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顧客の目線で売る

9月6日の日経新聞で、『「原状回復」費、過剰請求が多発』という記事が掲載されました。コロナ禍の影響でオフィス縮小や店舗閉鎖の動きがある中、退去時に支払う原状回復費用を過剰請求されるケースが多発しているというものです。

同記事の指摘も参考にしながら、なぜこのことが許されないのか、整理してみたいと思います。

1.顧客の求めていない商品・サービスを売っていること

第三者に査定を依頼したところ、不要な工事が盛り込まれていることが分かったという事例が紹介されています。過剰に請求される要因のうち結構な割合を、不要な工事が占めていることが想定されるようです。不要な工事を必要だと言って(あるいは何も説明せず)見積もりに盛り込み、知らず知らずのうちに買わされるのは、迷惑以外の何物でもありません。

昨晩、マーケティングの勉強会に参加しておりました。プロモーションをテーマに、事例も通してマーケティングの考え方を学ぶ機会だったのですが、講師の方の言葉が印象に残りました。

「やらせや嘘は、後で高くつく」

不要なものを必要と偽って売る、実態とかけ離れた誇張で広報する、これらはいずれも長く続かず、後で倍返しをされてしまうということでしょう。

ごく当たり前で腹立たしいことですが、自分が売り手の立場では意外と身近なところにその誘因がありそうです。明らかにこの顧客には合わない・必要ないとは思うけど、買ってもらえたらラッキーだから、お勧めと称してついでに買わせてみたい。こういう誘惑につられそうになった経験がある人も多いのではないでしょうか。

実際、私がお会いすることのある企業様での会話でも、「これをこういう風に売り抜けよう」といった、顧客不在の売り込み話を聞くことがあります。そういう場面に遭遇した場合は、それがお客様第一の視点になっているのかを問いかけるようにしています。商売人としての信念を通して、相手の立場で行動できるには、高い意識の継続が必要でしょう。

2.顧客の弱みに付け込んでいること

マスクや消毒液などを異常な高値で売る業者・個人が非難され、許容されなくなったのは、周知の通りです。この場合、法に触れていたわけではないかもしれません。需要と供給の法則に沿って買ってくれる限界値を試しただけ、と言われれば、そうかもしれません。しかし、困っている緊急事態に乗じるという、社会や人の営みの本質から外れた思考は、やはり受け入れられないということでしょう。

ビジネスは本来、人のお役に立つことが大前提です。コロナ禍で事情があり、オフィスや店舗を仕方なく去る人の足元を見ないと生き残れない業者があるとするなら、それはビジネスを続ける意味のない業者ということでしょう。むしろ、顧客の事情を鑑みて、何ができるかを考える方向に進むべきです。

経営も戦略も戦術も、人のお役に立つよいものをどうつくるか、よいものがあるのに売れない状態をどう打破するかを考えるために生まれたもののはずです。役に立たないものを戦略的に売りつけたり、弱みに付け込む戦術で売りつけたりするのは本末転倒です。ビジネスの原理原則に立ち戻り、人のお役に立つ仕事に徹することが必要です。

3.本来あるべき価格より高い値段で売っていること

上記2.にも関連しますが、相場より高い値段での購入を要求しているということです。自販機で売っているような缶ジュースを300円で売ってやると言われると、私たちは通常憤慨するでしょう。

しかし、本来あるべき価格とは何なのか、これはなかなか難しいお題です。私たちが状況設定次第で1000円のコーラでも喜んで買うという考え方は、マーケティングの本にもなっているくらい世の中に認められています。ある値段が高いか安いかは、一概には言えません。人気ゲーム「フォートナイト」の訴訟でも、アップルに支払われる売上高の30%という販売手数料が高いという主張も高くないという主張も混在しているようです。

価格については、別の機会にまた取り上げてみたいと思います。

<まとめ>
顧客のお役に立つものを、やらせや嘘なく売る。


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