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老舗にあって、老舗にあらず(2)

前回の投稿では、創業150年の鈴廣グループについて取り上げました。
https://note.com/fujimotomasao/n/n4e43039ef50c

社是「老舗にあって、老舗にあらず」に沿って、「変えてはならないもの」と「変えなくてはならないもの」の両方を追求することの大切さについて考えました。今日もその続きです。

同社HPや日経新聞のサイト等で紹介されている情報を参照すると、例えば以下の取り組みが新たに始まっているようです。

・「おさかなボール」を使用したサラダを関東のサラダカフェ店舗で期間限定発売
https://www.nikkei.com/article/DGXLRSP611683_T00C21A6000000/
・サッカー日本代表長友佑都選手とフィッシュプロテインバーを共同開発
https://www.makuake.com/project/cho-kamaboko/
・「魚肉たんぱく同盟」を発足
https://www.kamaboko.com/fishprotein2022/?topbanner

同社社長のご見解として、以下のようにお聞きしています。
「絶対的に美味しい事」という「変えてはならないもの」は守りながら、新たな付加価値の創造に打って出ていることが伺えます。

~~国民栄養調査によると、年々お肉の摂取量が増える中、魚介類は減少傾向。更に日本人の脂肪の摂取が増加し、たんぱく質の摂取量が減少している。これに対して鈴廣は魚肉たんぱく(低脂肪で良質なたんぱく質)が解決していけるのではないか。かまぼこづくりを通じてお魚を扱う技術ノウハウ、また機能性の研究が今発揮できるのではないか。
それこそが鈴廣の役割であるのではないかと思っています。

フィッシュプロテインバーは、天然素材で1本で15gの良質なお魚たんぱくがとれる消化に優れた高たんぱく商品。アスリートの練習前のエネルギー、試合後のリカバリー&リラックスはもちろん、健康志向の方も深夜の食事や仕事中の間食・補食におすすめ。1番シンプルで大切にしたことは絶対的に美味しい事。~~

上記にも関連する、たんぱく質関連の市場は、拡大が続いています。富士経済の調べによると以下の状況です(日経新聞サイトから一部抜粋)。2021年時点は、さらに拡大していると思われます。

・プロテインパウダー
2020年の市場は、680億円(2019年比17.0%増)と見込まれる。東京五輪の延期や新型コロナウイルス感染症の流行による消費低迷で市場への打撃が懸念されたが、コロナ太り・運動不足解消のため自宅でトレーニングをする人が増えたことから需要が高まっており、前年以上の伸び率で拡大するとみられる。また、テレビ番組でプロテインが取り上げられたことも寄与している。

・たんぱく補給食品市場
2020年の市場は、1,727億円(2019年比11.8%増)と見込まれる。新型コロナウイルス感染症の流行が懸念されたが、コロナ太り・運動不足解消の目的やテレビ番組のプロテイン特集で各種たんぱく補給食品が取り上げられたことで需要は増加している。また、新商品の開発・発売が相次いでいることや、近年、新たに参入した企業の大幅な実績増加により市場は拡大している。今後は、新規参入の増加や、引き続き新商品が発売されることから市場のさらなる拡大が予想される。

gooニュースも参照すると、プロテイン市場について下記のように書かれています(一部抜粋)。
~~プロテイン市場が活況だ。市場をけん引しているのは、飲料やバーなど手軽に摂取できる商品だ。主流だった大容量の粉末タイプは、スポーツショップなど売場も限られていたが、いまや販路は広がっており、特に飲料は食品スーパー(SM)やコンビニエンスストア(CVS)にも並ぶ身近な存在となっている。大手CVSチェーンでは先日開かれた発表会で、都市部のオフィス立地に近い店舗では、チルド売り場のプロテインを含む乳飲料カテゴリーを拡大する考えを示した。

市場平均以上に伸びているプロテインメーカーの役員は、「6,000〜6,500億円市場の米国でさえ、この先10〜15年はまだ伸びると米国のシンクタンクが予測している。日本はその10分の1の規模もない。シニア層や健康志向の人が増えることで、マーケットは必ず拡大する」と期待を寄せる。

糖質カットと健康志向を伸びの一因に挙げており、「フィットネスマーケットが伸びると、糖質をカットして、たん白質を摂ることが推奨される。高齢者のたん白質不足が指摘され、シニアの購入者も増えて裾野は広がっている。プロテインという言葉は筋肉増強のための薬のようなイメージだったが、必要な栄養素で肉よりも圧倒的に摂りやすい。栄養補助食品として広がるだろう」と見通す。~~

高齢化や人口減少などの要因がありながらも、たんぱく質関連の市場は中期的に拡大が続くと見込まれるのが伺えます。上記の動きについて、例えば下記のように整理してみます。外部環境を察知し、自社の商品価値を再定義し、有力なパートナーと新たに協業することで、新たな市場の創造が可能になっていると言えます。

・たんぱく質関連の市場は拡大する
・かまぼこは良質なたんぱく質の塊である
・自社はかまぼこにこだわってきた会社という自負、高品質な製造ノウハウがある
・自社の強みを活かしてたんぱく質摂取という社会課題に貢献できる

かまぼこを、「かまぼこは千年以上も食べ嗣げられてきたもの、しかし必需品というわけではない(同社HP参照)」という位置づけのままにしていては、既存市場の縮小という枠から出ることができず、上記のような動きにはならないでしょう。

同社の動きからは、どんな業態・経営資源の会社であっても、強みを活かすことで発展する可能性があるということを感じさせられます。「老舗にあって、老舗にあらず」、学びたい視点だと思います。

<まとめ>
外部環境を察知し、自社の商品価値を再定義する。


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