタイン博士。『宇宙戦士バルディオス』('80)のキャラクターだ。
 クインシュタイン博士は、地球側の防衛組織「ブルーフィクサー」の科学開発局長。ロボット工学や亜空間力学に詳しく、主人公マリン・レーガンの乗っていたパルサバーンを改造し、バルディプライズとキャタレンジャーと合体して巨大ロボット・バルディオスとなるようにしたのも彼女である。
 まあ、一言でいえばアニメ的な「なんでもできちゃう博士」なのだが、クインシュタイン博士のすごいのは、それだけではない。
 冷静沈着で感情よりも論理を語ることの多いクインシュタイン博士なのだが、実はなかなかモテるのだ。
 クインシュタイン博士がモテるということを印象づけたのは第29話「地球氷河期作戦」。博士のかつての教え子で、現在はパイロットとなったデビットが登場するエピソードだ。
 デビットは、かねてからクインシュタイン博士に思いを寄せていた。だが、クインシュタインはその思いを決して受け止めなかった。
 だが敵の「地球氷河期作戦」を阻止するため特攻兵器フィクサー1でデビットが出撃することが決まった時、博士はデビッドに告げるのだった。
「午前1時、部屋の鍵は開いています」
 実に大人っぽい誘い方! そしてシャワーを浴びる博士!
 一方デビットは、クインシュタインの部屋を訪れ、ドアが空いていることだけを確認し、自分の部屋へ戻る。デビットは、クインシュタインが自分を待っていてくれたことだけで、十分うれしかったのだ。この一連の流れは『バルディオス』の中でも、かなり大人っぽい雰囲気の場面だ。
 そのほかにも第7話「愛の墓標」はクインシュタイン博士の元恋人が敵にまわるエピソードで、第29話とあわせ、シリーズ中に恋愛がらみのエピソードが二つもある。サブヒロインであるジェミー星野よりもスタッフに思い入れされているとしか思えない。

 専門用語をあやつる口がふいに愛を語る。論理を重んずる科学者が、論理の鎧の間から、女の部分をかいま見せる。女科学者萌えのポイントはまちがいなくそこにある。そしてクインシュタイン博士は、その路線においてかなりの完成度の高いキャラである。
 そしてこの直径の子孫となるのが『新世紀エヴァンゲリオン』の赤木リツコ(30歳)であるのは疑うべくもない。

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