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テレワークで生産性は下がる?

9月28日の日経新聞に、「テレワーク「生産性向上」2割 「コミュニケーション不足」5割」という見出しの記事が掲載されていました。

同記事のリード文の中にも、「社長100人アンケートでテレワークで自社の労働生産性がどうなるか聞いたところ、「上がる」は2割にとどまった」と書かれています。冒頭のタイトルやリード文からは、テレワークによる組織としての成果創出の難しさが伺えます。

しかし、その社長100人アンケートの中身をよく読み込んでみると、印象が少し変わってきます。自社の労働生産性がどうなるか聞いたところの結果は、「上がる」20%、「変わらない」54.6%、「下がる」8.5%とあります。つまりは、ざっくりとした全体感で言うと、「従来以上の生産性である」となります。

コミュニケーションについては、52.4%が「不足した」と回答し、「活発化した」は2.5%のみだったとあります。労働時間については、「減った」27.3%、「変わらない」68.6%、「増えた」4.1%とあります。経費は58.1%の企業が「減った」の回答とあります。

これらをまとめてみると、以下のようにポジティブに解釈することも可能です。

・以前よりメンバー間のコミュニケーション量は減っているが、
・その分労働時間は減り、
・直接経費も減り、
・労働生産性が上がっている、

他にも、「従業員の管理がやりにくくなった」48%、「従業員の評価がやりにくくなった」44.3%の一方で、「やりやすくなった」の回答はそれぞれ0、1社のみ、ということで、こうした点についてはテレワークが逆風であることが伺えます。しかし、見方によっては、「これらはマネジメントの問題なのだから工夫してよ。上記の通り生産性上がっているのだからテレワーク自体は是だよね。」と言えなくもありません。

もちろん、減ったコミュニケーションにより中長期での組織力が減退している可能性や、社員幸福度が減退している可能性など、上記に表れていない要素も想定したうえで、テレワークというテーマに対し総合的に現状を評価する必要があります。ですので、いたずらに上記をもってして「テレワーク万々歳」と言うのも本質的ではないでしょう。

その上で、指摘できそうなこととして、「テレワークという形態に対して懐疑的なイメージを持っている人は、冒頭のタイトルやリード文のみの情報に反応することで、テレワークに対しネガティブな評価を強めてしまいかねない」ということが言えます。

データを見る時は、以下の視点が大切でしょう。

・先入観なく中立的に見る
・当該データの時系列を追って値の変遷を考察する
・他のデータも参照して当該データの意味を網羅的に考察する

私たちは事業活動において、各種サーベイによる様々なデータを参照する機会があります。これらの視点に留意しながら、冷静にデータと向き合いたいものです。

<まとめ>
データは偏りなく見て、網羅的な考察を経て意味づけする。


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