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昇格手続きの見直し

先日、ある企業様で、人事の昇格手続きの見直しについて話を聞く機会がありました。その内容が、組織マネジメントと人材育成の観点で広く応用が利くお話だと感じました。

毎年、年度が替わるタイミングに合わせて、人事が動く会社が一般的です。その人事異動のタイミングに合わせて、定期的に昇進や昇格の候補者をピックアップし、審査をしたうえで昇進や昇格の有無を判断することも多いでしょう。

同社様では、資格等級の昇格候補となる人に対して審査の案内を出そうとしていた矢先に、本人から昇格を辞退したいという連絡が入る事例が、複数出たそうです。その理由は、同社様の人事制度のルールが変わり、昇格には審査で本人によるプレゼンが必要となったからです。他にも、従来設定されていた最低滞留年数の基準(各資格等級で何年間かは滞留しないといけないルール)の見直しもなされました。同社様には私も以前からご一緒させていただき、このプレゼン導入の検討にも関わりました。

従来は、いわゆる人事考課で一定以上の結果を蓄積していれば、ほぼ昇格していく運用になっていました。審査と言っても、「見極め」よりも「確認」の色合いが濃かったイメージです。しかし、改定後は、昇格候補者は部長陣を前にしたプレゼンテーションを行い、これまで取り組んできたことや具体的な成果を説明しなければならなくなりました。その結果、資格等級の昇格に値しないと判定された候補は、昇格しないことになります。

辞退というのは、「自分は時期尚早」「今期結果を出してから臨みます」など、本人なりに考えての申し出のようです。

これはとても本質的で、よい変化だと感じました。
同社様では、人事・処遇が(同社様のありたい姿ではない)年功的な運用になっていて、パフォーマンスの創出、納得感やモチベーションの維持向上にも限界が感じられていました。今回、各等級が求めるべき要素として、従来から存在していた職能基準に加え、職務基準を明確にしたことが、大きな変更点です。果たす役割や成果の大きさによって処遇するという仕組みが、整ってきたわけです。辞退は、「上位等級に期待されるそれらの基準を、自分が満たす準備がまだできていない」と自ら認めたということになります。

「あの人より私のほうが絶対に貢献している」「縁の下の力持ちは報われない」などと言っていた人は、今後は自身からプレゼンに挑んで自身のバリューを説明し、評価されればいいわけです(それ以外にも審査項目がありますが)。「全社的に、今まで考えてなかったことを考えるような風土になってきたのを感じる」と、同社経営企画の方も、手ごたえを感じているようです。

審査で今まで行ってなかったプレゼンという方法を導入する、というのは、ちょっとしたルールの変更・工夫だと思います。ちょっとした工夫であっても、それが本質的で的を射たものであるならば、組織マネジメントや風土を変えていく十分な可能性があるというのを、今回改めて感じた次第です。

同様の状況で思い当たる会社がありましたら、ご参考になれば幸いです。

<まとめ>
ちょっとした工夫でも、組織マネジメントや風土を変えられる可能性がある。

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